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Vol.17 (1996/11[201])

<国内情報>
今年の夏の無菌性髄膜炎(エコーウイルス7型の小流行)−神戸市


 毎年のように夏期には小児の無菌性髄膜炎患者が続出するが,本年神戸市立中央市民病院においてはエコーウイルス7型(E7)による患者が大半を占めた。当病院は比較的重症患者が多いが,この地域のE7の小流行を反映していると考えられる。

 6月〜8月までの間,生後13日〜8歳までの小児入院患者7名12検体からE7を分離同定した(表)。うち,無菌性髄膜炎患者は4名7検体であった(なお,当病院から当研究所ウイルス室にウイルス検出の依頼のあった小児無菌性髄膜炎患者は12名で,E7検出は4名,コクサッキーウイルスB1型検出1名,コクサッキーウイルスB5型検出1名であった)。 検体は髄液・咽頭ぬぐい液・糞便を用い,ウイルス分離はRD-18S,FL,HEp-2,Vero-E6を常用細胞とし,MRC-5も使用した。E7の細胞に対する感受性はRD-18Sがもっとも強く,FL,HEp-2,Vero-E6,MRC-5も感受性を示した。E7を検出した患者からの各検体ごとのウイルス分離陽性率は髄液1/4(25%),咽頭ぬぐい液7/7(100%),糞便4/4(100%)であり,咽頭ぬぐい液および糞便から高頻度に検出できた。分離した12株のうち,10株は初代で分離できた。そのほとんどは検体接種後2日〜4日目の早期にCPEが出現した。分離したウイルスの感染価は105〜107 TCID50/mlであった。

 同定は最初従来の予研プール血清(H-O)を使用したが同定困難であり,デンカ生研のエコーウイルス16型単味抗血清で若干の抑制がみられエコーウイルス16型と判定した。しかしその後予研よりプール血清EP-95が分与され,再同定を行ったところ,E7と同定された。単味抗血清は予研より分与されたものを使用した。また昨年夏期に無菌性髄膜炎患者より分離同定されたエコーウイルス16型2株を再試験したところ,うち1株はE7と同定され,昨年夏期より,E7の小流行の兆しがあったことが推測できる。ペア血清が採取できた分離陽性患者はE7に対する中和抗体の有意な上昇を認めた。また,ウイルス分離が陰性であった無菌性髄膜炎の患者4名中,E7に対する中和抗体価の有意の上昇を認めたもの1名,回復期に128倍以上の抗体価を示したもの2名で,血清学的にE7の感染が推定された。 E7による無菌性髄膜炎患者(血清学的に推定されるものも含む)の臨床症状は,37.5〜40℃の発熱であり,半数以上が嘔吐・頭痛を伴い,上気道症状を伴うものもあった。下痢・発疹は伴わなかった。予後は1例(脳波異常)を除いて良好であった。

 国内のE7の発生は南西部各地(宮崎県,鳥取県,岡山県,奈良県,大阪府,滋賀県,神戸市等)に局在している。今後の動向が注目される。



神戸市環境保健研究所 秋吉京子 須賀知子
神戸市立中央市民病院小児科 春田恒和 西尾利一


表 1996年6月〜8月 エコーウイルス7型分離陽性データ





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