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第28週ダイジェスト
(7月7日〜13日)
  • 発生動向総覧 (6月報含む)
  • 注目すべき感染症
 をPDF版よりピックアップして掲載しています。


 発生動向総覧

〈第28週コメント〉7月17日集計分
全数報告の感染症

1類感染症:

報告なし

2類感染症:

細菌性赤痢4例(推定感染地域:国内2例、インド1例、インドネシア1例)

3類感染症:

腸管出血性大腸菌感染症89 例(うち有症者53 例)
  最多報告は鹿児島県12例(すべて保育園におけるO111 VT1 の集団発生)
  血清型・毒素型はO157 VT1 ・VT2 (25例)、O157 VT2(21例)、O26 VT1 (14例)、その他(29例)

4類感染症:

アメーバ赤痢4例(推定感染地域:いずれも国内)、オウム病1例(推定感染源:インコ)、ジアルジア症1例(推定感染地域:国内)、ツツガムシ病1例、日本紅斑熱1例(島根県)、梅毒5例(早期顕症2例、晩期顕症1例、先天梅毒1例、無症候1例)、破傷風1例(92歳)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(菌検出検体:胆汁.遺伝子型:不明)、マラリア1例(三日熱_推定感染地域:インド)、レジオネラ症3例

急性ウイルス性肝炎4例

B型 1例(推定感染経路:性的接触)
C型 1例(推定感染経路:針刺し事故)
E型 1例(推定感染地域:中国)
サイトメガロウイルス 1 例

後天性免疫不全症候群12例

(AIDS 3例、無症候7例、その他2例)
推定感染経路:性的接触11例(異性間3例、同性間6例、異性間/同性間2例)、不明1例
推定感染地域:国内10例、タイ1例、不明1例

(補)他に、ライム病1例の報告があったが、報告基準を満たさず削除予定


定点把握の対象となる4類感染症(週報対象のもの)
 咽頭結膜熱の定点当たり報告数は微増し、過去5年間の同時期と比較してかなり多く、過去10年間と比較して本年16週以降最高の値で推移している。都道府県別では大分県(2.4)、福井県(1.5)、富山県(1.3 )が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は微減したが、過去5年間の同時期と比較してやや多く、都道府県別では宮崎県(4.0)、富山県(3.7)、山口県(3.0)が多い。マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は微減して0.24で、依然として過去4年間の同時期の平均と比較して約2倍となっている。都道府県別では山形県(1.8)、岡山県(1.2)、岩手県(0.9)が多い。手足口病の定点当たり報告数は増加し、都道府県別では広島県(5.5 )、山口県(5.2)、宮崎県(4.4)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は微増し、都道府県別では北海道(1.3)、長野県(1.0)が多い。百日咳の定点当たり報告数は前週と同値で、都道府県別では依然として栃木県(0.2)が多い。風疹の定点当たり報告数は前週と同値で、都道府県別では依然として岡山県(0.4)が多いが、16週をピークに減少してきている。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は増加し、都道府県別では山口県(5.6)、鳥取県(3.6)、大阪府(3.4)が多い。麻疹(成人麻疹を除く)の定点当たり報告数は微減し、都道府県別では栃木県(0.5)、福島県(0.4)、宮城県(0.3)、宮崎県(0.3)が多い。流行性角結膜炎の定点当たり報告数は微減し1.07で、都道府県別では愛媛県(2.9)、栃木県(2.3)、高知県(2.3)が多い。無菌性髄膜炎の定点当たり報告数は前週と同値の0.07で、都道府県別では和歌山県(0.9)、福井県(0.7)が多い。成人麻疹の定点当たり報告数は微増して0.04で、都道府県別では福島県(0.29)、宮城県(0.25)が多い。

当該週と過去5年間の平均(過去5年間の前週、当該週、後週の合計15週の平均)の比を対数にてグラフ
上に表現した。1標準偏差を超えた場 合黄で、2標準偏差を超えた場合赤で色分けしている。


〈6月コメント〉
◆性感染症について  2003年7月9日集計分

2003年6月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が3.97 (男1.71、女2.26)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.89(男0.37、女0.52)、尖形コンジロームが0.66(男0.36、女0.30)、淋菌感染症が1.92(男1.45 、女0.47)で、4疾患のうち、男性では性器クラミジア感染症および淋菌感染症、女性では性器クラミジア感染症が多かった(図1)。前月に比べ、尖形コンジロームが男女ともに、淋菌感染症が女性において増加している(グラフ総覧参照)。過去4年間の同時期と比較すると、尖形コンジロームは男女ともに平均+2標準偏差(SD)を、女性の淋菌感染症は平均+1SD を超えている(図2)

図1.各性感染症が総報告数に占める割合(6月)


定点当たり報告数を年齢階級別・男女別に比較すると(図3:PDF参照)、いずれの疾患でもピークは20〜29歳にあったが、性器ヘルペスウイルス感染症では50代以降の高年齢層からの報告も少なくない。性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖形コンジロームでは、若年齢層で女性の報告者数が多い傾向が認められた。淋菌感染症では、全体としては男性の占める割合が高いものの、15〜19歳では女性の報告者数の方が多かった。(6月の性感染症定点総数は915)
 感染症法が施行された1999 年4月以降について、若年齢層(15〜29歳)での各性感染症の定点当たり報告数を月別・男女別に図4(PDF参照)に示した。男性の尖形コンジローム、女性の淋菌感染症の増加が目立つ。

注:本発生動向調査で得られる性感染症患者報告数および解析結果は、現在の定点の構成に基づく制限のもとに解釈される必要がある。詳細はIDWR 週報2000年第46号(10月報)4ページの記載を参照されたい。

◆薬剤耐性菌について 7月9日集計分

6月の基幹定点総数:

463.

6月の定点当たり報告数:

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA )感染症
  3.91 (前月:3.74 、前年同月:3.58)
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP )感染症
  1.45 (前月:1.48 、前年同月:1.18)
薬剤耐性緑膿菌感染症
  0.13 (前月:0.16 、前年同月:0.10)

年齢階級別:

MRSA 感染症・・・

65 歳以上が全体の68%(70 歳以上が58%)を占めている。

 

PRSP 感染症・・・

5 歳未満の小児が最も多く、全体の65%を占めている。
65 歳以上も多く、全体の17%を占めている。

薬剤耐性緑膿菌感染症・・・

65 歳以上が全体の57%を占めている。

性 別:(女性を1として算出した男女比)

MRSA 感染症・・・・・・・・・・・・1.8/1
PRSP 感染症・・・・・・・・・・・・・1.3/1
薬剤耐性緑膿菌感染症・・・1.8/1

都道府県別:

MRSA 感染症・・・

定点当たり報告数は富山県(7.60)、島根県(7.13)が多く、累積では山口県(46.25)、富山県(44.80)が多い。

PRSP 感染症・・・

定点当たり報告数は千葉県(9.11)、富山県(6.40)が多く、累積でも千葉県(46.78)、富山県(32.80)が多い。

薬剤耐性緑膿菌感染症・・・

定点当たり報告数は埼玉県(1.13)、岩手県(0.65)が多く、累積では岩手県(2.60)、広島県(2.55)が多い。

◆結核サーベイランス月報 7月22日集計分

 6 月の新登録患者数は2,972 人(男性1,888 人、女性1,084 人)で、このうち活動性肺結核患者は2,406 人(うち喀痰塗抹陽性者は1,108 人)であった。
 都道府県・政令指定都市別の新登録患者数は、東京都(385 人)、大阪府(大阪市を除く)(201
人)、大阪市(155 人)、愛知県(名古屋市を除く)(126 人)、千葉県(千葉市を除く)(116 人)が多い。
また、別掲により集計されているマル初者数*は527 人、非定型抗酸菌陽性者数は230 人であった。

*マル初…結核の感染が強く疑われるが発病はしておらず、発病予防のための内服を行っている者。

 コメントは結核研究所の結核発生動向調査結果報告(http://www.jata.or.jp/tbmr/tbmr.htm)をご覧ください。


  注目すべき感染症

◆咽頭結膜熱

 咽頭結膜熱の定点当たり報告数は例年より多い状態で推移している。第28週でも更に増加し、定点当たり報告数は過去10年間のうちで最大となっている(図)。報告が多かったのは大分県(2.4)、福井県(1.5)、富山県(1.3)、福岡県(1.3)、三重県(1.2)、長野県(1.1)などとなっている。
 第28 週においても、報告された症例の約7割以上が5歳以下の小児であった。本年、現在までに咽頭結膜熱患者から分離されている病原体は、アデノウイルス3 型、2型が主である。1996〜98年
に増加して、肺炎等の重症例・死亡例が発生した7型も分離されている。感染経路は通常飛沫感染であるが、プールでの結膜からの感染や経口的な感染も考えられるので、水泳前後のシャワーやプールの水の消毒の徹底なども大切である。

図. 過去10年間の咽頭結膜熱の週別定点当たり報告数



◆手足口病

 手足口病は、口腔粘膜や手、足に現れる水疱性の発疹を主症状とした急性ウイルス感染症で、幼児を中心に夏季に流行が見られる。コクサッキーA16 型(CA16)、CA10、エンテロウイルス71型(EV71)などのエンテロウイルスによりおこり、一般的に予後は良好な疾患である。感染は主として、咽頭から排泄されたウイルスの飛沫感染でおこるが、便中に排泄されたウイルスからの経口感染や、水疱内容物からの感染もありうる。便中へのウイルスの排泄は長期間にわたり、症状が消失してからも2〜4週間にわたり感染源になりうる。

図. 過去10年間の手足口病の週別定点当たり報告数

 例年、第27〜30週にかけて発生のピークを迎える。1985年、1990年、1995年、2000年と5年おきに比較的大きな流行がみられており、今年は例年並みに推移してきたが、定点当たり報告数は第25週から急峻な立ち上がりをみせており、1995年、2000年に次いで報告数が多くなっている(図)。第28 週では広島県(24.1)、山口県(11.1)などからの報告が多かった。
 地研からのウイルス検出報告では、2001年、2002年にはCA16が大部分を占めていたが、本年はこれまでEV71 が多く分離されている(「病原体情報」参照)。近年、マレーシア、台湾などの東南アジア地域でEV71 感染による小児の感染症において、中枢神経系の重篤な合併症が起きる例が報告され、国内でも関西地区でEV71 と関連した脳炎による死亡例の報告もある。今年EV71 が多く分離されていること、ここ数週間が例年流行のピークであることから、重篤例の発生、及び流行状況についての監視が必要である。

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