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Vol.8 (1987/10[092])

<外国情報>
ポリオ,1985−世界


 ポリオワクチン接種は1960年代に始まり,1974年にEPI(1990年までに世界中の子供に6主要疾患のワクチンを投与する運動)が開始された。1985年,PAHOは全米大陸のポリオ撲滅のゴールを1990年と定めた。

 1985年に29,890例のポリオが162国から報告された。99%は発展途上国で,発生率は南アジアと中央アフリカで高い。全発生数は過去5年の1/10,特に中国で低下したが,他の高発生国は不変かむしろ増加している。後遺症のレトロスペクティブ調査からみると実際の発生数は届出の4〜100倍とみられる。

 浸淫地域では1型が中心,次いで2型で3型が最低,しかし,特殊な環境で3型が1984〜85年にオランダで,1986年に北東ブラジルで流行した。

 ワクチン投与率は1〜100%まで国によって全く異なる。報告は信頼しうるにはほど遠いが,およそ世界の半数の子供が生後1年以内に3回のポリオワクチン投与を受けたと推定される。しかし,ポリオをコントロールするためには80%以上の投与率と高レベルの衛生教育が必要である。

 1985年のポリオの状況は,先進工業国地域(人口約12億)では発生が少なく,完全な報告が得られている。ワクチン接種率は大部分90%以上,発生は全年齢にわたり,大人も罹る。国によっては輸入例およびワクチン関連例が国内例より多い。1975〜84年,米国では免疫不全と関係のない107例中輸入例12,ワクチン関連71,国内発生例は24であった。一方,発展途上地域(人口約37億)ではポリオは常在性で,ワクチン接種率が50%以下の国では実際の発生数は報告数よりはるかに多く,10〜30/10万である。これら浸淫国では,生後できるだけ早期にワクチン接種をしなくてはならない。エンテロウイルスの広範な分布がワクチン効果を低下させているとみられる。しかし,中国,ラテンアメリカなど免疫率の高まった国で発生状況が改善されていることが見通しを明るくしている。

(WHO,WER,62,37・38,1987)



Annual incidence of poliomyelitis, 1983-1985





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