これらについて、当初、県内にて流行中であった手足口病・ヘルパンギーナ、伝染性紅斑、流行性耳下腺炎の原因ウイルスであるエンテロウイルス、ヒトパルボウイルス、ムンプスウイルスに加え、主要な呼吸器ウイルスを対象とした(RT-)PCR法によるウイルス遺伝子検索を行ったが、すべて陰性であった。そこで、新生児髄膜炎との関連性が報告されているパレコウイルス2) について、VP3/VP1領域を標的としたNested-RT-PCR法1) によるウイルス遺伝子検出を試みたところ、3検体すべてから、パレコウイルス特異的遺伝子が検出され、PCR産物のダイレクトシークエンスによる塩基配列の決定およびBLASTによる相同性検索の結果、パレコウイルス3型と型別判定された(表、患者No.10〜12)。
一方、今シーズンの発生動向調査の病原体サーベイランス検体においても、1歳未満の患者検体が多く搬入されていたことから、これらのうち、生後3カ月以内の患者26名36検体を対象として、同様にパレコウイルス遺伝子検索を行ったところ、県内全域の5医療機関からの16名22検体からパレコウイルス3型が検出された(表)。
パレコウイルス3型は、2008年以来3) 、大きな流行が見られなかったが、2011年については、既に各地の地方衛生研究所から131件の検出報告があり、全国的に流行していることが示されている(2011年8月31日現在)。
パレコウイルスについては、他の型と比較して特にパレコウイルス3型が、3カ月未満の乳児での感染が多いことおよび神経親和性が高いことが報告されている2) 。これらの乳児については、入院治療が必要となる場合が多く、また、無菌性髄膜炎の症状を呈することもある。特に、本年のようなパレコウイルス3型の流行が見られる場合には、乳児での発熱等症状患者の動向についての注意が必要である。
参考文献
1) Harvala H., et al ., J Clin Microbiol 46: 3446-3453, 2008
2) Harvala H., et al ., J Infect Dis 199: 1753-1760, 2009
3) 山本美和子,他, IASR 29: 255, 2008
山口県環境保健センター
戸田昌一 岡本玲子 渡邊宜朗 濱岡修二 冨田正章 調 恒明