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第16週ダイジェスト
(4月14日〜16日)
  • 発生動向総覧 (3月報含む)
  • 注目すべき感染症
 をPDF版よりピックアップして掲載しています。


 発生動向総覧

〈第16週コメント〉4月25日集計分
全数報告の感染症

1類感染症:

報告なし

2類感染症:

細菌性赤痢7 例(推定感染地域:国内4 例、インドネシア1 例、ペルー1 例、インド1 例)、腸チフス1 例(推定感染地域:バングラデシュ)

3類感染症:

腸管出血性大腸菌感染症10 例(うち有症者8 例)

4類感染症:

アメーバ赤痢8例(推定感染地域:国内7例、不明1例)、クロイツフェルト・ヤコブ病3例(いずれも孤発性)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(57歳、死亡)、先天性風疹症候群1例(報告基準を満たさず、削除の予定)、ツツガムシ病2例、破傷風1例(74歳)、レジオネラ症1例

急性ウイルス性肝炎9例

A型7例(推定感染地域:いずれも国内)
B型2例(推定感染経路:いずれも性的接触)

後天性免疫不全症候群11例

(AIDS 3例、無症候7例、その他1例)
推定感染経路:性的接触8例(異性間3例、同性間5例)、不明3 例
推定感染地域:国内6例、タイ1例、南アフリカ1例、不明3 例

梅毒3例(早期顕症)


定点把握の対象となる4類感染症(週報対象のもの)
 咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加し、過去5 年間の同時期の平均と比較してかなり多く、過去10年間との比較でも最高の値となっている。都道府県別では滋賀県(0.8)、新潟県(0.6)、鹿児島県(0.5 )が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期の平均と比較してやや多く、都道府県別では富山県(4.0 )、福井県(3.4)が多い。マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は0.19 で増加し、過去4 年間の同時期の平均の約2.5倍あり、都道府県別では岡山県(1.2)、新潟県(0.8)、大阪府(0.8)、青森県(0.7)、宮城県(0.7)が多い。インフルエンザの定点当たり報告数は減少し続けている。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は微増し、都道府県別では鳥取県(14.6)、宮崎県(13.0)、福井県(13.0 )が多い。水痘の定点当たり報告数は3 週連続で減少した。手足口病、伝染性紅斑、ヘルパンギーナの定点当たり報告数はいずれも微増した。都道府県別では、手足口病は宮崎県(2.5)、山形県(1.2)、伝染性紅斑は北海道(0.9)、新潟県(0.8)、ヘルパンギーナは鳥取県(0.6)、熊本県(0.5)が多い。風疹の定点当たり報告数も微増し、都道府県別では岡山県(1.4)が前週と比較してさらに倍増し、全国の報告数の半数以上を占めている。麻疹(成人麻疹を除く)はゆっくりと増加しており、都道府県別では福島県(1.4)、宮崎県(0.7)が多い。成人麻疹は0.05と増加し、都道府県別では東京都(0.4)、神奈川県(0.3)が多い。

当該週と過去5年間の平均(過去5年間の前週、当該週、後週の合計15週の平均)の比を対数にてグラフ
上に表現した。1標準偏差を超えた場 合黄で、2標準偏差を超えた場合赤で色分けしている。


〈3月コメント〉
◆性感染症について  2003年4月11日集計分

 2003 年3 月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が3.49 (男1.48 、女2.01)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.81 (男0.34 、女0.47)、尖形コンジロームが0.48 (男0.25、女0.23)、淋菌感染症が1.64 (男1.30 、女0.35 )で、4疾病のうち、男性では性器クラミジア感染症および淋菌感染症、女性では性器クラミジア感染症が多かった(図1)。前月に比べ、いずれも横ばいか、やや上昇傾向がみられる(グラフ総覧)。

図1.各性感染症が総報告数に占める割合(3月)

 過去3 年間の同時期と比較すると、女性で淋菌感染症が平均+1 標準偏差(SD)を超えている(図2)



 定点当たり報告数を年齢階級別・性別に比較すると(図3:PDF版参照)、いずれの疾病でもピークは20〜29
歳にあったが、性器ヘルペスウイルス感染症では50代以降の高年齢層からの報告も少なくない。淋菌感染症ではいずれの年齢層でも男性の占める割合が高いが、他の3疾患では若年齢層で女性の報告者数が多い傾向が認められた。(3月の性感染症定点総数は917)
 感染症法が施行された1999年4月以降について、若年齢層(15〜29歳)での各性感染症の定点当たり報告数を月別男女別に図4(PDF参照)に示した。いずれも横ばいか、やや上昇傾向がみられる。
 注:本発生動向調査で得られる性感染症患者報告数および解析結果は、現在の定点構成に基づく制限のもとに解釈される必要がある。

◆薬剤耐性菌について 4月11日集計分
【注】()内の+、‐ 、=は、前月に比し定点当たり報告数のそれぞれ増加、減少、不変を表す。

3月の基幹定点総数:

464.

3月の定点当たり報告数:

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA )感染症 3.44 (‐ )
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP )感染症 0.90 (+)
薬剤耐性緑膿菌感染症 0.12 (+)

年齢階級別:

MRSA 感染症・・・

高齢者に多く、65 歳以上が全体の73%を占めている。
累積でも65 歳以上が72%に上る。

 

PRSP 感染症・・・

1 〜4 歳(0.38)が最も多く、5 歳未満が55%を占めている。65 歳以上の高齢者も21%を占めている。累積でも1〜4 歳(1.15)が最も多い。

 

薬剤耐性緑膿菌感染症・・・

65歳以上が全体の57%を占めている。累積でも、65歳以上が52%を占める。

性 別:

定点当たりの報告数で男性の女性に対する比率を見た場合、MRSA 感染症で1.7 倍、
PRSP 感染症で1.4 倍、薬剤耐性緑膿菌感染症で2.7 倍上回っている。

都道府県別:

MRSA 感染症・・・

山口県(8.86)からの報告が多く、13都道府県で定点当たり報告数が5.0を超えている。累積では、富山県(22.4)と高知県(22.1)からの報告が多い。

    

PRSP 感染症・・・

千葉県(7.11)からの報告が多く、富山県(3.80)からの報告は微減した。昨年から引き続き、青森県からの報告はない。累積では、千葉県(18.0)からの報告が最も多い。

 

薬剤耐性緑膿菌感染症・・・

宮城県(0.58)、岩手県(0.45)、山口県(0.43)からの報告が多い。累積では、岩手県(1.15)からの報告が多い。

月 別:

MRSA感染症の定点当たり報告数は、前年の同時期(3.45)を下回った。PRSP感染症の定点当たり報告数は、先月に引き続き前年の同時期(1.06)を下回った。

◆結核サーベイランス月報 4月24日集計分

 3 月の新登録患者数は2,464 人、活動性肺結核患者は1,981 人(うち喀痰塗抹陽性患者は926人)であった。
 また、新登録患者数に含まれない(統計的には別掲扱い)マル初*は486 人、非定型抗酸菌陽性者数は225人であった。

*マル初…結核の感染が強く疑われ、発病予防のための治療を受けている者であって、正確には結核発病者ではない。

 コメントは結核研究所の結核発生動向調査結果報告(http://www.jata.or.jp/tbmr/tbmr.htm)をご覧ください。


  注目すべき感染症

◆咽頭結膜熱

 咽頭結膜熱の定点当たり報告数は、例年より多い状態で推移している。
 本疾患はアデノウイルスによる感染症で、発熱、咽頭炎、眼症状を主とする。プールでの感染も見られることからプール熱とも呼ばれる。例年、6月頃から徐々に増加しはじめ、7〜8月にピークを形成する夏期の疾患である。学童年齢の罹患が主であるとされているが、感染症発生動向調査での罹患年齢からは、5歳以下が約6 割を占めている。感染経路は通常飛沫感染であるが、プールでは結膜からの感染や経口的な感染も考えられている。

図. 過去10 年間の咽頭結膜熱の週別定点当たり報告数グラフ

 症状としては、5〜7 日の潜伏期の後に発熱、頭痛、食欲不振、全身倦怠感とともに、咽頭炎による咽頭痛、結膜炎にともなう結膜充血、眼痛、羞明、流涙、眼脂を訴え、それらが3〜5日間程度持続する。眼症状は一般的に片側から始まり、両側に広がることが多い。頚部特に後頚部のリンパ節の腫脹と圧痛を認めることがある。眼に永続的な障害を残すことはない。
 1994 年頃からアデノウイルス7 型による呼吸障害などの重症例が報告され、問題となった。最近の報告は減っているものの、免疫抑制者における重症アデノウイルス感染症も新たに問題となってきている。
 本疾患は、今後夏にかけて報告数が上昇してくると考えられ、注意深く推移を見守る必要がある。

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