HTMLトップページへ戻る

第45週ダイジェスト
(2003年11月3日〜11月9日)
  • 発生動向総覧
  • 注目すべき感染症
 をPDF版よりピックアップして掲載しています。

 発生動向総覧

〈第45週コメント〉11月13日集計分
全数報告の感染症
*「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正(11月5日施行)により、対象疾患、分類が一部変更されました(第43号「速報」参照)。本週の集計は、11月3、4日届け出分も含め新分類にて表記しました。

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が、集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。

1類感染症:

報告なし

2類感染症:

コレラ1 例(推定感染地域:タイ)
細菌性赤痢7 例(推定感染地域:インドネシア4 例、インド1 例、エジプト1 例、国内1 例)
腸チフス1 例(推定感染地域:ネパール1 例)
パラチフス2 例(推定感染地域:インド1 例、ネパール1 例)

3類感染症:

腸管出血性大腸菌感染症24 例(うち有症者16例)
報告の多い都道府県:長崎県6 例、福岡県3 例
血清型・毒素型:O157 VT2 (5例)、O157 VT1 ・VT2(5例)、その他(14例)
年齢:10歳未満(13例)、10代(4例)、20代(4例)、30代(2例)、40代(0例)、50代(0例)、60代(0例)、70歳以上(1 例)

4類感染症:

オウム病1 例(推定感染源:インコ)
つつが虫病8 例〔福島県(2)、群馬県(2)、千葉県(1)、神奈川県(1 )、岐阜県(2)〕
日本紅斑熱1 例(島根県)
日本脳炎1 例(福岡県、69歳)
レジオネラ症1 例(87歳)
A型肝炎1 例(推定感染地域:国内)

5類感染症:

アメーバ赤痢4例(推定感染地域:いずれも国内)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1 例(55 歳)
後天性免疫不全症候群6例(AIDS 1 例、無症候5 例)
推定感染経路:性的接触5例(異性間3 例、同性間2 例)、不明1 例
推定感染地域:国内5 例、不明1 例
梅毒3 例(早期顕症II 期2例、無症候1 例)
破傷風1 例(61歳、予防接種歴なし)
(補)他に細菌性赤痢1例、後天性免疫不全症候群2例の報告があったが、削除予定。

定点把握の対象となる4類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。

当該週と過去5年間の平均(過去5年間の前週、当該週、後週の合計15週の平均)の比を対数にてグラフ上に表現した。1標準偏差を超えた場 合黄で、2標準偏差を超えた場合赤で色分けしている。

小児科定点報告疾患:咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第29 週をピークとし、その後は週により緩急はあるものの減少し続けていたが、第43 週から2 週続けて増加し、第45 週には減少した。過去10 年間の当該週と比較して第16 週から相変わらず最高の値であり、第45 週までの累積定点 当たり報告数の過去10 年間の平均と比較して2.8 倍を示す大きな流行となっている。都道府県別 では、鳥取県(0.7 )、山形県(0.5 )、石川県(0.5 )、山口県(0.5 )が多い。A 群溶血性レンサ球菌 咽頭炎の定点当たり報告数は減少したが、第34 週から増加傾向が認められている。都道府県 別では鳥取県(3.2 )、山形県(2.7 )、秋田県(1.8 )が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は 増加し、都道府県別では福井県(12.3 )、宮崎県(12.3 )、石川県(9.7 )が多い。水痘の定点当た り報告数は増加し、過去10 年間の当該週と比較して第43 週から最高の値となっている。都道府 県別では鳥取県(3.1 )、宮崎県(3.0 )、新潟県(2.9 )が多い(「注目すべき感染症」参照)。
*新しく対象疾患となったRS ウイルス感染症の報告は、4 県から合計7 例であった。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少して0.34 で、都道府県別で
は岡山県(3.4 )、山形県(2.1 )が多い(「注目すべき感染症」参照)。



 注目すべき感染症

◆マイコプラズマ肺炎

 マイコプラズマ肺炎は、1999 年4 月のいわゆる「感染症法」施行以降の発生動向調査では4 類感染症定点把握疾患となり、独立した疾患として、全国約500 カ所の基幹定点医療機関から報
告されている。本疾患は従来4 年周期で、オリンピックのある年に流行を繰り返してきたが、近年この傾向は崩れつつある。年間での推移をみると、晩秋から冬にかけて増加がみられている。図に感染症法施行以来の週別の定点当たり報告数を示す。

図.マイコプラズマ肺炎の年別週別発生状況

2003 年の報告数は過去の報告より高いレベルで推移している。今年は5 月下旬〜6 月上旬に報告数が増加したが、ここ数週間ではその時よりも増加している。年齢群別の報告数では1 〜4歳が最も多く、続いて5 〜9 歳が多い。今冬のSARS 対策としても、鑑別診断としてインフルエンザやマイコプラズマ肺炎などの呼吸器感染症は重要であり、可能な限り病原体を把握することが望まれる。

◆水 痘

 水痘帯状疱疹ウイルスによって起こる感染症で、潜伏期は2 週間程度(10 〜21 日)である。発疹は全身性で掻痒を伴い、紅斑、丘疹を経て短時間で水疱となり、痂皮化する。数日にわたり新しい発疹が次々と出現するので、急性期には紅斑、丘疹、水疱、痂皮のそれぞれの段階の発疹が混在することが特徴である。臨床経過は一般的に軽症で、倦怠感、掻痒感、38 ℃前後の発熱が2 〜3 日間続く程度であることが大半である。しかし、成人ではより重症になり、合併症の頻度も高い。通常呼吸器症状や胃腸症状を伴うことはない。合併症の危険性は年齢により異なり、健康な小児ではあまりみられないが、15 歳以上と1 歳以下では高くなる。

図.水痘の年別週別発生状況

 治療としては通常、石炭酸亜鉛華リニメント(カチリ)などの外用が行われる。抗ウイルス剤のアシクロビル(ACV )は、重症水痘、および水痘の重症化が容易に予測される免疫不全者などでは第一選択薬剤となる。健常者の水痘についても、ACV の経口投与は症状を軽症化させるのに有効であると考えられているが、全ての水痘患者に対して投与する必要はないと思われる。インフルエンザと同様に、水痘罹患時にはアスピリンの内服によるライ症候群の危険性があるので、注意を要する。例年、冬季にかけて報告数は増加するが、本年第45 週では例年に比べて報告数が多くなっている。
 年齢別では1 〜4 歳(特に2 、3 歳)での報告が多い。

 

   発生動向総覧トップページへ戻る

    IDWRトップページへ戻る

 

 

 

PDF版ダウンロードはこちらから