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今年の無菌性髄膜炎の患者発生は,昨年,一昨年と比較すると小規模である。
4月から8月の初めまでに,本症および本症を疑われた患者60名から分離材料が得られた。発生は現在も続いているが,今までに得られた結果について述べる。
1.60名から得られた咽頭ぬぐい液,糞便からのウイルス分離結果は,エコー6型32名,コクサッキーB3型1名,コクサッキーB5型1名,ポリオ1型1名,アデノ(未型別)2名,未同定2名である。今年の主な原因ウイルスはエコー6型のようである。髄液からの分離は現在進行中である。
2.当所,MK,Vero,HEp2,FL,HEL−R66,LLC−MK2細胞を用いて分離を試みたが,FL細胞の感受性が最も良く,以後の検査にはFL細胞を主体に行っている。
同定はSchmidt pool血清および単味の抗血清を用いて行った。エコー6型はBreak-through現象のみられる場合もあるが,同定は容易である。
3.エコー6型については,昨年11月に髄膜炎から分離されており,その後も上気道炎等から散発的に分離されているところから,6月の鳥取県サーベイランス情報等で注意を喚起した。しかし,今のところ予想より規模は小さい。
4.症状については,今年の髄膜炎に特徴的な点はない。強いて言えば,結膜充血を伴なう4例のうち3例,髄膜炎以外にも咽頭結膜熱を疑われる2例からエコー6型が分離されていることから,眼症状がみられる点が特徴かもしれない。また,不全型が多いように思われる。発疹を伴なうものは1例で,コクサッキーB5型が分離されている。
5.年齢は,12歳が最年長で7歳以下特に4,5歳に多い。新生児の罹患例も4例ある。新生児の罹患例4例のうち2例は,母親が産褥期に38℃代の発熱をきたしている。この2例のうち1例からは母児ともにエコー6型が分離された。
兄弟例も2例あり,うち1例は兄弟ともにエコー6型が分離された。
6.鳥取県で髄膜炎からエコー6型を分離したのは,最近では1978年であり,この年には一過性マヒをきたした例もあったが,今年はまだそのような例はみられていない。
以上,現在までに得られた鳥取県の結果について述べた。
鳥取県衛生研究所 石田 茂,寺谷 巌
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