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第10週ダイジェスト
2004年第10週(3月1日〜3月7日)

・発生動向総覧
・注目すべき感染症

 をPDF版よりピックアップして掲載しています。

 発生動向総覧


全数報告の感染症
*「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正(11月5日施行)により、対象疾患、分類が一部変更されました(第43号「速報」参照)。


〈第10週コメント〉3月11日集計分

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が、集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。

1類感染症:

報告なし

2類感染症:

細菌性赤痢 8例(推定感染地域:国内2 例、インド3 例、インドネシア1 例、ネパール1例、エクアドル1例)

3類感染症:

腸管出血性大腸菌感染症 3例(いずれも有症者)
血清型・毒素型:O26 VT1 (2例)、O157 VT2 (1例)
年齢:10歳未満(3例)

4類感染症:

エキノコックス症 1例(多包条虫)
Q 熱 1例
マラリア 3例
  三日熱1例_推定感染地域:ソロモン諸島
  四日熱1 例_推定感染地域:ウガンダ
  熱帯熱1 例_推定感染地域:アフリカ.死亡
レジオネラ症 1例(69 歳)
A 型肝炎 3例(推定感染地域:いずれも国内)

5類感染症:

アメーバ赤痢 3例(推定感染地域:いずれも国内)
ウイルス性肝炎 2例(ともにB 型_推定感染経路:性的接触1 例、不明1 例)
クロイツフェルト・ヤコブ病 3 例(いずれも孤発例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症 1例(64 歳.死亡)

後天性免疫不全症候群 7例

(無症候4例、AIDS 2例、その他1例)
推定感染経路:性的接触6例(異性間3例、同性間3例)、不明1例
推定感染地域:国内5例、カナダ1例、不明1例

先天性風しん症候群 1例
梅毒 6 例(早期顕症I 期1 例、無症候5 例)
破傷風 1 例(64 歳)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症 1例(遺伝子型:VanC 、菌検出検体:血液)

(補)他にQ 熱1例の報告があったが、削除予定。また、第5週分の報告遅れとしてE 型肝炎1例(推定感染源: 鹿肉、猪肉)、第9週分の報告遅れとして劇症型溶血性レンサ球菌感染症(11歳、死亡)の報告があった。

定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。

当該週と過去5年間の平均(過去5年間の前週、当該週、後週の合計15週の平均)の比を対数にてグラフ上に表現した。1標準偏差を超えた場 合黄で、2標準偏差を超えた場合赤で色分けしている。

インフルエンザ定点報告疾患:インフルエンザの定点当たり報告数は第5週をピークに減少し始め、第10 週も減少した。都道府県別では大分県(18.6)、宮崎県(16.9)、福井県(14.4)が多い(「注目すべき感染症」参照)。

小児科定点報告疾患:咽頭結膜熱の定点当たり報告数は2003年第43週から増加傾向が認められたが、2004年第2週から減少し、第3週からは週により増減はあるが、ほぼ横ばいで推移している。過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多く、都道府県別では宮崎県(0.7)、石川県(0.6)、岐阜県(0.5 )、和歌山県(0.5)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第34週から増加傾向が認められた後、第51 週をピークに減少したが、第3週から再び増加傾向が認められ、第10 週も増加した。過去10年間で最高の値となっており、都道府県別では富山県(9.1)、新潟県(6.2)、山形県(6.0 )が多い(「注目すべき感染症」参照)。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第43 週から増加し続けた後、第51週をピークに減少傾向が認められていたが、第8週から再び増加し、第10 週も増加した。都道府県別では大分県(21.0)、佐賀県(17.8)、三重県(17.1)が多い。水痘の定点当たり報告数は第2週に過去10年間で最高の値となった後に減少し、第5週からは週により増減はあるが、ほぼ横ばいで推移している。過去5年間の同時期と比較してやや多く、都道府県別では宮崎県(3.9 )、福岡県(3.8)、鹿児島県(3.8)が多い。風しんの定点当たり報告数は微増し、都道府県別では群馬県(0.4)、鹿児島県(0.3)、大分県(0.2)が多い(「注目すべき感染症」参照)。RS ウイルス感染症の報告数は34 都道府県から合計102例であった。

基幹定点報告疾患: マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は微減して0.19で、4年間の同時期と比較してやや多く、都道府県別では岡山県(1.4)、山形県(0.8)が多い。

過去1年間の動き(グラフ)


 注目すべき感染症

◆風しん

図1. 風しんの都道府県別累積報告数

図2. 風しんの年齢階級別報告数の割合

 第9週の岡山県からの報告に引き続いて、第10週にも東京都から先天性風しん症候群(congenital rubella syndrome: CRS )が報告され、今年すでに2例となった。予防のためには、妊娠可能で免疫がない女性はワクチンを接種し、免疫を獲得しておく必要があるが、社会全体のレベルでも免疫獲得者の割合を十分多くし、風しんの流行を抑えることによって、妊婦が感染する可能性を減少させることも重要である。
 2003年9月まで風しん予防接種の経過措置のキャンペーンなども行われており、ここ数年、小児科定点から報告される全国の風しん患者数は、以前よりかなり少なく推移している。しかしながら、本年の定点当たり報告数を都道府県別にみると、大分県、群馬県、鹿児島県など依然として報告数の多い都道府県もあり、そこでは地域的な流行が認められている(図1)。また、患者の年齢群を比較してみると、本年は昨年に比べて、学童期や20 歳以上の割合が多くなっている(図2)。これらの報告は小児科定点からの報告であるので、成人の風しんがより多い可能性もあり、予断を許さない。
 風しんはワクチンで予防できる疾患であり、経過措置が終了した現在も、定期接種の対象者だけでなく、当時の経過措置の対象年齢層を中心に、免疫のない者への任意接種の普及啓発が大切である。また、小児科ばかりでなく、特に妊婦や妊娠年齢の女性の管理を行う産科や婦人科においても、地域での風疹の流行状況などに細心の注意を払って対策を講じる必要がある。

◆ A群溶血性レンサ球菌咽頭炎

 A群溶血性レンサ球菌による感染症は、菌の侵入部位や組織によって多彩な臨床症状を引き起こす。日常よくみられる疾患として、急性咽頭炎の他、膿痂疹、蜂巣織炎、あるいは特殊な病型として猩紅熱がある。これら以外にも中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎などを起こす。また、菌の直接の作用でなく、免疫学的機序を介してリウマチ熱や急性糸球体腎炎を起こすことが知られている。
 本疾患は、迅速診断キットの普及などから近年報告数が増加していたが、2004年第9週および10 週では、これまでの報告に比べて報告数が非常に多くなっている(図1)。都道府県別では富山県(9.1)、新潟県(6.2)、山形県(6.0)、鳥取県(5.3)、宮城県(5.3)、福井県(5.0)などが多い(図2、表1)。また年齢群別では、5歳を中心に4歳、6歳の年齢での報告が多い。

図1 .A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の年別・週別発生状況

図2 .5県および全国におけるA 群溶血性レンサ球菌咽頭炎の週別発生状況

表1 .5 県におけるA群溶血性レンサ球菌咽頭炎の状況

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