1)患者1:12歳女児で、ワクチン接種歴無し。オーストラリアに2月3日から家族で滞在後2月20日に帰国。2月28日に発熱し、インフルエンザを疑って医療機関を受診したが迅速診断キットで陰性。発熱が続き、発疹が現れたことから3月4日に医療機関を受診し、臨床症状により麻疹と判断され検体採取。
2)患者2:11歳男児で、患者1の弟。ワクチン接種歴無し。2月28日夜に発熱。3月1日に医療機関を受診、インフルエンザ迅速診断キットで陰性。3月5日に解熱後、 3月11日に再度発熱。3月14日に検体採取。
3)患者3:9歳女児で、患者1の妹。ワクチン接種歴無し。3月11日に発熱。3月14日に検体採取。
4)患者4:6歳男児で、患者1の弟。ワクチン接種歴無し。3月10日に発熱。3月14日に検体採取。
患者1〜4の咽頭ぬぐい液、末梢血単核球、尿を検体として、広島県立総合技術研究所保健環境センターにおいてRT-nested PCR法により麻疹ウイルス遺伝子の検出を試みた結果、すべての検体から麻疹ウイルスのNおよびH遺伝子が検出された。4人の患者の検体からのN遺伝子の増幅産物について、ダイレクトシークエンス法により塩基配列を決定し、系統樹解析を実施したところ、すべての患者由来のN遺伝子の配列(456bp)は100%一致し、遺伝子型D8に分類された(図1)。
遺伝子型D8は、日本においては過去に2009年に沖縄県(MVi/Okinawa.JPN/37.09 [D8]、AB523885)、2010年に横浜市(MVs/Yokohama.JPN/36.10 [D8]、AB597556)からも報告されており、これら報告例の遺伝子配列とはそれぞれ96%(438bp/456bp)、97%(442bp/456bp)の相同性であった。
今回の広島県での症例は、患者家族の渡航歴からオーストラリアからの輸入症例による家族内感染と考えられた。5月20日現在、県内において本症例からの二次感染は確認されていない。
参考文献
1) IASR 30: 299-300, 2009
2) IASR 31: 328-329, 2010
広島県立総合技術研究所保健環境センター
重本直樹 高尾信一 島津幸枝 谷澤由枝 福田伸治 松尾 健
福山市保健所保健予防課 岡田英久 平尾美香