今般、2011年に国内の手足口病患者から分離されたShizuoka 18株を代表株として選び、VP1領域(915塩基)を解析した結果、CA6標準株Gdula(AY421764)と753/915塩基(82.3%)、アミノ酸配列では289/305残基(94.8%)一致し、CA6と同定された。
エンテロウイルス5´側VP1部分領域を高感度に増幅しうるCODEHOP VP1 RT-seminested PCR 2,3) による、エンテロウイルス遺伝子検出および塩基配列解析による同定は、現在広く用いられているが、得られる塩基配列が短く、詳細な系統解析には向いていない。そこで、2011年のCA6分離株のVP1全領域を増幅するため、新たに開発したCA6F, 5'-AGTGTGGGATTTTGGTTTGC(AB678778, 2188..2200)およびCA6R, 5'-AAGCATGAGGTGCGACTGA(3657..3639)を使用して1,470塩基対を増幅した。このプライマーを使用した方法によりVP1を含む領域の増幅が可能であった。温度条件は、94℃3分、[94℃30秒、58℃30秒、72℃ 1分]×45サイクル、72℃5分を用い、通常のサーマルサイクラーを使用した。
エンテロウイルス71型などA群エンテロウイルスに含まれる一部の血清型については完全長の塩基配列がGenBankに多く登録されており、A群エンテロウイルス間におけるゲノム遺伝子組換えについて解析が進められている。しかし、同じA群に含まれるCA6の全塩基配列は限られているため、Shizuoka 18について完全長の塩基配列(7,434bp)を決定しGenBankに登録した(AB678778)。わが国で、2011年に大流行した手足口病由来のCA6分離株の遺伝子情報を集積し4-6) 、他のA群エンテロウイルスとの関連性を解析するため、CA6分離株の全塩基配列解析をさらに進める予定である。また、培養細胞による効率的なCA6分離法についても検討中である。
参考文献
1) Oberste MS, et al ., J Clin Microbiol 37: 1288-1293, 1999
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3) 西村順裕, 他, IASR 30: 12-13, 2009
4) 榎本美貴, 他, IASR 32: 196, 2011
5) 近野真由美, 他, IASR 32: 20-21, 2011
6) Fujimoto T, et al ., Emerg Infect Dis 18: 337-339, 2012
国立感染症研究所感染症情報センター
藤本嗣人 花岡 希 小長谷昌未 岡部信彦
兵庫県立健康生活科学研究所健康科学研究センター 榎本美貴
小林小児科 小林正明
国立感染症研究所ウイルス第二部 吉田 弘 清水博之