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Vol.6 (1985/5[063])

<特集>
麻しん


1984年は各地で麻しんの流行がめだった。

感染症サーベイランス情報における一定点医療機関あたりの麻しん様疾患発生数は図1にみるように,1983年11月後半から増加し,1984年4〜5月にピークを示した。その後,患者発生は減少し本年については4月末(第15週)現在の全国平均一定点あたり患者発生数が0.33で,これはこの時期としては本情報開始以来最低である。

流行がめだった1984年の年間一定点あたり発生数は1983年の1.9倍,1982年の2.4倍であった。この患者を年齢群別に比較すると(表1),最も多いのは1〜4歳(62.1%),ついで5〜9歳(20.7%),0歳,(12.7%)である。これらの年齢群の全患者に占める割合は最近3年間ほとんど変っていないが,10〜14歳群は以前にくらべてやや高く(3.9%),患者実数でみると,前年の3.3倍,前々年の4.8倍であった。

今回の麻しんの流行には地域差がみられる。1984年の県別一定点あたり患者発生数は最高145.42(大分県)から最低8.02(石川県)の範囲に及んだ。表2に最近3年間について発生数の上位および下位各5県をあげた。1984年の流行は主として西日本が中心で,なかでも大分県は1983,84年を通じて最も発生数が多かった。また1983年に流行した愛媛県および北海道は1984年には発生下位県になっているが,それでも前2年の下位県にくらべて発生数はかなり多い。今年に入って全国的にみると患者数が少ないが,徳島県,宮崎県などでは他より多く,第15週までにすでに一定点あたり患者数4.7および3.6を報告しているので,地域的流行は本年もひきつづき発生するとみられる。

健康児の麻しんHI抗体保有状況について,1982年と1984年秋に調査された流行予測事業の成績を図2に示した。両年の間で麻しん免疫状況に全く変化がなく,3歳までに約80%が感染またはワクチン免疫を受け,これ以上の年齢では約20%が感受性者として残っている。

ワクチン接種歴別の抗体保有率を比較すると,(図3)ワクチン接種者は80%以上が抗体陽性で,4歳以下でワクチン効果が明らかに示されている。ワクチン接種者の割合は3〜6歳では40〜50%である(図4)。麻しん予防にはワクチン接種以外に方策がないので,今後の流行阻止のためには現在免疫をもたない子供達とくに2歳以下が,感染する以前できるだけ早い時期にワクチン接種をおこなう必要がある。



図1.一定点医療機関あたりの麻しん様患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表1.年次別年齢群別患者発生状況
表2.年次別県(市)別患者発生状況(一定点あたり患者発生数の多い県,少ない県を上位5件ずつ並べた)
図2.年齢別麻しん抗体保有状況<1982年と1984年の比較>
図3.年齢別麻しん抗体保有状況<ワクチン接種歴別 1984年>
図4.年齢別麻しん抗体保有状況<ワクチン接種歴別 1984年>





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