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平成元年のコレラ発生は,10月20日現在40件,患者総数は疑似患者を含めて92名である。そのうち12件63名が海外渡航歴のない国内発生である。発生は8月と9月に多く,8月:12件12名(輸入例のみ),9月:15件66名(うち輸入例9件9名)であった。9月の多発は名古屋市および滋賀県での2件の集団発生による(表)。
名古屋市における集団発生は,9月8日に真性患者が発見されて以来12日までの間に患者43名,保菌者1名からエルトール稲葉型のコレラ菌が検出された。いずれもNTT名古屋会館での喫食者で,群馬県22名,名古屋市9,愛知県7,愛媛県2,東京都1,京都市1,静岡県1,新潟県1と広域にまたがった。
厚生省結核・感染症対策室では2回の「コレラ集団発生連絡会議」を開催し,その間専門家を含む調査団を現地に派遣し独自の調査を行った。第2回連絡会議での検討の結果は以下のとおりである。
第2回「コレラ集団発生連絡会議」の開催について
平成元年9月27日
1.名古屋市におけるコレラ集団発生については,9月8日に真性患者が発見されて以来,関係都府県市からのコレラ防疫対策に関する情報収集に努めるとともに,関係都府県市の連絡,調整を行ってきた。
2.今般,関係各都府県市における検病調査等が終了したので,2回目の「コレラ集団発生連絡会議」を開催し,関係者間の情報交換及び今後の対策について検討を行った。
3.前記検討の結果は次のとおり
(1) 今回集団発生患者は,全員排菌陰性を確認された後隔離を解除されており,また,二次感染の報告もないことから,集団発生は終息したものと思われる。
(2) NTT名古屋会館で供された食品がコレラ菌に汚染された原因については,食中毒菌と混合感染していること等から考え,たまたまコレラ菌に汚染された食品中でコレラ菌がいずれかの段階で増殖し,その食品がNTT名古屋会館で供された可能性が高い,と思われるが断定するまでには至らなかった。
(3) 国立予防衛生研究所においてそれぞれの食品と発病者との因果関係について有意差検定を行ったが,有意となった食品はなく,原因食品を具体的に特定することはできなかった。今後,残食からコレラ菌と密接な関係のあるウイルス(ファージ)の検出等を試み原因となった食品を特定できるよう努める必要があるが,NTT名古屋会館から収去した食品の種類が限られていること,発症から食品のコレラ菌検査までの期間が長いこと等,困難な点が多い。
(4) なお,名古屋市における散発例と今回の集団発生の関係については,関係都府県市の調査では直接の関係は認められなかった。また同一食品を介しての感染も可能性についても,関係都府県市のこれまでの調査では関係は認められていない。
4.今回の事例及び原因不明の散発例が発生していることに鑑み,今後のコレラ対策については,都道府県に対し「コレラ防疫対策実施要綱」に充分留意し防疫業務に遺漏なきよう指示するとともに,公衆衛生審議会伝染病予防部会において今後のコレラ対策のあり方について検討をお願いする予定である。
結核・感染症対策室
国内におけるコレラ発生状況 1989年(1989年10月20日現在)
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