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第25号ダイジェスト
2004年第25週(6月14日〜6月20日)

・発生動向総覧
・注目すべき感染症

 をPDF版よりピックアップして掲載しています。

???S 発生動向総覧


全数報告の感染症
*「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正(11月5日施行)により、対象疾患、分類が一部変更されました(第43号「速報」参照)。


〈第25週コメント〉6月24日集計分

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が、集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。

1類感染症:

報告なし

2類感染症:

コレラ 3例(推定感染地域:インド1例、インド/中国1例、フィリピン1例)
細菌性赤痢 12例(推定感染地域:中国7例、インドネシア3例、ベトナム1例. 疑似症1例)
パラチフス 1例(推定感染地域:インド/タイ)

3類感染症:

腸管出血性大腸菌感染症 73例(うち有症者47例) 報告の多い都道府県:東京都(9例)、埼玉県(6例)、大阪府(6例)、奈良県 (6例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(34例)、O26 VT1(13例)、O157 VT2 (12例)、その他(14例)
年齢:10歳未満(26例)、10代(9例)、20代(6例)、30代(7例)、40代(6例)、 50代(11例)、60代(4例)、70歳以上(4例))

4類感染症:

Q熱 1例(推定感染源:不明)
つつが虫病 3例〔青森県(1)、秋田県(2)〕
日本紅斑熱 1例(鹿児島県)
レジオネラ症 3例(55歳*、73歳、82歳)*死亡
E型肝炎 1例(推定感染地域:国内)
A型肝炎 1例(推定感染地域:国内)

5類感染症:

アメーバ赤痢 11例(推定感染地域:国内5例、シンガポール1例、台湾1例、 不明4例.推定感染経路:経口感染2例、性的接触4例、 不明5例)
ウイルス性肝炎 5例(いずれもB型_推定感染経路:性的接触3例、不明2 例)
クロイツフェルト・ヤコブ病 2例(ともに孤発性)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症 1例(70歳)

後天性免疫不全症候群 10例

(いずれも無症候)
推定感染経路:いずれも性的接触(異性間2例、同性間8例)
推定感染地域:国内9例、不明1例

ジアルジア症 1例(推定感染地域:国内)
梅毒 1 例(無症候)
破傷風 2例(66歳、73歳)
急性脳炎 1例(病原体不明.0歳)
(補)他に、梅毒1例の報告があったが削除予定。また、報告遅れとして先天性風しん症 候群1例、梅毒(先天梅毒)1例、急性脳炎1例(病原体不明. 3歳)の報告があった。

定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。

過去5年間との比 CPEGグラフ

当該週と過去5年間の平均(過去5年間の前週、当該週、後週の合計15週の平均)の比を対数にてグラフ上に表現した。1標準偏差を超えた場 合黄で、2標準偏差を超えた場合赤で色分けしている。

小児科定点報告疾患:咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第11週から増加傾向が認められているが、第25週は大きく増加して、過去10年間の全ての週と比較して最高値となっている。都道府県別では富山県(2.1)、宮崎県(1.8)、島根県(1.7)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定 点当たり報告数は第11週に過去10年間で最高値を示した後、減少した。その後、第16週から再び増加傾向が認められたが、第23週から減少している。しかし、第19週を除き、第7週から継 続して過去10年間の当該週と比較して最高値を示している。都道府県別では、愛媛県(4.0)、山形県(3.8)、新潟県(3.7)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第12週から減少傾向が 続いており、第25週も微減した。しかし、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較して やや多く、都道府県別では福井県(9.1)、鳥取県(9.0)が多い。手足口病の定点当たり報告数は 第20週から緩やかに増加しており、都道府県別では兵庫県(2.6)、沖縄県(2.4)が多い。風しん の定点当たり報告数は減少したが、都道府県別では群馬県(0.2)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第20週から増加が続いており、都道府県別では三重県(6.7)、福井県(6.5)、 愛媛県(6.1)が多い。麻しんの定点当たり報告数は微減したが、都道府県別では徳島県(0.2) が多い。RSウイルス感染症はゼロ報告を含めて28都道府県から報告がなされ、報告数は合計17例であった。

眼科定点報告疾患:流行性角結膜炎の定点当たり報告数は第3週からほぼ横ばいで推移しているが、都道府県別では引き続き沖縄県(10.4)が非常に多い。

基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は第20週から増加傾向が認められており、第22週からは過去5年間の当該週と比較して最高値を示している。都道府県別では 福島県(1.6)、茨城県(1.4)が多い。

過去1年間の動き(グラフ)


???S 注目すべき感染症

◆ 先天性風しん症候群

 先天性風しん症候群(CRS)は、妊婦が妊娠前半期に感染することによって出生児に起きる疾 患で、感音性難聴、白内障または緑内障、 心疾患を3主徴とする。感染しても必ずし もCRSが起こるわけではなく、母親が顕性 感染した場合の妊娠月別の発生頻度は、 妊娠1カ月50%以上、2カ月35%、3カ月 18%、4カ月8%程度である。 CRSは1999年4月の感染症法の施行に より全数把握疾患となったが、1999年には 報告がなく、2000〜2003年には各1例であ った。しかし、本年では第25週に新たに報 告があり、合計5例となった(表)。

表.先天性風しん症候群の報告

 CRSを防ぐため、風しんの罹患歴や予防接種歴がない妊娠可能年齢の女性は、妊娠する以 前に予防接種を受けておくことが重要である。予防接種は、風しんとCRSを予防するための最 大の手段と言える。しかし、これまでに報告された9例の母親の予防接種歴をみると、「なし」が 4名、「不明」が4名で、「あり」が1名みられた。このように、稀には罹患歴や予防接種歴がある場 合でも十分な免疫が獲得されていないこともあるので、場合により、妊娠前に抗体検査を行うことも必要と考える。
 本年第25週までに、全国約3,000カ所の小児科定点医療機関から報告された風しん患者を年 齢群別にみると、20歳以上は約13%を占め、その男/女比は1.3/1である。また、2001年度の感 染症流行予測調査事業の結果の解析によると、全国の20〜39歳における風しんの感受性者(風 しんに対する免疫を持っていない者)は女性で70万人、男性では450万人と推計される。これ までにCRSとして報告された9例の母親の妊娠期間中の風しん罹患については、「あり」が6例、「不明」が1例で、「なし」が2例であった。風しんでは、感染しても症状を示さない場合(不顕性 感染)が30〜40%程度あると言われている。
 これらのことからも、妊婦の風しん罹患を防いでCRSの発生を防ぐためには、社会全体で風 しんの流行そのものを確実に抑制しなければならない。そのためには、定期接種の対象者だけでなく、小児から成人まで、男女ともに免疫のない人々は任意接種を受けることが強く望まれる。
 さらに、小児科ばかりでなく、特に妊婦や妊娠年齢の女性の管理を行う産科や婦人科、また発症時に診療する内科、皮膚科などにおいては、地域での風しんの流行状況などに細心の注 意を払う必要がある。
 厚生労働省では、先天性風しん症候群および風しん対策を早急に促進するため、6月23日、 緊急に「風疹流行にともなう母児感染の予防対策構築に関する研究」班を立ち上げた。


◆ 咽頭結膜熱

 咽頭結膜熱の発生動向は、感染症法に基づき、全国約3,000カ所の小児科定点医療機関 (1999年4月の感染症法施行以前は、全国約2,400カ所の小児科定点医療機関)から毎週報告 される患者数により把握されている。本年の定点当たり報告数は、過去10年間の中でも最も多 かった昨年と比較しても、さらに多い状態で推移している。第25週では、過去10年間の全ての 週と比較して最高値となった()。
図.咽頭結膜熱の過去10年間の週別発生状況(2004年第25週)

第25週に報告の多かった都道府県は、富山県(2.1)、宮崎 県(1.8)、島根県(1.7)、石川県(1.6)で、本年の累積定点当たり報告数が多いのは、宮崎県 (28.4)、富山県(20.6)、福井県(19.0)である。
 本疾患はアデノウイルスによる感染症で、発熱、咽頭炎、眼症状を主とする。プールでの感染 もみられることからプール熱とも呼ばれる。夏季に流行する疾患であるが、2000年以降には、それ以前にはなかった冬季の増加傾向が見られ、昨年から本年にかけて、その傾向が顕著で あった。好発年齢は従来から学童年齢が主とされるが、感染症発生動向調査による本年25週 までの累積報告患者を年齢群別にみると、1〜5歳の各年齢がそれぞれ13〜16%で、5歳以下 が全体の約80%を占めている。
 感染経路は通常飛沫感染であるが、プールでは結膜からの感染や経口的な感染も考えられている。症状としては、5〜7日の潜伏期の後に、発熱、頭痛、食欲不振、全身倦怠感、咽頭痛、 結膜充血、眼痛、羞明、流涙、眼脂などの症状があり、それらが3〜5日間程度持続する。基本 的には予後の良い良性の疾患であり、脱水を防ぐなどの保存的な治療が中心となる。
 過去10年間、報告のピークは第28〜32週であったので、本年も今後さらに増加すると考えられ、注意が必要である。前述のようにプールを介しての流行もあることから、プールの水の適切 な消毒が大切である。症状がある時にはプールに入らないことはもちろんであるが、症状が消 失したあとも長期間糞便中にアデノウイルスが検出されることもある。プールに入る前にはシャ ワーなどでおしりをよく洗い、また、出たあとには目をよく洗うことを忘れないよう、日常から心 がけることが必要である。
 なお、6月15日、厚生労働省では、咽頭結膜熱(プール熱)の増加について、ホームページや自治体などを通じて注意を喚起した。また、文部科学省とも連携し、特に児童、生徒に対し注 意喚起をお願いするとともに、プール管理者などについても注意を呼びかけた。

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