9事例の発症者39名のうち、検査を実施した28名中25名がNoV陽性となり、全事例の発症者糞便からNoVが検出された(表)。遺伝子群別では、GIのみ検出された事例が2事例、GIとGII両方が検出された事例が7事例であり、GIIのみ陽性となる事例はなかった。また同じ遺伝子群が検出された事例であっても、発症者により遺伝子型が異なる事例や複数の遺伝子型が同一検査材料中に混在する事例が多く認められた。
食中毒関連食品として検査依頼があった岩カキ6検体(すべて国内産)の検査では、3検体からNoVが検出された。供試した検体はすべて参考品であるため事件との直接的な関連性はないが、岩カキのNoV汚染実態を示唆する結果と考えられた。また、NoV陽性となった岩カキの採取地がそれぞれ異なる地域であったことや、各食中毒事件発生時に提供された岩カキの採取地も同一ではなかったことから、岩カキのNoV汚染は特定の地域に限られたものではなく、広く国内に及んでいるものと推察された。
2010年までに都内で発生した食中毒事例のうち、岩カキが原因食品と推定された事例はほとんどない。また、汚染実態調査などでも岩カキからNoVが検出されることはなかったため、岩カキと食中毒との関連性は低いと考えられてきた。しかし、本年の食中毒発生状況やそれらに関連したNoV検査の結果から、今後岩カキは冬季に流通するマガキ同様、注視する必要があると考えられた。
東京都健康安全研究センター微生物部ウイルス研究科