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妊娠初期の水痘感染による胎児水痘はまれに肢形成不全,神経障害,白内障,瘢痕を生ずることがある。最も危険なのは出生2〜3日前に母親が発症した場合で,新生児致死率は31%にのぼる。母体が血中抗体産生後の出産では新生児は重症に至らないようである。したがって抗VZ免疫グロブリン(ZIg)による受身免疫は(1)出産時母親が発症した場合,(2)免疫のない妊婦が水痘に接触した時,に薦められる。本報告にはこれらグループに治療的にZIgが使用された成績である。ZIgは最近の感染者または高抗体価の者から作られ,VZIgG抗体含量は一般のIgGの8倍高い。1979年以降,ZIg投与全例について臨床的および血清学的追跡がなされている。新生児im接種量は,100mgm,妊婦は1gmである。
新生児:104例を追跡。母体のVZ発症前7〜1日および発症後3日までに出生した児はすべてVZIgG−。母体発症後6日以降の出生児はすべてVZIgG+(32〜4096)。出生時−でVZIgG投与後2〜4日の新生児は<16〜64(普通臍帯血は64〜128)。ZIg投与児のVZ感染確認例は37/67(55%)。多くは軽症で,死亡例はなかった。母親の発疹出現と新生児発症との間隔は出産後暴露で平均14日(8〜25日),子宮内暴露で平均13日(<5〜24日)。後者のうち4児は出産時発疹があった。
妊婦:罹患歴のない接触例の107/155(69%)は抗体+。追跡した30例中血清学的感染確認例は22(73%)。暴露後72時間以内と3〜10日後のZIg投与者の間に感染率,重症度に差はなかった。
註:妊婦のZIg治療は感染は阻止しないが重症度とウイルス血症の程度を低下し胎児の危険性を低めるとみられる。ZIg使用前20年間のVZ新生児死亡例は21のみで,さらに1974〜84年の11年間の報告は5例だから危険性は過大評価だったかもしれない。しかし,本報告ではZIg治療が重症度を低めることが示され,また,出産24〜48時間に母親が発症した例でZIg投与児の死亡例が2例みられた。このため新生児投与量が250mgmに増加された。胎児感染と先天性欠陥の危険性を評価する調査が進行中で,現在まで100例の臨床的VZ確認例が追跡されているが,まだ先天性VZ症状はみられていない。
(CDR,86/14)
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