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第31号ダイジェスト

2004年第31週(7月26日〜8月1日)

・発生動向総覧
・注目すべき感染症(腸管出血性大腸菌感染症、コレラ)

 をPDF版よりピックアップして掲載しています。

???S 発生動向総覧


全数報告の感染症


*「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正(11月5日施行)により、対象疾患、分類が一部変更されました(第43号「速報」参照)。


〈第31週コメント〉8月5日集計分

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が、集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。

1類感染症:

報告なし

2類感染症:

コレラ 2例(推定感染地域:インド1例、フィリピン1例)
細菌性赤痢 9例(推定感染地域:国内1例、インドネシア3例、インド2例、メ キシコ1例、ベトナム1例、不明1例)
腸チフス 1例(推定感染地域:インド/ネパール) パラチフス1例(推定感染地域:インドネシア)

3類感染症:

腸管出血性大腸菌感染症 198例(うち有症者132例) 報告の多い都道府県:長崎県(26例)、東京都(15例)、兵庫県(14例)、香 川県(14例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(78例)、O157 VT2(58例)、O26 VT1 (28例)、O157 VT1(6例)、O111 VT1(4例)、O26 VT1・ VT2(2例)、O145 VT1(2例)、O111 VT2(1例)、O128 VT1(1例)、その他(18例)
年齢:10歳未満(102例)、10代(17例)、20代(19例)、30代(15例)、40代(8 例)、50代(13例)、60代(10例)、70歳以上(14例))

4類感染症:

オウム病 1例(推定感染源:インコ)
つつが虫病 1例(青森県)
日本紅斑熱 2例(福井県、徳島県)
ライム病 1例(推定感染地域:国内)
レジオネラ症 1例(43歳)
レプトスピラ症 1例(推定感染地域:インドネシア)

5類感染症:

アメーバ赤痢 12例(推定感染地域:国内8例、東南アジア2例、不明2例.
推定感染経路:経口感染4例、性的接触4例、不明4例)
ウイルス性肝炎 3例(いずれもB型_推定感染経路:性的接触2例、不明1例)
クロイツフェルト・ヤコブ病 5例(いずれも孤発性)

後天性免疫不全症候群 13例

(無症候9例、AIDS 3例、その他1例)
推定感染経路:性的接触11例(異性間4例、同性間5例、異性間・同性 間2例)、不明2例
推定感染地域:国内10例、不明3例例

ジアルジア症 3例(推定感染地域:国内1例、インド1例、フィリピン1例)
梅毒 6例(早期顕症I期1例、早期顕症II期2例、晩期顕症2例、無症候1例)
破傷風 1例(59歳)
(補)他に、報告遅れとしてE型肝炎1例(推定感染地域:アフガニスタン)の報告があっ た。

定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)


全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。

過去5年間との比 CPEGグラフ

小児科定点報告疾患:咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第11週から増加傾向が認められ、第25週には過去10年間の全ての週と比較して最高値となった。その後も第29週まで最高値を更新し続けたが、第30週からは減少している。しかし、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多く、都道府県別では福井県(2.7)、北海道(2.1)、長野県(2.1)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第23週から減少し続けているが、過去5年間の同時期と比較してやや多く、都道府県別では大分県(1.7)、鳥取県(1.5)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第12週から減少傾向が続いているが、第31週は微増した。過去5年間の同時期と比較してやや多く、都道府県別では大分県(6.3)、福井県(5.9)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第20週から第29週まで緩やかに増加し続けた後、第30週は微減したが、第31週は再び微増した。都道府県別では大分県(5.2)、北海道(3.2)、長野県(3.1)が多い。風しん の定点当たり報告数は微減し、都道府県別では16都府県から報告があったが、いずれも0.1以下であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は、第26週を除き、第20週から第29週まで増 加し続けたが、第30週からは減少している。都道府県別では山形県(6.4)、富山県(5.8)が多い。 麻しんの定点当たり報告数は前週と同値で、第1週から継続して、過去10年間の当該週と比較して最低値を示している。14都道府県から報告があったが、いずれも0.1以下であった。RSウ イルス感染症はゼロ報告を含めて27都道府県から報告がなされ、報告数は合計31例であった。

基幹定点報告疾患:無菌性髄膜炎の定点当たり報告数は第20週から緩やかな増加傾向が認 められ、第31週も増加した。都道府県別では滋賀県(0.9)、鳥取県(0.8)が多い。マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は第20週から増加傾向が認められた後、第25週をピークに減少傾 向が認められており、第31週も微減した。しかし、第22週からは過去5年間の当該週と比較して最高値を示している。都道府県別では岡山県(1.6)、青森県(1.0)、佐賀県(1.0)が多い。

過去1年間の動き(グラフ)



???S 注目すべき感染症

◆ 腸管出血性大腸菌感染症

図1. 腸管出血性大腸菌感染症(無症状病原体保有者含む)の年別週別発生状況 図2. 腸管出血性大腸菌感染症(無症状病原 体保有者含む)の都道府県別発生状況 (2004年第1〜31週の累積) 図3. 腸管出血性大腸菌感染症(無症状病原 体保有者含む)の都道府県別発生状況 (2004年第31週のみ)

 腸管出血性大腸菌感染症は感染症法に基づく3類感染症として、患者または無症状病原体 保有者について、診断した医師は届け出が義務づけられている。無症状病原体保有者は、食品産業従事者の定期的検便によって偶然発見される場合もあるが、探知された患者と食事を 共にした者や接触者の調査などによって発見される場合が多い。
 2004年第31週の現段階での報告数は198例で、1週間の報告数としては第29週(213例)に次 いで多かった(図1)。また、第31週までの累積報告数は1,668例で、過去3年間の同週までの累積報告数(2001年2,406例、2002年1,752例、2003年1,194例)と比較すると、2003年よりは多い。 第31週までの累積報告数を都道府県別にみると、石川県(150例)、東京都(133例)、大阪府 (122例)、岡山県(107例)が多い(図2)。第31週に限ると、長崎県(26例)、東京都(15例)、兵庫県(14例)、香川県(14例)が多く(図3)、報告の多くは家庭内感染を含む散発事例であるが、 香川県などでは保育所における集団発生が報告されている。
 第31週までの累積報告数を血清型・毒素型別にみると、O157 VT1・VT2 554例(33%)、 O157 VT2 388例(23%)、O26 VT1 300例(18%)の順に多い。また、年齢群別(0〜69歳までは10歳毎、および70歳以上)にみると、10歳未満646例、10代304例、20代233例、30代129例、40 代91例、50代111例、60代71例、70歳以上83例となっている。
 溶血性尿毒症症候群(HUS)は第31週に2例報告があり、2004年の累積で25例となった。そ れらの原因菌の血清型・毒素型別では、O157 VT2(12例)、O157 VT1・VT2(9例)、O26 VT1・VT2(2例)、その他2例であった。また、年齢群別では10歳以下が19例(うち、5歳以下は16例)、60代1例、70歳以上5例であった。性別では男性7例、女性18例と女性に多かった。また、死亡例は第31週までに1例(70代、女性)報告されている。死亡例やHUSの合併について は、届け出時点以降での発生が十分反映されていない可能性があり、このような発生があった 場合には「入力時のお願い」として、修正報告することをお願いしている。
 例年報告のピークは夏季にあるので、一層の注意が必要である。また、本年においても、保 育所などに関連した集団発生の報告が散見されている。保育所などでの人から人への感染を 防ぐために、タオルの共用を避けることや、普段からの手洗い(特にオムツ交換時)、園児への 排便後・食事前の手洗い指導を徹底することが重要である。さらに、夏季には簡易プールなど の衛生管理にも注意を払う必要がある。

◆ コレラ

 コレラは、1〜5日(通常1日以内)の潜伏期の後に、下痢や嘔吐で急激に発症する腸管感染症 である。殆どの場合、腹痛や発熱はみられない。典型的症状は激しい水様性下痢(重症では “米のとぎ汁様”)と脱水であるが、近年の報告症例では軽症であることが多い。しかし、胃腸 の弱い人(胃切除者など胃酸の働きが低下している人)や高齢者、乳幼児では重症化して死亡 することもあり、油断できない疾患である。
図1. コレラの発症月別年別比較(1999年4月?2004年第31週) 図2. コレラの発症月別推定感染地域(2004年第1〜31週)

 WHOの報告基準では、コレラ毒素産生性のO1血清型コレラ菌およびO139血清型コレラ菌 によるものと定義されており、日本でも同じ定義を用いている。現在は、感染症法に基づく2類感染症として、疑似症患者、無症状病原体保有者を含む症例の報告が診断した医師に義務づけられている。また、検疫法に基づく感染症でもある。
 2004年のコレラの報告数は、第31週(8月5日集計)までに39例(年間の累積報告数は、2000年58例、2001年50例、2002年51例、2003年25例)であった。感染症法施行(1999年4月)以降の 報告数を発症月別にみると、1999〜2003年では7〜9月にピークがあり、その報告数は8〜13人 であった。しかし本年は、発症日が不明の1例を除く38例において、6月に発症者が20例と非常 に多く報告された。また、7月の発症者として8例が報告されている(図1)
 本年報告された39例の推定感染地域は、1例を除き海外であるが、6月に発症した20例のうち16例、また7月に発症した8例のうち6例ではフィリピンであった(図2)。なお、推定感染日が不 明の1症例は7月中旬に医療機関を初診して診断されており、推定感染地域はフィリピンである。 これらフィリピンで感染したと推定される23例は全員男性で、年齢は29〜71歳であり、便から分離された菌の血清型および生物型はいずれもO1エルトール小川型である。しかし、訪れた地 域や喫食した食品などでの疫学的な関連性は認められていない。フィリピン以外の推定感染地 域は、インド7例、タイ7例、中国1例、インド/中国1例、日本国内1例であった。
 例年報告のピークは7〜9月にあり(図1)、今後の増加が危惧される。コレラ流行地域へ渡航する場合には、生水、氷、生の魚貝類、生野菜、カットフルーツなどを避けることが肝要である。 また、無理な旅行日程などによって体調をくずし、抵抗力を落とさないよう心がけることも大切 である。

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