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Vol.8 (1987/3[085])

<国内情報>
EV70によるAHCの発生,徳島市


1986年7月中旬から8月中旬にかけて,徳島大学眼科から,AHCおよびEKCが多発し,例年と比べて何か違和感があると連絡があった。当眼科に来診した患者から得られた血清についてEV70に対する中和抗体を測定したところ,ペア血清が得られた12名中9名がEV70に対して有意の中和抗体上昇を示し,EV70感染が確認された(急性期血清はすべて4倍または4倍以下,回復期血清は16倍〜512倍)。これら血清はCA24変異株(EH24/70)に対しては全例が,急性期,回復期とも4倍以下であった。

 患者の眼ぬぐい液15検体について,HeLa,RD-18SおよびHEp2を用いてウイルス分離を実施し,2例からアデノ3型を検出した。この2例はともにペア血清の得られていない患者であった。しかし,現在までEV70分離株を得るには至っていない。

 最近,世界的にEV70は分離がきわめて困難であるといわれる。理由としてウイルスが変異したことが推測されるが,分離株が得られないために確認されていない。現在のところ,患者のペア血清において中和抗体価の上昇は明確なので,診断はこれを利用する他はなさそうである。急性出血性結膜炎の病原ウイルスのうち,CA24変異株は経験的にかなり容易に分離されているので,集団発生などに際して検体からのウイルス分離が成功しないことは,CA24感染を否定し,EV70感染が疑われることを示唆する傍証といえそうである。



国立予防衛生研究所 宮村 紀久子





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