|
マレーシアでは,1991年のポリオ生ワクチン接種率は90.5%で,麻痺性ポリオも1985年以来発生していなかった。しかし,1992年になって3例の報告があった。
2例は1992年3月と6月に報告された。患児の両親はいずれも予防接種に反対する宗教集団に属していた。症例1は2歳8ヵ月の男児で,1型の野生株とワクチン株が分離された。症例2は22カ月の男児で,1型のSabin株が分離された。症例3は,生後10週目のワクチン未接種の男児で,5月に突然両下肢に麻痺を起こし回復しなかった。麻痺後4カ月目に便からのウイルス分離を試みたが陰性であった。
これら3例は異なる州に住んでいたが,宗教集団を介しての疫学的関連性が示唆された。またこれらの集団は,パキスタンを始めとするポリオが流行中の他のアジア諸国との交流が深いことが明らかになった。
患者発生後,行政当局は直ちに周辺児童へのワクチン投与を行った。さらに1992年12月より,カルテを利用した過去にさかのぼっての調査を開始した。マレーシアはポリオ撲滅国と考えられてきたが,周辺にポリオ流行国が残っている以上,急性弛緩性麻痺のサーベイランスの強化が必要である。
(WHO,WER,68,No.41,297,1993)
|