HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.17 (1996/12[202])

<外国情報>
リファンピシンで治療しているHIV感染結核患者へのプロテアーゼ阻害剤投与の影響


 1995,96年にFDAにより3つの抗HIV薬,saquinavir(InviraseTM),ritonavir(NorvirTM)およびindinavir(CrixivanTM)が認可された。nelfinavir(ViraceptTM)も近々認可される見込みである。これらはすべてHIVのプロテアーゼ阻害剤であるが,HIV感染者によくみられる結核の治療剤であるリファマイシンと作用が拮抗する。リファマイシンは,プロテアーゼ阻害剤の代謝を促進する(肝P450チトクローム酸化酵素の誘導を介して)。この結果,血中濃度が治療値以下となる。さらに,プロテアーゼ阻害剤はリファマイシンの代謝を遅らせ,この結果,リファマイシンの毒性を亢進させる。このレポートでは,HIV感染者で結核と診断され,プロテアーゼ阻害剤を使用しているか,あるいはこの適応のある患者に正式なガイドラインが出るまでどのように処理したらよいか述べている。

 HIV感染者が結核に感染した場合,致命的となるため早急に薬物療法を開始しなければならない。通常,イソニアジドとリファンピシンを最低6カ月投与,これに加えピラジナミドおよびエタンブトールかストレプトマイシンを最初の2カ月間投与する。この際,リファンピシンは必須の成分である。従って,プロテアーゼ阻害剤とリファンピシンとの薬理的相互作用は重要である。

 どのような選択肢をとるかは,ケースによって異なる。例えばHIV感染者でプロテアーゼ阻害剤投与が考慮されているとき結核感染が見つかった場合,少なくとも6カ月,リファンピシンによる結核治療を行いこれを完結させることである。この場合,プロテアーゼ阻害剤以外の抗ウイルス剤の使用は可能である。また,プロテアーゼ阻害剤の治療を受けているとき結核感染が見つかったケースでは以下のとおり,オプション1:プロテアーゼ阻害剤を中断し,抗結核剤の投与を開始する。この際抗ウイルス剤中断のリスクについては分かっていないが,結核の治療にリファンピシンを除いたときのリスクや副作用は分かっており,治療期間が長引いたり(18〜24カ月),治療の失敗および死亡率の上昇などがあり,リファンピシンを除くことは勧められない。オプション2:リファンピシン,イソニアジド,ピラジナミド,エタンブトールまたはストレプトマイシンを最低2カ月の短期間使用し,喀痰の反応を見ながらさらに16カ月間イソニアジド(15mg/kg),エタンブトール(50mg/kg)を週2回使用する。これによりプロテアーゼ阻害剤の使用が可能となる。オプション3:プロテアーゼ阻害剤としてindinavir(8時間毎に800mg)とリファンピシンの代わりにリファブチン(150mg/日)を使用する選択肢がある。リファブチンはリファンピシンより肝チトクローム酸化酵素誘導能が小さく,リファブチンとindinavirの投与では両剤とも受容可能なレベルであったという報告がある。しかし,この場合リファブチンの血中濃度を注意深くモニターしなければならない(米国では特殊なセンターでのみしか行われていない)。オプション2,3とも,大規模なトライアルは行われていないが,CDCは次のガイドラインを提唱している。1)頻繁に細菌学的検査を行う,2)治療期間を延ばす:オプション2は18カ月,オプション3は9カ月まで,3)オプション3はindinavirのみ使用,4)薬剤毒性を注意深くモニターする,などである。

(CDC,MMWR,45,No.42,921,1996)






前へ 次へ
copyright
IASR