2005年5月10日〜7月12日までに採取された24名の流行性耳下腺炎患者(いずれも耳下腺の腫脹を認める)の咽頭ぬぐい液検体についてRD-18S、HeLa、Vero、HEp-2、GMK、LLC-MK2およびVeroE6細胞を用いてウイルス分離を実施した。Vero、LLC-MK2およびVeroE6細胞にはトリプシンを添加した維持培養液を使用した。ムンプスウイルスの同定は、直接蛍光抗体法(デンカ生研)により行った。
24検体中17検体よりムンプスウイルスを分離した(陰性5検体、検査中2検体)。VeroE6細胞で17検体すべて、Vero細胞では14検体、LLC-MK2細胞では2検体から分離された。細胞変性効果(CPE)はいずれの細胞でも明瞭であり、トリプシンを添加しなかった維持培養液下でも15検体から分離された(VeroE6細胞のみで実施)。ムンプスワクチン接種歴のある3名のうち、4年前と8年前に接種した2名からはムンプスウイルスが分離され、接種時期が不明で軽症であった4歳児では分離陰性であった。
また、ムンプスウイルスが分離された2名(1名は咽頭痛等上気道症状を呈する)からRD-18S、HeLa細胞にてエコーウイルス3型も分離された。
流行性耳下腺炎は、診断が容易であることや、ほとんどの場合がムンプスウイルスであることからウイルス分離検査が行われることは少ない。しかし、今回ワクチン接種歴があるにもかかわらず耳下腺腫脹を呈し、ムンプスウイルスが分離された症例や、上気道症状を呈する症例からエコーウイルスが分離されたことから、このような症例については種々のウイルスを対象とした分離検査が必要と思われる。
神奈川県衛生研究所・微生物部 齋藤隆行 尾上洋一 新川隆康
神奈川県感染症情報センター 中村廣志 折原直美
落合医院 片山文彦