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第24週ダイジェスト
(2004年6月7日〜13日)

発生動向総覧 (5月報含む)
・注目すべき感染症

 をPDF版よりピックアップして掲載しています。

 発生動向総覧

〈第24週コメント〉6月17日集計分

*「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正(11月5日施行)により、対象疾患、分類が一部変更されました(第43 号「速報」参照)。

全数報告の感染症

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計 を行いますので、当該週に診断された症例の報告が、集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。

1類感染症:

報告なし

2類感染症:

コレラ 2例(推定感染地域:ともにフィリピン)
細菌性赤痢 5例(推定感染地域:インド2例、タイ2例、中国1例)
パラチフス 1例(推定感染地域:インド)

3類感染症:

腸管出血性大腸菌感染症 78例(うち有症者47例)
報告の多い都道府県:長崎県(12例)、兵庫県(8例)、奈良県(8例)、愛知 県(7例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2 (22例)、O157 VT2 (16例)、O26 VT1 (16例)、 O157 VT1(1例)、O26 VT1・VT2(1例)、O1VT2(1例)、 O74 VT2(1例)、O111 VT1・VT2(1例)、その他(19例)
年齢:10歳未満(30例)、10代(14例)、20代(2例)、30代(5例)、40代(11 例)、50代(8例)、60代(7例)、70歳以上(1例))

4類感染症:

オウム病 1例(推定感染源:インコ)
Q熱 1例(推定感染源:ネコ)
つつが虫病 3例(福島県、新潟県、島根県)
日本紅斑熱 2例(千葉県、高知県)
マラリア 1例〔原虫種不明(推定感染地域:ソロモン諸島)〕
レジオネラ症 2例(59歳、64歳)
E型肝炎 1例(推定感染地域:中国)
A型肝炎 1例(推定感染地域:国内)

5類感染症:

アメーバ赤痢 11例(推定感染地域:国内8例、不明3例.推定感染経路:性的接触4例、不明7例)
ウイルス性肝炎 1例(B型_推定感染経路:性的接触)
クロイツフェルト・ヤコブ病 1例(孤発性)

後天性免疫不全症候群 14例

(無症候10例、AIDS 3例、その他1例)
推定感染経路:性的接触11例(異性間2例、同性間8例、異性間/同性 間1例)、不明3例
推定感染地域:国内10例、タイ1例、不明3例例

髄膜炎菌性髄膜炎 1例(66歳)
梅毒 9例(早期顕症I期2例、早期顕症II期4例、無症候3例)
破傷風 1例(69歳)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症 1例(遺伝子型:VanB _菌検出検体:尿)
(補)他に、ウイルス性肝炎1例の報告があったが、削除予定。また、報告遅れとして先天 性風疹症候群1例、急性脳炎2例〔ともに病原体不明(28歳、48歳)〕の報告があった。

定点把握の対象となる5類感染症

全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。


小児科定点報告疾患:咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第11週から増加傾向が認められ、第 24週も微増した。本年に入ってからも相変わらず、過去10年間の当該週と比較して最高値を示している。都道府県別では福井県(1.8)、富山県(1.7)、島根県(1.7)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第11週に過去10年間での最高値を示した後、減少した。その後、第16週から再び増加傾向が認められたが、第23、24週は減少した。しかし、第19週を除 き、第7週から継続して過去10年間の当該週と比較して最高値を示している。都道府県別では 山形県(4.6)、新潟県(4.2)、愛媛県(3.8)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第12週 から減少傾向が続いており、第24週も微減した。しかし、過去5年間の同時期(前週、当該週、 後週)と比較してやや多く、都道府県別では鳥取県(10.7)、福井県(9.8)、大分県(9.3)が多い。 手足口病の定点当たり報告数は第20週から緩やかに増加しており、都道府県別では沖縄県 (2.6)、兵庫県(1.9)、福岡県(1.6)が多い。風しんの定点当たり報告数は前週と同値で、過去5年間の同時期と比較してやや多く、都道府県別では栃木県(0.3)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第20週から増加傾向が認められ、第24週も増加した。都道府県別では愛媛 県(7.7)、福井県(6.1)が多い。RSウイルス感染症はゼロ報告を含めて30都道府県から報告がなされ、報告数は合計31例であった。

眼科定点報告疾患:流行性角結膜炎の定点当たり報告数は第3週からほぼ横ばいで推移してい るが、都道府県別では引き続き沖縄県(9.4)が非常に多い。

基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多く、都道府県別では宮城県(1.3)、山形県(1.2)、群馬県(1.2)が多い。


〈5月コメント〉
◆性感染症について  2004年6月24日集計分 性感染症定点数:924

 2004年5月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が3.44(男1.51、女1.93)、 性器ヘルペスウイルス感染症が0.84(男0.33、女0.51)、尖圭コンジローマが0.60(男0.33、女 0.27)、淋菌感染症が1.48(男1.24、女0.24)で、4疾患のうち、男性では性器クラミジア感染症お よび淋菌感染症、女性では性器クラミジア感染症が多かった(図1)。男性の淋菌感染症、女性 の性器ヘルペスウイルス感染症で上昇傾向がみられるが、その他は横ばいである。(グラフ総覧参照)。過去5年間の同時期と比較すると、性器ヘルペスウイルス感染症が男性 では平均+1標準偏差(SD)を下回り、尖圭コンジローマでは男女ともに平均+1SDを上回って いる(図2)

図1.各性感染症が総報告数に占める割合(5月)


 定点当たり報告数を年齢階級別・男女別に比較すると(図3:PDF参照)、いずれの疾患でもピークは20 〜29歳にあったが、性器ヘルペスウイルス感染症では50代以降の高年齢層からの報告も少なくない。淋菌感染症では男性の占める割合が高いが、他の3疾患では若年齢層で女性の報告 者数の方が多い。
 感染症法が施行された1999年4月以降について、女性における性器クラミジア感染症、淋菌感染症の定点当たり報告数を月別・年齢階級別に図4(PDF参照)に示した。淋菌感染症では昨年夏以来、 若年齢層での報告者数の減少が続いている。

注:本発生動向調査で得られる性感染症患者報告数および解析結果は、現在の定点の構成に基づく制限のもとに解釈される必要がある。詳細はIDWR 週報2000年第46号(10月報)4ページの記載を参照されたい。

◆薬剤耐性菌について (6月14日集計分)

5月の基幹定点総数:

472.

[定点当たり報告数]

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
3.36(前月:3.86、前年同月:3.74)
月別には年間を通してほぼ一定の報告数で、 年別には微増傾向が認められていたが、5月の定点当たり報告数は4月に続き減少し、過去2年間よりも少なかった。。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
1.32(前月:1.42、前年同月:1.48)
過去には、春から初夏にかけて(4〜6月)と冬 (11、12月)に多く推移していたが、2004年はほ ぼ一定の報告数で推移している。5月の定点当 たり報告数は微減し、過去2年間よりも少なか った。。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.09(前月:0.13、前年同月:0.16)
年間を通じてほぼ一定の報告数である。5月 の定点当たり報告数は減少し、過去4年間より 少なかった。

[年齢階級別]

MRSA感染症
高齢者に多く、65歳以上が全体の 71%(70歳以上が62%)を占めている(図1:PDF参照)。
PRSP感染症
小児に多く、10歳未満が全体の73% (5歳未満が66%)を占めている。また高齢者にも 多く、65歳以上が全体の17%(70歳以上が14%) を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症
高齢者に多く、65歳以上 が全体の65%(70歳以上が59%)を占めている(図3:PDF参照)。

[性別:女性を1 として算出した男/女比]

MRSA感染症…1.7/1
PRSP感染症…1.6/1
薬剤耐性緑膿菌感染症…2.2/1

[都道府県別]

MRSA感染症
定点当たり報告数は島根県(7.3)、栃木県(6.9)、奈良県(6.8)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は千葉県(12.1)、富山県(6.0)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
定点当たり報告数は大阪府(0.5)が多い。

◆結核サーベイランス月報 6月18日集計分

 5月の新登録患者数は2,252人(男性1,464人、女性788人)で、このうち活動性肺結核患者は 1,794人(うち喀痰塗抹陽性者は809人)であった。都道府県・政令指定都市別の新登録患者数 は、東京都(281人)、大阪府(大阪市を除く)(153人)、大阪市(136人)、埼玉県(さいたま市を 除く)(95人)、静岡県(83人)が多い。
また、別掲により集計されているマル初者数*は665人、非定型抗酸菌陽性者数は226人であ った。

*マル初…結核の感染が強く疑われるが発病はしておらず、発病予防のための内服を行っている者。
 詳しいコメントは、結核研究所の結核発生動向調査結果報告(http://www.jata.or.jp/tbmr/tbmr. htm )をご覧ください。


 注目すべき感染症

◆風しんおよび先天性風しん症候群

 風しんの発生動向は、感染症法に基づき、全国約3,000カ所の小児科定点医療機関(1999 年4月の感染症法施行以前は、全国約2,400カ所の小児科定点医療機関)から毎週報告される 患者数により把握されている。ここ数年の報告数は、それ以前と比べてかなり少なく推移して いる(図1)。第23、24週の定点当たり報告数はともに0.05人で、現在までの最高の0.08人(第16、 20週)と比較して少なくなっているが、第24週までの累積報告数は3,258人(定点当たり報告数 1.07人)で、2000年以降の各1年間の累積報告数を既に上回っている(表1)

図1.風しんの過去10年間の週別発生状況(2004年第24週) 表2.先天性風しん症候群の報告

 第24週までの累積定点当たり報告数を都道府県別にみると、群馬県、大分県、栃木県、鹿 児島県が特に多く、次いで沖縄県、福岡県、埼玉県などが多い。第24週に限ると栃木県(0.3)、 山梨県(0.2)、福岡県(0.2)が多い。

 先天性風しん症候群(CRS)は、妊婦が妊娠前半期に感染したことによって出生児に起こることがある疾患で、感音性難聴、白内障または緑内障、心疾患を3主徴とする。感染しても必ずし もCRSが起こるわけではなく、母親が顕性感染した場合の妊娠月別の発生頻度は、妊娠1カ月 50%以上、2カ月35%、3カ月18%、4カ月8%程度である。

 CRSは1999年4月の感染症法の施行により全数把握疾患となり、1999年には報告がなく、 2000〜2003年は各1例であった。本年は第24週に新たに報告があり、既に4例となった(表2)。 CRSを防ぐため、風しんの罹患歴や予防接種歴がない妊娠可能年齢の女性は、妊娠する以 前に予防接種を受けておくことが必要である。予防接種は、風しんとCRSを予防するための最 大の手段と言える。しかし、これまでに報告された8例の母親の予防接種歴をみると、「なし」3 名、「不明」4名で、「あり」が1名あった。このように、稀には罹患歴や予防接種歴があっても十 分な免疫が獲得されていないこともあるので、場合により妊娠前に抗体検査を行うことも必要と 考える。

 また、妊婦の風しん罹患を防ぐためには、社会全体で風しんそのものを抑制しなければな らない。そのためには、定期接種の対象者だけでなく、2003年9月まで行われた経過措置の対 象年令層(1979年4月2日〜1987年10月1日生まれの者)を中心に、小児から成人まで、男女とも に免疫のない人々は任意接種を受けることが強く望まれる。

 さらに、小児科ばかりでなく、特に妊婦や妊娠年齢の女性の管理を行う産科や婦人科、また 発症時に診療する内科、皮膚科などにおいては、地域での風しんの流行状況などに細心の注 意を払う必要がある。

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