小学校集団発生からのAH3亜型インフルエンザウイルスの分離―兵庫県
(Vol. 32 p. 368: 2011年12月号)

2011年10月下旬、兵庫県内でインフルエンザによる第1例目の集団感染(神戸市を除く)が小学校で発生し、AH3亜型ウイルスが検出・分離されたので報告する。

2011年10月25日(第43週)に洲本健康福祉事務所管内の小学校(在籍者:214名)の第1学年の4名がインフルエンザ様疾患で欠席し、学年閉鎖の措置がとられた。このうち医療機関に受診した患者2名の主症状は発熱(38〜38.8℃)、咳、上気道炎であり、1名はインフルエンザ迅速診断キットでA型陽性と診断された。この2名について検体(鼻腔ぬぐい液)を採取し、当所にて検査を行った結果、リアルタイムRT-PCR法によりともにAH3亜型ウイルスのHA遺伝子が検出された。

ウイルスの分離、抗原性解析については、MDCK細胞を用いてウイルス分離を行い、2検体ともに初代培養5日でCPEが観察された。このウイルス培養上清について0.75%モルモット赤血球を用いた赤血球凝集(HA)試験を行ったところ、HA価は16〜32を示した。国立感染症研究所から配布された2011/12シーズンインフルエンザサーベイランスキットを用いて赤血球凝集抑制(HI)試験を実施した結果、分離されたウイルス株は抗A/Victoria/210/2009 (H3N2)血清 (ホモ価1,280) に対してはHI価160の反応性を示し、抗A/California/7/2009 (H1N1)pdm09血清(同640)、抗B/Brisbane/60/2008 (Victoria系統)血清(同1,280)、抗B/Bangladesh/3333/2007血清(山形系統)(同1,280)に対してはHI価10未満であった。

HA遺伝子の系統樹解析では、国立感染症研究所のプライマー情報に基づいてウイルス遺伝子のHA1領域の塩基配列を決定し、系統樹解析を行った。今回の分離株はVictoria/208クレードに属し、N312Sのアミノ酸置換を有するグループに分類され、A198S、V223Iのアミノ酸置換がみられた。ちなみに、2010/11シーズンの県内分離株40 株の解析では、E62K、N144Kのアミノ酸置換を有するPerth/16クレードに属する株が5株(12.5%)、T212Aのアミノ酸置換を有するVictoria/208クレードに属する株が35株(87.5%)で、これらはさらにD53N、Y94H、I230V、E280A/S/Tのアミノ酸置換を持つグループとN312Sのアミノ酸置換を有するグループに分類された。

2010/11シーズンはAH1pdm09、AH3亜型、B型ウイルスの混合流行であったが、今シーズンも多様な流行像が予想される。今後の本格的な流行に向けて、引き続き発生動向を注視していく必要がある。

兵庫県立健康生活科学研究所健康科学研究センター
押部智宏 榎本美貴 井伝仕 近平雅嗣
洲本健康福祉事務所 松本竜徳 樋口しげこ 柳 尚夫
たなか医院 田中一宏

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