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生月病院の森,下田,黄等は,1980,1981両年の夏から秋にかけて,稲刈りに関った人々を中心に30名近い熱性患者を認め,秋季レプトスピラ病(以下秋疫)を疑った。本年に至り,予研では罹患者のうち19名の血清を得て,レプトスピラ凝集反応(SM反応)を行った所,autumnalis(=秋疫A型)に11名,hebdomadis(=秋疫B型)に4名およびaustralis(=秋疫C型)に1名,計16名に有意の凝集価を認め,それぞれの血清型のレプトスピラ病に罹患していたことが判明した(表1)。ワイル病は今のところ含まれていない。この他に臨床,疫学像から秋疫と思われる数名を認めているが,漁撈や県外出張のため血清確認はできていない。
おおむね入院を要した由であるが,致命者は出ていない。
長崎,佐賀両県下には,古くから秋疫A型,同B型を中心とした秋季レプトスピラ病のあったことが,波佐見熱あるいは伊万里熱の名で知られている。この生月島の秋疫流行も,その血清型,発生季節(表2),稲作との関連などからみて波佐見熱とほぼ同様の背景をもつものと考えられる。
現今の社会状況を反映してか,患者のほとんどが中高年令層であり,かつ,女性が多かった(16名中12名)。注意すべきは,高令者に重症者が出たことで,免疫能の低下した者にとって秋疫は油断ならない急性感染症である。
以上の情報は,長崎県離島医療圏組合生月病院の下田 憲副院長,森 光政医師(現同組合奈留病院),黄耀宗院長等から提供を受けた。
予研細菌第二部 森 守
表1.生月島の秋疫患者
表2.月別患者発生数
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