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第46週ダイジェスト
(2003年11月13日〜19日)
  • 発生動向総覧 (10月報含む)
  • 注目すべき感染症
 をPDF版よりピックアップして掲載しています。

 発生動向総覧

〈第46週コメント〉11月20日集計分
全数報告の感染症
*「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正(11 月5 日施行)により、対象疾患、分類が一部変更されました(第43 号「速報」参照)。

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計 を行いますので、当該週に診断された症例の報告が、集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。

1類感染症:

報告なし

2類感染症:

コレラ 1 例(推定感染地域:タイ) 、細菌性赤痢4 例(推定感染地域:国内1 例、中国1 例、カンボジア1 例、イギリス/フランス/イタリア1 例) 、腸チフス2 例(推定感染地域:国内1 例、その他1 例)

3類感染症:

腸管出血性大腸菌感染症34 例(うち有症者22 例)
報告の多い都道府県:鹿児島県6 例、宮崎県5 例
血清型・毒素型:O157 VT1 ・VT2 (14 例)、O157 VT2 (6 例)、その他(14 例)
年齢:10 歳未満(17 例)、10 代(1 例)、20 代(7 例)、30 代(6 例)、4 0 代(2 例)、50 代(0 例)、60 代(1 例)、70 歳以上(0 例)

4類感染症:

つつが虫病4 例(山形県、兵庫県、宮崎県、鹿児島県) 、デング熱1 例(推定感染地域:タイ) 、マラリア1 例(三日熱.推定感染地域:パプアニューギニア)、 E 型肝炎1 例(推定感染地域:インド) 、A 型肝炎2 例(推定感染地域:ともに国内)

5類感染症:

アメーバ赤痢 7 例(推定感染地域:国内4例、不明3例)

ウイルス性肝炎 7例

B型6 例(推定感染経路:いずれも性的接触)
C型1 例(推定感染経路:不明)

後天性免疫不全症候群 21 例(AIDS 5例、無症候13例、その他3 例)
 推定感染経路:性的接触16 例(異性間9 例、同性間7 例)、不明5 例
 推定感染地域:国内14 例、ミャンマー1 例、その他1 例、不明5 例、ジアルジア症1 例(推定感染地域:国内) 、梅毒1 例(早期顕症II 期) 、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1 例(菌検出検体:胆汁.遺伝子型:VanC 87 歳)

定点把握の対象となる4類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。


当該週と過去5年間の平均(過去5年間の前週、当該週、後週の合計15週の平均)の比を対数にてグラフ上に表現した。1標準偏差を超えた場合黄で、2標準偏差を超えた場合赤で色分けしている。

小児科定点報告疾患:インフルエンザの定点当たり報告数は未だ明らかな増加が認められていない(「注目すべき感染症」参照)。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第29 週をピークとし、その後は週により緩急はあるものの減少し続けていたが、第43週から2週続けて増加し、その後第45 週は減少したが、第46 週は再び増加した。過去10年間の当該週と比較して第16週から最高の値であり、第46 週までの累積定点当たり報告数の過去10年間の平均と比較して2.8 倍を示す大きな流行となっている。都道府県別では、鳥取県(1.4 )、山形県(0.7)、愛媛県(0.7)が多い。
 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第34週から増加傾向が認められており、第46 週も増加した。都道府県別では鳥取県(4.3)、山形県(3.3)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第39 週から緩やかな増加が始まり、第43 週からは明らかな増加傾向が認められており、第46 週も増加した。都道府県別では宮崎県(18.9)、福井県(18.7)、石川県(13.8)が多い。水痘の定点当たり報告数は第41 週から増加傾向が認められており、第46 週も増加した。過去10年間の当該週と比較して第43 週から最高の値となっている。都道府県別では新潟県(4.0)、山形県(3.3)が多い(「注目すべき感染症」参照)。RS ウイルス感染症の報告数は、21都道府県(0例の報告も含む)から合計36 例であった。

基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は大きく減少して0.24 で、都道府県別では静岡県(0.9 )、大阪府(0.9 )が多い。


〈10月コメント〉
◆性感染症について  2003年11月13日集計分 性感染症定点数:922

 2003 年10月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が4.05(男1.72、女2.33)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.92(男0.34 、女0.57 )、尖形コンジロームが0.61(男0.33、女0.28)、淋菌感染症が2.01(男1.61 、女0.41)で、4疾患のうち、男性では性器クラミジア感染症および淋菌感染症、女性では性器クラミジア感染症が多かった(図1)。前月に比べ、ほぼ横ばいである(グラフ総覧参照)。過去4年間の同時期と比較すると、男性では、尖形コンジロームが平均+1標準偏差(SD)、女性では、尖形コンジロームで平均+2SD、性器ヘルペスおよび淋菌感染症で平均+1SD を超えている(図2)

図1.各性感染症が総報告数に占める割合(10月)


 定点当たり報告数を年齢階級別・男女別に比較すると(図3:PDF参照)、いずれの疾患でもピークは20
〜29歳にあったが、性器ヘルペスウイルス感染症では50代以降の高年齢層からの報告も少なくない。淋菌感染症ではいずれの年齢層でも男性の占める割合が高いが、他の3疾患では若年齢層で女性の報告者数が多い傾向が認められた。
 感染症法が施行された1999 年4 月以降について、若年齢層(15〜29歳)での各性感染症の定
点当たり報告数を月別・男女別に図4(PDF参照)に示した。この数カ月、横ばいが続いている。性器クラミ
ジア、淋菌感染症に関しては、今年の夏は、ほぼ昨年以下の報告数にとどまった。


注:本発生動向調査で得られる性感染症患者報告数および解析結果は、現在の定点の構成に基づく制限のもとに解釈される必要がある。詳細はIDWR 週報2000年第46号(10月報)4ページの記載を参照されたい。

◆薬剤耐性菌について (11月13日集計分)

10月の基幹定点総数:

469.

定点当たり報告数:

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA )感染症 3.71
(前月:3.80 、前年同月:3.72 )
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP )感染症 1.04 (前月:0.81 、前年同月:1.12 )
薬剤耐性緑膿菌感染症 0.17 (前月:0.12 、前年同月:0.16 )

年齢階級別:

MRSA 感染症・・・

高齢者に多く、65 歳以上が全体の68%(70 歳以上が59%)を占めている。

 

PRSP 感染症・・・

5 歳未満の小児に多く、全体の63.4%を占めている。また65歳以上の高齢者にも多く、全体の17%を占めている。

薬剤耐性緑膿菌感染症・・・

高齢者に多く、65 歳以上が全体の74%(70 歳以上が62%)を占めている。

性 別:(女性を1として算出した男女比)

MRSA 感染症・・・・・・・・・・・・・1.8/1
PRSP 感染症・・・・・・・・・・・・・・1.3/1
薬剤耐性緑膿菌感染症・・・・・2.9/1

都道府県別:

MRSA 感染症・・・

定点当たり報告数は富山県(12.6)、山口県(11.0)が多く、累積では山口県(83.1)、富山県(81.8 )が多い。

PRSP 感染症・・・

定点当たり報告数は富山県(7.40)、千葉県(4.00)、高知県(3.38)が多く、累積では千葉県(66.67)、富山県(53.80)が多い。

薬剤耐性緑膿菌感染症・・・

定点当たり報告数は岩手県(1.65)、埼玉県(0.78)が多く、累積では岩手県(6.05)、広島県(4.85 )が多い。

◆結核サーベイランス月報 11月19日集計分
 10 月の新登録患者数は2,665 人(男性1,664 人、女性1001 人)で、このうち活動性肺結核患者
は2,139 (うち喀痰塗抹陽性者は1,013 人)であった。
 都道府県・政令指定都市別の新登録患者数は、東京都(286 人)、大阪府(大阪市を除く)(188 人)、大阪市(148 人)、愛知県(105 人)、埼玉県(さいたま市を除く)(104 人)が多い。また、別掲により集計されているマル初者数*は493 人、非定型抗酸菌陽性者数は297 人であった。


*マル初…結核の感染が強く疑われるが発病はしておらず、発病予防のための内服を行っている者。
 詳しいコメントは、結核研究所の結核発生動向調査結果報告(http://www.jata.or.jp/tbmr/tbmr. htm )をご覧ください。
 また、9月19日に、2002年の結核発生動向調査年報が出されました。詳しくは、結核研究所のホームページ(http://www.jata.or.jp )でご覧下さい。 


  注目すべき感染症

◆インフルエンザ

 インフルエンザの定点当たり報告数は第46 週は0.01 であり、まだ本格的な流行が始まっているわけではない。しかしながら、第46 週には21 都道府県から全国合計で57 例の報告があった。これまでにインフルエンザウイルスはA香港型(H3N2)が長崎県、大阪府、山形県、B型が沖縄県、愛知県で確認されている。

図. 過去10年間のインフルエンザシーズン毎のトレンドグラフ

 インフルエンザ様疾患に伴う学級閉鎖の報告では、第45週では岐阜県での学校閉鎖(11月4日初発)、第46週では北海道での学年閉鎖(10月17日初発)それぞれ1件ずつ報告があったが、今のところインフルエンザウイルスは確認されていない。
 「インフルエンザのQ &A 」「国内患者発生動向調査」「ウイルス分離状況」「抗体保有状況」などインフルエンザの総合的な情報については、以下のURL を参照されたい。
 ○http://idsc.nih.go.jp/others/topics/newpage2.html

◆インフルエンザ流行状況

 インフルエンザ流行情報は以下のURL に掲載されている。
  ○http://idsc.nih.go.jp/others/topics/inf-keiho/index.html
 第46 週は警報・注意報レベルを超えている保健所はない。

◆水 痘

 水痘帯状疱疹ウイルスによって起こる感染症で、潜伏期は2週間程度(10〜21日)である。発疹は全身性で掻痒を伴い、紅斑、丘疹を経て短時間で水疱となり、痂皮化する。数日にわたり新しい発疹が次々と出現するので、急性期には紅斑、丘疹、水疱、痂皮のそれぞれの段階の発疹が混在することが特徴である。臨床経過は一般的に軽症で、倦怠感、掻痒感、38 ℃前後の発熱が2〜3日間続く程度であることが大半である。しかし、成人ではより重症になり、合併症の頻度も高い。通常呼吸器症状や胃腸症状を伴うことはない。合併症の危険性は年齢により異なり、健康な小児ではあまりみられないが、15歳以上と1歳以下では高くなる。

 治療としては通常、石炭酸亜鉛華リニメント(カチリ)などの外用が行われる。抗ウイルス剤のアシクロビル(ACV)は、重症水痘、および水痘の重症化が容易に予測される免疫不全者などでは第一選択薬剤となる。健常者の水痘についても、ACV の経口投与は症状を軽症化させるのに有効であると考えられているが、全ての水痘患者に対して投与する必要はないと思われる。
 インフルエンザと同様に、水痘感染時にはアスピリンの内服によるライ症候群の危険性があるので、注意を要する。例年、冬季にかけて報告数は増加するが、本年第46 週では例年に比べて報告数が多くなっている。年齢別では1 〜4 歳での報告が多い。

図.水痘の年別週別発生状況

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