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第29週ダイジェスト
(7月14日〜7月20日)
  • 発生動向総覧
  • 注目すべき感染症
 をPDF版よりピックアップして掲載しています。


 発生動向総覧

〈第29週コメント〉7月24日集計分
全数報告の感染症

1類感染症:

報告なし

2類感染症:

細菌性赤痢4 例(推定感染地域:国内1 例、インドネシア2 例、インド1 例)、パラチフス1 例(推定感染地域:ネパール)

3類感染症:

腸管出血性大腸菌感染症117例(うち有症者90例)
 最多報告:東京都および香川県(ともに11 例).香川県の11例中10例は幼稚園におけるO26 VT1 の集団発生.
 血清型・毒素型:O157 VT1 ・VT2 (51例)、O157 VT2(24例)、O26 VT1 (20 例)、その他(22 例)
 年齢:5歳以下が41例(うち1歳以下15例)

4類感染症:

アメーバ赤痢6例(推定感染地域:国内3例、タイ1例、不明2例)、クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発例)、ジアルジア症3例(推定感染地域:国内2例、タイ1例)、デング熱2例(推定感染地域:ラオス1例、ブラジル1例)、梅毒8例(早期顕症2例、晩期顕症2例、無症候4例)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(菌検出検体:尿.遺伝子型:VanB )、レジオネラ症3例

急性ウイルス性肝炎4例

B型3例(推定感染経路:性的接触2例、不明1例)
C型1例(推定感染経路:不明1例)

後天性免疫不全症候群6例

(AIDS 1例、無症候5例)
推定感染経路:性的接触4例(異性間1例、同性間3例)、不明2例
推定感染地域:国内4例、不明2例

定点把握の対象となる4類感染症(週報対象のもの)
 咽頭結膜熱の定点当たり報告数は大きく増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多く、また過去10年間 と比較して本年16週以降最高の値で推移している。都道府県別では大分県(2.9)、長野県(1.9)、香川県(1.8) が多い。マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少して0.20であるが、過去4年間と比較してかなり多く、都 道府県別では岩手県(0.8)、山形県(0.7)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少し たが、過去5 年間の同時期と比較してやや多く、都道府県別では、山形県(2.3)、埼玉県(2.0)、宮崎県(2.0)が 多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は微減したが、5 年間の同時期と比較してやや多く、都道府県別では 鳥取県(6.2)、福井県(6.0)が多い。手足口病の定点当たり報告数は増加し、都道府県別では広島県(20.6)が 依然として非常に多く、次いで山口県(12.0)、埼玉県(9.6)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少し、 都道府県別では三重県(1.0)、北海道(0.9)、宮城県(0.9)、福井県(0.9)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり 報告数は増加し、都道府県別では宮城県(17.9)、山形県(13.4)、福島県(13.0)が多い。流行性角結膜炎の定 点当たり報告数は微増して1.21で、都道府県別では熊本県(7.3)、愛媛県(3.9)が多い。無菌性髄膜炎の定点 当たり報告数は微増して0.23で、都道府県別では奈良県(1.5)、大阪府(1.1)、広島県(1.1)が多い。

当該週と過去5年間の平均(過去5年間の前週、当該週、後週の合計15週の平均)の比を対数にてグラフ
上に表現した。1標準偏差を超えた場 合黄で、2標準偏差を超えた場合赤で色分けしている。


 注目すべき感染症

◆咽頭結膜熱

 咽頭結膜熱の定点当たり報告数は、例年よりかなり多い状態で推移している。第29週の定点当たり報告数は、過去10年間の全ての週のうちで最大であった第28週よりさらに増加している(図)。報告が多かったのは大分県(2.9)、長野県(1.9)、香川県(1.8 )、富山県(1.4)、三重県(1.4)、福岡県(1.3)、福井県(1.2)、兵庫県(1.2)などとなっている。

図. 過去10年間の咽頭結膜熱の週別定点当たり報告数

 第29週においても、報告された症例の約7割以上が5歳以下の小児であった。本年、現在までに咽頭結膜熱患者から分離されている病原体は、アデノウイルス3型、2型が主である。また、1996〜98年に増加して、肺炎等の重症例・死亡例が発生した7型も分離されている。本疾患の感染経路は通常飛沫感染であるが、プールでの結膜からの感染や経口的な感染も考えられるので、水泳前後のシャワーやプールの水の消毒の徹底なども大切である。

◆手足口病

 手足口病は、口腔粘膜や手、足に現れる水疱性の発疹を主症状とした急性ウイルス感染症で、幼児を中心に夏季に流行が見られる。コクサッキーウイルスA16 型(CA16)、CA10、エンテロウイルス71型(EV71)などのエンテロウイルスによりおこり、一般的に予後は良好な疾患である。例年、第27〜30 週にかけて発生のピークを迎える。1985年、1990年、1995年、2000年と5年おきに比較的大きな流行がみられており、今年は例年並みに推移してきたが、第25週から定点当たり報告数は急峻な立ち上がりをみせており、1995年、2000年に次いで報告数が多くなっている(図)

図. 過去10年間の手足口病の週別定点当たり報告数

第29週では広島県(20.6)、山口県(12.0)、埼玉県(9.6)、岐阜県(8.8 )、静岡県(8.6)などからの報告が多かった。
 地研からのウイルス検出報告では、2001年、2002年にはCA16が大部分を占めていたが、本年はこれまでEV71が多く分離されており、重症化例の発生、および流行状況についての監視が必要である。

◆無菌性髄膜炎

 無菌性髄膜炎は、全国約500の基幹定点医療機関から報告される疾患である。エンテロウイルスが原因の多くを占め、例年、夏季を中心に感染者が増加する。今年はこれまで昨年ほどの発生状況ではないが、第27週より報告数は増加してきている。年齢別では6 〜10 歳が約半数を占め、5歳以下と合わせると全体の8割程度を占めている。昨年はエコーウイルス13型(E13)による流行がみられたが、今年はこれまでにE30 をはじめ、エンテロウイルス7 1型を含む様々な種類のウイルスが分離されている。手足口病、ヘルパンギーナなどのエンテロウイルス感染症が流行している時期でもあり、発生動向を注視する必要がある。

図. 過去10年間の無菌性髄膜炎の週別定点当たり報告数

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