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Vol.6 (1985/9[067])

<特集>
手足口病


手足口病は夏かぜの一種で,手,足,口腔内に小水泡を伴う発疹を生ずる特徴的症状を示す。発疹は臀部や膝にでることもあり,2〜7日で消失する。発熱は比較的少なく,症例の半数またはそれ以下にみられる。また,成人や年長児の家族内感染例では口内疹のない例や,手に数個の発疹のみを生ずるなど軽い症例もある。

厚生省サーベイランス事業の患者発生情報(図1)によると,手足口病は毎年夏をピークとして流行する。1984年は1982年に似て,夏のピークの後もある程度の発生がいつまでも続き,地域によっては2峰性の流行像がみられた。1985年になって7月上旬には一定点医療機関あたり患者発生数としてシステム開始以来最高の5.76を記録する大流行となった。流行は当初四国地方が中心で,ついで九州,さらに全国的に拡大した。

典型的な手足口病をおこす病原体としては,コクサッキーA16型(CA16)とエンテロウイルス71型(EV71)があるが,これ以外にコクサッキーA10型(CA10)が手足口病患者から検出されている。病原体情報をみると,1982年の手足口病の大流行は主流がCA16で,これにEV71の流行が重なり,これが1983年のEV71の流行につながった形であった(図2)。これに続く1984年の手足口病の流行は図1にみるように前2年よりは規模の小さいもので,この年の手足口病患者から報告された分離ウイルスは合計206例,そのうち主なものは,CA16が89例(43%),CA10が66例(32%),EV71が14例(7%)であった。(表1,2,3,4)。

この年(1984年)はCA10によるヘルパンギーナが全国的に大流行した年で,合計602のCA10の分離が報告された(表5)。大部分(約80%)はヘルパンギーナ患者からの分離であるが,このうちの約10%について手足口病が西日本を中心に報告され(表2),上述のようにこの年の手足口病の病因ウイルスの3分の1を占めた。CA10が検出された例について発熱の割合をみると,ヘルパンギーナと診断された477例では196例(41%)が発熱を報告しているのに対し,手足口病の診断例66%例中では16例(24%)であった。

1984年秋以降検出されているウイルスは主にCA16で,これがこの年のだらだらとした手足口病発生の原因ウイルスとみられる(表4)。1985年に入ってひきつづきCA16が主流で,これまでに,手足口病患者からの分離としてCA16が80株,CA10およびEV71各3株が報告されている。

ウイルス分離が報告された患者の年齢は,84年,85年ともに1歳が最も多く,4歳以下が80〜90%を占めている(表6)。

1984年にウイルスが分離された手足口病患者の検体は鼻咽喉が主で79%,ついで糞便が14%,皮膚病巣からの分離報告は16%であった(表1)。



図1.手足口病患者発生状況(厚生省感染症サーベイランス情報)
図2.手足口病患者からのウイルス検出状況
表1.手足口病からの分離ウイルスと検体の種類(1984年)
表2.手足口病患者からのCA10検出状況(月別・住所地別)
表3.手足口病患者からのEV71検出状況(月別・住所地別)
表4.手足口病患者からのCA16検出状況(月別・住所地別)
表5.CA10,CA16,EV71を検出した患者の臨床症状(1984年)
表6.検出ウイルス別手足口病患者年齢分布





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