HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.10 (1989/3[109])

<国内情報>
川崎市における異型肺炎


 Mycoplasma pneumoniae(以下M.pnと略)による異型肺炎は4年周期で流行が繰り返されることが知られており,1988年はその流行年にあたると予測されていた。川崎市においても1987年の74名の患者に対し,1988年は467名の患者報告があった。1987年12月から徐々に患者報告数が増加しはじめ,1988年10〜12月にかけては流行が示唆される報告数であった。

感染症サーベイランス事業の一環として市内医療機関(小児科3,内科1)から,M.pn肺炎を疑われた患者を対象に培養検査を行った。患者の咽頭ぬぐい液を1mlのPPLO-brothによく絞り出し,新たなPPLO-broth(ブドウ糖1%,フェノールレッド0.002 %)およびPPLO-agarに接種し培養を続け,1ヶ月目まで観察した。

 表1に示すように,5月から陽性例がではじめ50検体中17例(34.0%)の陽性率であり,前回流行時(1984年)の42.6%よりやや低率であった。陽性17例の年齢分布は表2に示すとおりであり,1歳,3歳,4歳,5歳,6歳,7歳が各1例づつ,8歳,10歳が各2例づつ,11歳が5例(29.4%)と一番多く,また,57歳の成人が1例みられた。M.pnの好発年齢とされている6歳〜12歳の学童に11例と多く,全体の64%を占めていた。陽性例の発熱は38度以上の高熱が11例と多くみられたが,その他詳細な臨床症状は確認できなかった。

 以上,簡単に川崎市におけるM.pnの分離検査成績について報告したが,春〜夏にかけて流行しはじめるとされている異型肺炎であるが,夏季における異常低温気象などの影響からか,今シーズンの流行はやや遅れ,報告患者数のピークも秋〜冬になってであった。しかし,依然,学童期における流行が多くみられることから学校内感染に注意する必要があると思われる。



川崎市衛生研究所 岡田 京子


表1.異型肺炎患者報告数およびM.pn分離状況−川崎市
表2.年齢別M.pn分離状況−川崎市





前へ 次へ
copyright
IASR