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Vol.7 (1986/4[074])

<特集>
エンテロウイルス感染症1980〜1985年


 エンテロウイルスは血清型が多く,主な型は個々に数年ごとの流行の波があり,年によって流行する型が入れ替わっている(図1)。流行は毎年夏期,6〜8月に多い。

 エンテロウイルス感染症の臨床症状は多彩であり,主な症状としては発熱(48%),上気道炎(26%),髄膜炎(22%),ヘルパンギーナ(17%),手足口病(15%),発疹(12%),胃腸炎(11%)などが多く報告される(表1)。発熱,上気道炎,胃腸炎はどの型にも共通してみられるが,その他の症状は型によって特徴がある。コクサッキーA(CA)群はCA9とCA16を除き,毎年入れ替わってヘルパンギーナの主病因となる。すなわち,1981年はCA5,10,1982年はCA3,4,1983年はCA6,2,1984年はCA10,5,4,1985年はCA4が主流で,特に1984年のCA10の大流行はヘルパンギーナ患者の大幅な増加をもたらした。手足口病の病原として重要なのはCA16,エンテロウイルス(EV)71およびCA10である。1982年はCA16とEV71,1983年はEV71,1984年はCA16とCA10,1985年はCA16とEV71の流行が手足口病の流行を起こした。また,コクサッキーB(CB),エコー(E)の主な型およびCA9では分離報告の14〜76%(型により異なる)は髄膜炎関連例である。各年の流行ウイルスの主流は,1981年はCB2,E11とE18,1982年はCB3,1983年はE30,E9とE24,1984年はCB5,1985年はE6などであった。EV70は急性出血性結膜炎を起こすウイルスで,他の型と異なり,発熱,上気道炎,胃腸炎は少ない。1985年のE16の流行では発疹症が多く報告された。

 1980〜85年に脳炎および麻痺例から分離されたエンテロウイルスはそれぞれ38および32株,このうちポリオウイルスはそれぞれ4および14株であるが,同一人からの複数分離例が含まれる(特に生ワクチン投与直後の例では複数の型が同時に分離される)ため,これらウイルスが検出された患者数としては8例である。分離ウイルスのほとんどはワクチン様であるが,1980年の1型1株は野生株と報告された。

 エンテロウイルスが検出される検体の種類は臨床症状を反映して鼻咽喉由来(58%)が最も多く,ついで便(40%),髄液(10%),皮膚病巣(3.5%),眼ぬぐい液(0.6%)などである。

 エンテロウイルスの検出例の年齢分布は一般に1歳が最も多く,次いで0歳で,2歳以降は年齢が増すとともに検出数が減少する。しかし,エコー30の流行では4〜6歳がピークであった。また,ポリオは大部分がワクチン服用者から分離されるため0歳が多い。EV70は19歳以上の分離例が多い。



図1.年次別エンテロウイルス検出状況(1981年〜1985年)
表1.エンテロウイルスの検出されたものの臨床症状(1980年1月〜1985年12月)





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