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第14週ダイジェスト
2004年第14週(3月29日〜4月4日)
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・発生動向総覧
・注目すべき感染症
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をPDF版よりピックアップして掲載しています。 |
発生動向総覧
◆全数報告の感染症
*「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正(11月5日施行)により、対象疾患、分類が一部変更されました(第43号「速報」参照)。
〈第14週コメント〉4月8日集計分
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が、集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
1類感染症:
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報告なし
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2類感染症:
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コレラ 1例(疑似症)
細菌性赤痢 10例(推定感染地域:国内1例、インド5例、インドネシア3例.疑似症1例)
腸チフス 1例(推定感染地域:国内)
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3類感染症:
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腸管出血性大腸菌感染症 3例(いずれも有症者)
血清型・毒素型:いずれもO157 VT2
年齢:10歳未満(2例)、30代(1例))
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4類感染症:
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つつが虫病 1例(鹿児島県)
レジオネラ症 1例(56歳)
A型肝炎 1例(推定感染地域:ペルー/ボリビア)
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5類感染症:
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アメーバ赤痢 6例(推定感染地域:国内3例、台湾1例、不明2例)
ウイルス性肝炎 2例
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B型1例(推定感染経路:性的接触)
C型1例(推定感染経路:針刺し事故
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クロイツフェルト・ヤコブ病 2例(いずれも孤発性)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症 1例(46歳)
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後天性免疫不全症候群 8例
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(無症候6例、AIDS 1例、その他1例)
推定感染経路:いずれも性的接触(異性間5例、同性間3例)
推定感染地域:国内5例、タイ2例、米国1例例
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ジアルジア症 4例〔推定感染地域:インド3例、台湾1例(上記のアメーバ赤痢の症例で重複感染)〕
梅毒 4例(早期顕症I期1例、早期顕症II期2例、無症候1例)
急性脳炎 2例〔EBウイルス1例(27歳).病原体不明1例(9歳)〕
(補)他にクロイツフェルト・ヤコブ病1例の報告があったが、削除予定。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
当該週と過去5年間の平均(過去5年間の前週、当該週、後週の合計15週の平均)の比を対数にてグラフ上に表現した。1標準偏差を超えた場 合黄で、2標準偏差を超えた場合赤で色分けしている。
インフルエンザ定点報告疾患:インフルエンザの定点当たり報告数は第5週をピークに減少し、 第14週も減少した。都道府県別では大分県(3.3)、青森県(2.3)、山口県(1.8)が多い。
小児科定点報告疾患:咽頭結膜熱の定点当たり報告数は前週と同値で、過去5年間の同時期 (前週、当該週、後週)と比較してかなり多く、都道府県別では宮崎県(1.3)、富山県(1.2)、福井県(0.9)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は、第8週から過去10年間 で最高の値を更新し続けた後、第11週をピークに減少した。第14週も著減したが、過去5年間 の同時期と比較してかなり多く、都道府県別では新潟県(4.3)、福井県(3.4)、鳥取県(3.4)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多く、 都道府県別では福井県(20.3)、富山県(13.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は第2週に過去 10年間で最高の値となった後減少し、第5週からはほぼ横ばいで推移している。過去5年間と比 較してやや多く、都道府県別では宮崎県(5.4)、沖縄県(3.6)が多い。伝染性紅斑の定点当たり 報告数は第9週から緩やかに増加しており、第14週も微増した。都道府県別では新潟県(1.2)、 山形県(1.1)が多い。風しんの定点当たり報告数は前週と同値で、過去5年間の同時期と比較 してかなり多く、都道府県別では群馬県(0.7)、大分県(0.5)、鹿児島県(0.3)が多い(「注目すべき感染症」参照)。RSウイルス感染症の報告数は30都道府県から合計56例であった。
基幹定点報告疾患: マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少して0.12で、都道府県別では山形県(0.8)、奈良県(0.7)が多い。
注目すべき感染症
◆ 風しんおよび先天性風しん症候群
<風しんの発生状況>
小児科定点医療機関から報告される全国の風しん患者数は、ここ数年かなり少なく推移して いる。しかしながら、本年の定点当たり報告数を都道府県別にみると、群馬県、大分県、鹿児島 県、宮城県、埼玉県など報告数の多い都道府県がある。これらの増加に伴って全国値も増加し ており、第13週の定点当たり報告数は、感染症法施行(1999年4月)以降の最高値となった。第 14週の全国約3,000の小児科定点医療機関からの報告数は183人(第13週194人)で、定点当た り報告数は0.06である。 患者の年齢群を過去5年間の報告と比較すると、本年は昨年までに比べて、10〜14歳および 20歳以上の割合が明らかに大きくなっている(図1)。
これらの報告は小児科定点からの報告であ るので、実際の成人の症例はより多い可能性がある。また、患者の性別の比較では、幼児、学 童では明確な差は見られないが、15歳以上(特に20歳以上)では男性の割合がかなり大きい(図2)。
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図1. 風しん患者の年齢分布(1999〜2004年第14週)
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図2. 風しん患者の年齢群別・性別報告数(2004年第1〜14週) |
この理由としては、予防接種法に基づく風しん予防接種の対象者が、1977年8月から1995 年3月までは女子中学生のみであったことや、1995年4月の予防接種法改正に伴う経過措置対象者〔1979年4月2日〜1987年10月1日生まれ(現在16〜25歳)の男女〕においても、男性の接種率 が低かったことの影響と考えられる。2002年度感染症流行予測調査による男性の接種率は、15 〜19歳67.2%(女性83.5%)、20〜24歳54.8%(73.8%)、25〜29歳50.0%(80.4%)、30〜34歳40.9% (87.7%)、35〜39歳57.6%(75.0%)で、明らかな性差が認められる。
<先天性風しん症候群の発生状況> ワクチン未接種で、罹患したこともなく風しんに対する免疫のない女性が、妊娠初期に風しんに罹患するとウイルスが胎児にも感染し、出生児に先天性風しん症候群(congenital rubella syndrome:CRS)を起こすことがある。先天性風しん症候群は、感音性難聴、白内障または緑内障、心疾患が3主徴で通常、妊娠16週までの感染で起こることがほとんどである。胎児罹患率 は妊娠初期ほど高く、妊娠8週を超えると妊婦が風しんに罹患したとしても胎児が発症する率は 低くなる(発症した場合も、難聴以外の症状は稀である)と考えられている。CRSは1999年4月の感染症法の施行により全数把握疾患となった。1999年には報告がなく、その後2003年までは各年1例の報告であったが、今年はこれまでに2例の報告があった。CRS症例の母親の風しんワクチン接種歴が得られた3例では、全て未接種であった。母親の罹患時期が 明らかなものが2例、不明のものが4例で、その4例では出産の7〜10カ月前に母親が風しんに感 染したと仮定し、この6例の母親の推定感染時期の居住地域における風しん流行状況を解析し た。その結果、定点当たり報告数は6例のうち4例で1以上であり、1例で0.1〜0.4であったが、残り1例では散発事例の報告のみで、定点当たり報告数は0.05に達していなかった。 CRSの予防のためには、小児科ばかりでなく、特に妊婦や妊娠年齢の女性の管理を行う産科や婦人科、内科においても、地域での風しんの流行状況などに細心の注意を払う必要がある。
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