HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.13 (1992/5[147])

<国内情報>
小児の髄膜炎菌性髄膜炎(流行性髄膜炎)の発生事例−千葉県


 法定伝染病の一つである髄膜炎菌性髄膜炎(流行性髄膜炎)の発症は現在では比較的まれである。今回,1992(平成4)年2月に千葉県東金市において本症の発症が確認されたので,その概要を報告する。

 1.症例:患者は13歳の男子で,2月5日から嘔吐と悪寒,発熱が出現,発熱,頭痛,嘔吐が続くため2月8日N病院受診,入院となり髄膜炎の診断を受ける。2月14日髄液培養検査の結果,髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)と同定されたため隔離病棟のある当病院に転院となった。早期からの化学療法(ABPC+CTX,診断確定後ABPC)により,速やかに除菌され,経過は順調で後遺症は残さなかった。

 2.家族内保菌者検索:患者家族は父,母,姉,兄と本人の5人家族で,既に治療が開始されている本人を除き,4人に鼻咽腔培養を選択分離培地であるセアマーチン寒天培地を用いて行った。母と兄から同菌が分離されたためRFPおよびMINOを2日間投与し,後に除菌を確認した。

 3.細菌学的検討:患児髄液からの分離菌の感受性検査では,MICがPCG≦0.03μg/ml,ABPC≦0.06μg/ml,CTX≦0.03μg/mlと良好であった。また,保菌者であった母,兄の鼻咽腔からの同菌の感受性も同等であった。

 本菌の血清型は神奈川県衛生研究所で型別していただき,Y群の結果を得た。なお,千葉県における本症の発症は千葉県保健予防課の集計によると,1973(昭和48)年から1992(平成4)年の本症例までで20例を数え,ここ5年間では1989(平成元)年に2例,本年は本症までで2例の合計4例が報告されている。



千葉市立病院小児科 阿部 博紀,宮永 貴美子,杉本 和夫
千葉市立病院検査科 郡 美夫
千葉県衛生研究所  小岩井 健司,鶴岡 佳久





前へ 次へ
copyright
IASR