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7.1963〜1984年の22年間にわたる赤痢菌およびサルモネラの健康保菌者検索成績−検出率および検出血清型の年次別推移,東京都
東京都予防医学協会では,1963年に当時の社会的要請に即応すべく,腸管系伝染病予防対策の一環として,赤痢およびサルモネラの健康保菌者検索を開始して以来,すでに23年を経過し現在に至っている。
保菌者検索の対象は,都内在住の児童,生徒および都内のホテル,レストランなどに従事する食品調理関係者で,両者の割合は前者の2に対して後者が1程度である。
まず,赤痢保菌者検索の動向からみると,表1に示すように1963年から69年までの7年間は,検出率の点では年次減少の傾向を示しながらも0.09〜0.1%とまだ比較的保菌者が発見されていた期間であった。しかし,1970年以降になると保菌者は大幅に減少し,現在では約30万人に対してわずかに1人の割合で検出される程度となった。分離血清型の検出状況もフレクスナー菌からソンネ菌へと推移した。
一方,サルモネラ保菌者検索の動向についてみると,1964年から65年頃が激減する赤痢と逆に増加しはじめたサルモネラとが,ちょうど交差した時期であったと思われる。その後1972年にはS.typhimuriumが単独できわめて多数検出され,その年度における全検出株492株のうち112株(22.8%)を占め,第1番目のピークを形成した。この傾向は全国的にみても同様で本血清型が流行の主流を占めていた。第2番目のピークは1977年に,S.londonをトップに形成された。本菌はその年度の全検出株809株中122株(15.1%)を占めた。このように単独の血清型が急増することによって,その年度の傾向は大きく左右される面がみられた。
主流行血清型については1966年以降を5年単位にまとめて表2,3に示したが,年次消退していった血清型ではS.heidelbergをはじめS.schwarzengrund,S.senftenbergなどで,最近の5年間ではS.giveが減少した。一方,増加した血清型ではS.typhimuriumが依然として主座を占めているが,最近ではS.litchfieldの増加ぶりが注目される。1966年以降85年までの上位10番目までの血清型の出現状況は表4に示すような内容であった。
本稿の要旨は第60回日本感染症学会総会で報告した。
感染性腸炎研究会(会長 斉藤 誠)
小野川 尊(東京都予防医学協会)ほか
Table 1. Detection rates of Shigella and Salmonella from healthy Tokyoites, 1963-1985
Table 2. The 10 most frequently isolated serovars from healthy Tokyoites
Table 3. The 10 most frequently isolated serovars from healthy Tokyoites
Table 4. The 10 most frequently isolated serovars from healthy Tokyoites (1966-1985)
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