HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.6 (1985/9[067])

<外国情報>
オフィスの風疹流行−ニューヨーク市


1984年,米国では745例の風疹が報告された。これは1983年の23.2%減,1969年の実に98.7%減である。しかし感受性成人,特に妊婦年齢女子に引き続き患者発生がみられる。一方,大学は感受性者が集まるため流行源となっているし,また,下記の例は,感受性者が多い時,職場環境でも流行がおこりうることを示している。

1984年3月20日〜6月5日にマンハッタンの金融街の2株式取引所と2仲買商会で69例と接触者2例の風疹流行が発生し,27名が血清学的に確認された。69例中71%が男性,55例が30歳以下(中間値25歳)だった。いずれも風疹ワクチン歴はなく,また妊婦の罹患はなかった。流行阻止のため全従業員の1/3にあたる1,639名がワクチン投与を受けた。2婦人がワクチン投与後22週に妊娠し(1人は投与前抗体陽性,他は採血せず),共に正常児を出産した。

註:本報告は米国では3度目,ニューヨーク市では2度目のオフィス従業員の風疹流行報告である。前回のニューヨークの発生はマンハッタンの金融街の銀行従業員86人の罹患例であった。この例でも攻撃率は年長者より若い者に高かった。これは青年の10〜15%に抗体がないことと一致する。この残された感受性集団はワクチンがつかなかったのではなく,接種されなかった結果である。ワクチンで得られた免疫については今までのところ使用した株に関係なくめだった低下はみとめられない。

流行は作業現場の混乱と時間のロスばかりでなく,妊婦への感染波及の可能性を生ずる。この流行ではみられなかったが,1983年のニューヨークの例では3人の妊婦が感染し,2人は人工流産,1人は先天性風疹症候群(CRS)をもつ子を出産した。

職場の風疹流行は従業員がすべて免疫となるまで続くだろう。残された感受性者に直接ワクチンを接種すればただちに危険性を下げうる。免疫実行諮問委員会(ACIP)は妊婦年齢の女性が多い職場では風疹ワクチン計画の導入を薦めている。希望者接種方式は効果が薄いから強制的接種が望ましい。感受性集団に流行が侵入してもすぐには患者発生を止め得ない。流行とこれに伴うCRSを防ぐためには速やかな診断と確認,患者及び妊婦の隔離,感受性者へのワクチン投与が必要である。

ACIPはワクチン歴または血清反応陽性成績がない場合は単純にワクチン接種を行うことを薦めている。免疫のない女性には妊娠またはその可能性がなければ,次の3ヶ月避妊するよう説得の上,ワクチンを投与すべきである。今までのデータでは,免疫のあるものへのワクチン接種は何ら悪い影響はないし,また,胎児についてワクチンウイルスに暴露後の危険性は無視しうることが示されている。

(CDC,MMWR,34,No.29,1985)






前へ 次へ
copyright
IASR