茨城県筑西保健所管内の小学校第3学年(在籍者数38名、全校児童数210名)において、9月26日にインフルエンザにより1名の児童が欠席した。翌27日〜30日までに新たに6名がインフルエンザまたはインフルエンザ様疾患を発症した。土・日曜日をはさみ終息することが期待されたが、10月4日にさらに3名、合計10名が発症(うち7名が欠席、1名が早退)した。そのため、10月5日から3日間の学年閉鎖措置が取られた。発症者10名のうち、医療機関において受診時に迅速診断キットでB型インフルエンザと判定されたのは7名である。集団発生の報告を受けた保健所により10月4日、この7名についてのうがい液が採取された。7名の主要症状(発熱38〜40℃、頭痛、咽頭痛、咳、鼻汁)、今シーズンのワクチン接種の有無および抗インフルエンザ薬投与の有無等は表のとおりである。
当研究所には採取と同日の10月4日に検体が搬入された。これらについて、リアルタイムPCR検査を実施したところ、7検体中5検体からB型インフルエンザの遺伝子が検出された(表)。 この7検体についてMDCK細胞によるウイルス分離を実施した結果、7検体中5検体からウイルスが分離された(ウイルスが分離された5検体は、PCR陽性であった5検体と同一である)。
分離された5株について、国立感染症研究所より配布された2011/12シーズン用インフルエンザウイルス同定キットを用いてHI試験を行った。その結果、B/Brisbane/60/2008(Victoria系統)抗血清(ホモ価320)に対して、5株中4株がHI価640、1株がHI価320であった。また5株とも、A/California/7/2009(H1N1)pdm09抗血清(ホモ価640)、A/Victoria/210/2009(H3N2)抗血清(ホモ価640)に対してはHI価<10、B/Bangladesh/3333/2007(Yamagata系統)抗血清(ホモ価640)に対してはHI価10であり、今回分離された5株はB型インフルエンザウイルス(Victoria系統)と同定された。
2010/11シーズンにおいては、全国的なB型インフルエンザウイルスの検出の主流はVictoria系統が占めており、茨城県でも分離検出されたB型インフルエンザウイルス11件のうち8件はVictoria系統であった(山形系統1件、系統不明2件)。しかし、2011/12シーズンはシーズン初めに堺市において山形系統B型インフルエンザウイルスが相次いで検出されたという報告1)もあり、今後の発生の動向には注意が必要である。
本事例は、茨城県内における今シーズン初のインフルエンザ集団発生事例であった。県内では、その後、インフルエンザAH3亜型(香港型)による集団発生が県南部の幼稚園で1件、県西部の小学校で1件起きている。これらの事例の発生を機に、本格的なインフルエンザの流行シーズンに入るのか注視するとともに、予防対策の啓発に努める必要があると思われる。
参考文献
1) http://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr3821.html
茨城県衛生研究所
土井育子 渡邉美樹 笠井 潔 増子京子 原 孝 杉山昌秀
茨城県筑西保健所
常井和美 高野直美 藤島和則 緒方 剛