患者は28歳女性で麻疹ワクチン接種歴および麻疹既往歴は無く、2011年1月31日からインドネシアに滞在し2月9日に帰国した。2月14日から咳、微熱などの風邪様症状を認め、19日に近医を受診し風邪と診断された。2月20日に顔面に発疹が出現し、翌日には頚部まで拡大したため、22日に他医療機関を受診したところ、発熱(39℃)、咳、結膜充血、コプリック斑、発疹などの臨床症状から麻疹が疑われ入院措置がとられた。
2月23日に採取された患者の血液を検体として、麻疹ウイルスN遺伝子を標的としたRT-nested PCR法を実施し、得られた増幅産物についてダイレクトシークエンス法で塩基配列を決定した。決定した塩基配列の一部456bpについて系統樹解析を行ったところ、遺伝子型G3に分類された(図1)。また、DDBJのBLAST検索の結果、2010年にイギリスで検出された株(MVs/Watford.GBR/40.10)と99.8%(455bp/456bp)の相同性を示した。
G3型麻疹ウイルスはインドネシアや東ティモールなどに分布しているが、本邦で確認されたのは今回が初めてであり、本症例は患者の渡航歴からインドネシアからの輸入例であると考えられた。
なお、患者は3月2日に退院予定であり、3月2日現在、渡航に同行した者の発症、および患者周囲での二次感染例は確認されていない。国内での麻疹患者の発生数の減少に伴い、2011年に入っても海外に由来するD9型やD4型などの検出例が相次いでいることから、輸入例の鑑別に有用な遺伝子型別による検査室診断が重要になってきているものと考えられる。
千葉市環境保健研究所医科学課
田中俊光 横井 一 小林圭子 岩撫晴子 野口喜信 三井良雄 岡本 明
千葉市保健所感染症対策課
小川さやか 小山大雅 長嶋真美 大野喜昭 大塚正毅