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当地における無菌性髄膜炎の発生は1974年以来の流行例である。近隣での患者発生の情報では鳥取県および岡山県北部にみられている。
当所で原因ウイルス分離のために収集した材料より本症例の発生状況をまとめると表1に示すごとく,5月中旬よりみられ,6月42名,7月79名(7月25日現在)で,なお増加の様相にある。
今年の髄膜炎の特徴を2,3あげると,
1) 症状では発疹を伴う例がかなりの数にみられる。
2) 取り扱った分離材料よりみた患者の年令構成は従来のエンテロウイルス感染症では1〜2才に急峻なピークのある年令分布であったが,今回は比較的3〜5才に多く,生後5ヶ月〜15才の幅広く分布(表2)する台地型を示している。これらの中には同胞感染例が相当数みられることも特徴かと思われる。
3) ウイルス分離はリコール,便,咽頭拭い液などより現在まで30数株分離しているが,AG−1(ミドリザル腎)細胞,HEK細胞に感受性があり,CPEはエンテロウイルス様で,哺乳マウスに病原性を示さない。分離ウイルスはSchmidtプール血清(20u)で明瞭に中和されないが,2,3のエコーウイルス単味血清(エコー6,14,21)および1980年分離未同定株(当所で分離)に対する抗血清の20u〜100uでCPEが抑制され,目下検討中である。
島根県衛生公害研究所 板垣朝夫
表1.無菌性髄膜炎月別発生数
表2.無菌性髄膜炎患者年令分布
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