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Vol.17 (1996/7[197])

<国内情報>
広島県東城町における病原性大腸菌O157による集団下痢症について


 1996年6月11日,広島県北部の比婆郡東城町T小学校(児童数336名,教職員29名)において,腹痛,下痢症状を訴える児童が相次いでいることが判明した。

 事件の探知は平成8年6月11日,公立M病院から所轄の保健所に,入院中の患児より病原性大腸菌(O157)を検出したとの報告であった。食中毒の疑いで,当センターが検査をおこなったところ,児童の糞便からベロ毒素産生性大腸菌O157が検出された(6月13日)。病原性大腸菌O157の特殊性から,食中毒としての感染源の究明と拡大防止に加えて二次感染の防止等の関連対策のために,広島県病原性大腸菌食中毒対策本部が設置され,対応している。

 6月23日現在の状況は以下のとおりである。

 有症者の初発は6月初旬で,11日がピークであった。有症者累計185名で,そのうち入院者は累計6名であった。全児童,調理者,教職員,家族等の糞便838検体の検査の結果,45名(児童38名,教職員6名,家族1名)から病原性大腸菌O157:H7が検出された。これらの株はいずれもPCR法,RPLA法によってVT1とVT2両毒素産生遺伝子と毒素産生性を確認した。生化学的性状はソルビット(遅+),ラムノース(+),ズルシット(+),白糖(+)であった。プラスミドプロファイルは1株を除き44患者由来株とも同一パターン(3コのプラスミド保有)を示した。

 今回,保育園児を含む家族内感染がみられた。本事件は現在終息に向かっているが,継続調査中である。なお,全国的に続発していることから,原因究明にあたっている厚生省の依頼によって菌株を予研に送付した。DNA解析の結果が待たれる。



広島県保健環境センター 小川博美





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