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昭和55年度に厚生省公衆衛生局保健情報課に集められた個人票総数は67枚であった。個人票について各個に臨床症状,疫学状況,臨床検査結果,ウイルス学的診断結果を精査した結果30名がウイルス学的手段(血清診断及びウイルス分離)により日本脳炎と確定された。さらに4名の死亡例が臨床症状,疫学的背景,髄液検査結果から定型的日本脳炎死亡例と推定された。このほかに届出外の調査により,5名が血清診断により日本脳炎と確認された。以上を合計して昭和55年度に日本脳炎患者と結論された総数は39名,うち死亡例15名である。致命率は38.5%となる。初発は8月8日,終発は10月3日である。
39例中の生存例は24名で,このうち精神または身体に発病1ヶ月後に何らかの後遺症が認められた者は14名,従って完全治療例は10名(25.6%)であった。性比は男15名,女24名で,予後の内訳は全治,後遺,死亡の順に男は3,3,9名,女は7,11,6名であり,男の致命率が高い。
地理的分布は表1に示すように九州地方での発生は18名で全国の46.2%を占めている。特記すべきは熊本県で14名(死亡6名)で九州地方患者の77.8%,全国の35.9%を占めることになる。九州以外では,四国3県で7名(死亡1名),和歌山県の4名(死亡4名),山口県の3名(死亡0)が目立っている。神奈川県の1名を除きすべて西日本に集中しているという事ができる。
年令別分布は表2のように,25名が60才以上の罹患者で,全患者の64.1%を占めている。この高年令層はとくに致命率が高く,48%であった。39才以下はこれに反し,死亡例がない。患者で日本脳炎ワクチン接種例はない。
予研 大谷 明
表1.府県別日本脳炎患者発生(S.55)
表2.年令別日本脳炎患者発生(S.55)
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