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読者からの質問集 -FAQのページ-
* 2000年掲載分のFAQはこちらです。 ![]() [2001年第50週(9月10日〜16日):通巻第3巻第50号] オホーツク3 次医療圏は、北海道の北部のオホーツク海に面する地域で、圏域内には北見、紋別、網走の3保健所を有する。面積は約1万km2で、愛媛県の約2倍の広さである。人口は約34万人で、3市20町3村で構成されている。
![]() 感染性胃腸炎のなかでノーウォーク様ウィルス(NLV)の感染源は、主にカキと理解をしているのですが、2001 年第43週病原体情報(5ページ)に、保育園での集団発生からNLV が5件検出されたと書かれています。子どもが給食で生カキを食べるとは考えにくいので、どういう原因で発生したのか教えてください。 (広島県保健婦 Mさん) [2001年第46週(11月12日〜18日):通巻第3巻第46号] 本事例については、本号6ページに速報記事として掲載されています。
![]() 我々の職場には毎日たくさんの外国郵便が到着するので、郵便物を扱う人々がそれらに炭疽菌が付着している可能性を心配しています。もし不審な郵便物がきたら開けないように、粉が出てきたらその場を立ち去れとか、手を洗えなどという一般的な注意は聞くのですが、感染経路のはっきりしないケースが出て来ていることから、普段の郵便物の仕分け等で本人の自覚無しに感染する可能性があるかと思います。 国立感染症研究所でこれら諸問題の対処に関してなんらかの情報を持っていらっしゃったら教えてもらえませんでしょうか。特に聞きたいことでは、粉が発見された場合に感染の可能性が強く疑われる人への予防的な(発症前の)抗生物質の投与が効果的であるか否か、また効果のある抗生物質はどこの病院にもあるものであるか、ないのであれば施設として確保しておく必要があるか、などです。(事業所・医師) [2001年第44週(10月29日〜11月4日):通巻第3巻第44号] 疑い例を含めて7例の炭疽症患者を経験したニューヨーク市では炭疽症に対する緊急対応情報を治療も含めてウェブ上で提供しています (http://www.ci.nyc.ny.us/html/doh/html/cd/anthrax.html)。ニューヨーク在住の医師岩田健太郎さんによるその日本語訳がhttp://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/01/ny01.htm に掲載されています。また、米国疾病対策センター(the Centers for Disease Prevention and Control)ではInformation About Anthrax and Bioterrorism (http://www.cdc.gov/mmwr/indexbt.html)を公開し、具体的な治療法や現在までに検出された菌の耐性情報についても紹介しています。抗菌薬療法の第1選択はシプロフロキサシンまたはドキシサイクリンとされ、現在のところ検出された炭疽菌はこれらの薬剤に感性です。菌の暴露を受けた可能性がある症例に対しては、上記の抗菌薬のすみやかな予防投与が推奨されています。(日本でもシプロフロキサシンなどのニューキノロン薬は一般的な医療機関に置いてある標準的な抗菌薬です。)
![]() [2001年第41週(10月8日〜14日):通巻第3巻第40号] 厚生労働省、国立感染症研究所感染症情報センターは「感染症発生動向調査事業年報平成11年4月〜平成12年12月(CD-ROM 版データ集)」を発行し、関係者に御利用頂いております。しかしながら最近、全数疾患の報告データの一部が反映されてないことが解りました。また、これには当初からのシステムに問題があることも解りました。反映されていない報告は合計200件ほどです。当センターとしては、今後はこの問題が解決される様、必要な予算措置に努力するとともに、次回の発行の時には、修正したデータを再度入れて配付する様にしたいと思います。関係各位の御理解をお願いします。 (国立感染症研究所感染症情報センター)↑トップへ戻る ![]() 感染症の確定診断には病原体の分離が重要です。検体の採取に際しては、今までも患者さんの了解を得て行って来た処です。近年、病原体の遺伝子解析が公衆衛生上非常に重要になり、これに基づいて病原性大腸菌O157 やMRSA の感染源や感染経路を明らかにし、行政対応するようになりつつあります。 平成12年4月「遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針」が出されました。前文などからこの指針はヒト固有の遺伝子解析を対象としていると読みとれます。しかし、用語の定義を見ますと、この指針が対象とする「試料等」とは、「研究に用いる血液、組織、細胞、体液および排泄物やこれらから抽出したDNA などヒトの体の一部をいう」となっています。病原体をヒトの体の一部と見る事も可能であり、病原体を分離するために採取した便、尿、脊髄液、血液などは、文章上はズバリそのものです。 病原体の遺伝子解析がこの指針の対象となるのかどうか、判断を迷っている状況がありますので、この点について厚生労働省としての明確な判断の提示をお願いしたいと思います。(地方衛生研究所研究員) [2001年第40週(10月1日〜7日):通巻第3巻第40号] 本年3月に策定された「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」は、指針の2[本指針の適用範囲]及び14
(3)[用語の定義]に記載のとおり、次のような研究を対象とします。
したがって、お尋ねのように人の血液等の試料に含まれる病原体を対象とする研究は、この指針の適用を受けることはありません。
![]() 生物兵器によるテロ、すなわちバイオテロリズムに無関心ではいられない状況です。それに関する情報を得ようと思っていますが、ウエッブページではどんなところがあるでしょうか?(東京都 S. N. さん) [2001年第39週(9月24日〜30日):通巻第3巻第39号]
世界保健機関WHOがバイオテロリズム対策のガイドラインを発表しました。以下は Eurosurveillance Issue 39,
27 September, 2001の記事の抄訳です。 ○厚生労働省検疫所 中近東であったこんな話!?
炭疽 (国立感染症研究所感染症情報センター) ******************************** ![]() 先日、後天性免疫不全症候群の報告で、患者、感染者どちらにも属さない「その他」の報告がありました。感染症発生動向調査では、「その他」として入力・報告しました。当県でも3 カ月毎に、エイズ患者、感染者の数を発表していますが、「その他」をどこに入れるか、また感染者、患者ではないので、報告しないのか迷っています。エイズ動向委員会では、患者と感染者の数を発表していると思うのですが、「その他」はどのように扱えばよろしいのでしょうか。(某県感染症発生動向担当者) [2001年第36週(9月3日〜9日):通巻第3巻第36号] 感染症発生動向調査では、後天性免疫不全症候群の報告の際、調査項目中に「無症候性キャリア」、「AIDS」、「その他」の3区分が存在します。報告にあたっては、抗体確認検査、あるいは抗原検査で陽性であることが前提で、3区分の全てが広義のHIV
感染者に含まれるものですが、AIDS と診断した指標疾患があれば「AIDS 」、無症状であれば「無症候性キャリア」、症状はあってもAIDS
と診断した指標疾患がなければ「その他」の分類となります。
![]() 1999 年4 月から施行の感染症法での届け出について質問します。赤痢アメーバによる病気でも赤痢症状はなく、アメーバ性肝膿瘍だけの症例もかなりありますが、この場合には4 類感染症として届け出る必要があるでしょうか?同法では病名として「アメーバ赤痢」となっているので、アメーバ性肝膿瘍だけの場合には届け出る必要がないようにも受け取れますが…。(石川県研究者I 氏) [2001年第35週(8月22日〜9月2日):通巻第3巻第35号] 当時の厚生省保健医療局結核感染症課長通知「感染症新法に基づく医師から都道府県知事等への届出のための基準について」において、アメーバ赤痢に腸管アメーバ症と腸管外アメーバ症を含めており、赤痢アメーバの検出についても便からのみならず、膿瘍液からの検出も含めています。このようなことから、アメーバ性肝膿瘍だけの場合でも届け出る必要があります。また、赤痢アメーバの直接的検出でなくても、血清抗体の上昇でも代用は可能です。
![]() 私は病院の勤務薬剤師です。当院ではC 型肝炎ウイルス(HCV )キャリアの患者さんが療養型病床群に多く入院しています。現在、食器の取り扱いについて問題となっています。HCV は血液感染ですから、HCV キャリア患者の食器を下膳する際に70%イソプロパノールを噴霧すれば、他の患者と同じ配膳車で下膳しても良いと思いますが、管理栄養士からは、もしも口内に傷があれば、箸やスプーンに血液が付着するかもしれないので、別に下膳するように指示が出ております。下膳は他の患者さんの食器と別にする必要があるのでしょうか。また、栄養課で食器を洗浄する際にどのような加熱処理、消毒が必要となるのでしょうか。(薬剤師Y さん) [2001年第33週(8月13日〜19日):通巻第3巻第33号] ご質問に直接お答えする前に、HCV の感染について簡単に触れさせていただきます。 通常HCV は、感染している方からの血液によって感染します。HCV が発見される前は、輸血による感染が多かったのですが、現在は輸血用製剤のウイルスが検査でチェックされているため、輸血による感染はほとんど起こっていません。輸血でなくても、感染者の血液が別の人の傷口にふれた場合には感染が起こり得ます。さらに、医療事故(針事故など)によって患者血液が体内に注入された場合にも感染が起こります。その他、薬物使用などの際に針を共有した場合にも感染することが知られていますし、非常にまれですが、性行為や母子感染によっても感染する可能性があります。 しかし、通常は経口感染は起こらないとされていますし、食器やコップを共有することでも感染しないと言われています。 参考までに、厚生科学特別研究事業「透析医療における感染症の実態把握と予防対策に関する研究班」平成11 年度報告書「透析医療における標準的な透析操作と院内感染予防に関するマニュアル」には以下のように記載されています。 日常生活上の注意(B 、C 型肝炎ウイルス共通) (1)傷、皮膚炎、鼻出血はできるだけ自分で手当し、他人に血液がつかないように注意する。血液の付着したものは密閉して廃棄し、廃棄できないものは十分に水洗する。 (2)月経時、鼻出血等の処置後は、手指を十分に流水で洗う。 (3)かみそり、歯ブラシ、タオルは専用とする。 (4)排尿、排便後は流水でよく手を洗う。 (5)食器の洗浄、衣服の洗濯、入浴は通常通りで問題ない。 ここに書かれているとおり、食器の取り扱いは他の患者さんのものと同様に取り扱ってかまわないでしょう。もしも、明らかな血液の付着等があれば、廃棄できる物は廃棄、そうでない物は0.5%次亜塩素酸を十分しみこませたガーゼ等でよくふき取り(もちろん手袋を使用して)、通常の洗浄を行うとよいと思います。
![]() まだ麻疹にかかったことがなく、麻疹の予防接種を考えております。どのホームページを拝見しても大人の予防接種について書かれているものが見当たらず、疑問に思いメールいたしました。この先妊娠・出産を考えているので、子供などからの感染で重症になるのを避けるためにも受けておいた方がいいのでは、と思っております。私ぐらいの年でも接種が可能なのか、また可能ならば接種に適切な時期があるのか、また医療機関によってまちまちかと思いますが、費用など教えていただけますでしょうか?よろしくお願いいたします。(34 歳女性I さん) [2001年第32週(8月6日〜12日):通巻第3巻第4号] 結論から先に言いますと、大人であっても年齢に関係なく麻疹ワクチンを接種することは可能です。ただし、12カ月〜90カ月以外の方に接種する場合は任意接種となり、自費負担となります。 接種後の反応は子供の場合と同じです。妊娠出産を考えられているのであれば、是非お子さまができる前に接種されることをお勧めいたします。接種時妊娠していないことが確実であること、接種後は2 カ月間確実に避妊するようにしてください。接種してしまった後妊娠が判明したり、接種後すぐに妊娠してしまったということがないように、くれぐれもご注意下さい。費用はおっしゃるとおりで、医療機関によってまちまちです。だいたい数千円の単位になります。 現在日本各地で麻疹が流行しています。成人麻疹は子供より重症になることが多いため、ワクチンでの予防はメリットが大きいと思います。
![]() ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus )感染症の診断・治療方法と発生件数について教えてください。(東京都皮膚科医師) [2001年第31週(7月30日〜8月5日):通巻第3巻第31号] ◆診
断
![]() ビブリオ・バルニフィカスというはどのような菌ですか?また、どのような人が感染すると危険なのでしょうか?(熊本県S医師) [2001年30週(1月23日〜29日):通巻第3巻第30号] この菌は、乳糖発酵することなどの点で腸炎ビブリオとは異なることがわかり、1980 年にVibrio vulnificus の学名が付けられました(vulnus はラテン語で創傷の意味)。生物型はI-III の3種類、血清型は16 種類くらいが確認されています。腸炎ビブリオより塩濃度が低いところでも生育するので、海水中、特に汽水域などに生育し、海水温が15〜20 度位をこえると増殖が活発になります。 動物プランクトンに付着し、このプランクトンなどから魚介類が汚染されます。病原性については不明な部分も多く、すべての菌が病気を引き起こすわけではないと推測されています。この病気は、傷口から菌が入る場合と、汚染された魚貝類などから経口感染する場合があり、後者は特に敗血症から死に至ることがあります。 しかし敗血症については全ての人が発病するわけではなく、肝硬変、ヘモクロマトーシスなどの肝臓疾患、糖尿病、癌の治療やHIV 感染により免疫抑制状態にある人、などが危険であるとされています。患者の75%が肝臓疾患をかかえた人であるという報告もあります。 鉄剤の投与の危険性も指摘されており、「バルニフィカスによる敗血症は肝疾患や肝障害患者で血清鉄が高値を示す時期の者、または治療の目的で鉄剤を投与されている貧血患者におこりやすい。」(朝倉書店 医系微生物学)と記載されております。 動物実験でも、マウスを用いた実験でバルニフィカスの腹腔内投与の際、鉄剤を投与することによりLD50が100万倍も低下する、つまり少量のバルニフィカスで死亡するということがわかっております。しかしながら、鉄剤の経口投与のみの治療を受けている患者での発生は、ほとんど報告されておりません。 実際には50歳以上の男性が80%を占めており、発病には種々の要素が絡むものと考えられます。また、肝疾患でも、どの程度の肝障害の人が気をつけたらよいのかなど不明な点も多く、今後の疫学研究に期待するところです。 なお、この病気についての詳しい症状や治療法に関しては、当感染症情報センターのホームページ(http://idsc.nih.go.jp/index-j.html) の「トピックス」にも掲載されています。
![]() 感染症法のもとでは、ジアルジア症などの無症状病原体保有者を届け出る必要があると理解していましたが、届け出る必要はない、との意見もあるようです。どちらが本当でしょうか?(石川県研究者M. I. 氏) [2001年第29週(7月16日〜22日):通巻第3巻第29号] ジアルジア症を含む4類感染症は、原則として有症状病原体保有者を対象としており、無症状病原体保有者を届け出る必要がありません。4 類感染症の中で例外的に無症状病原体保有者でも届け出るのは、HIV 感染症(法律上では後天性免疫不全症候群と記載)と梅毒だけです。これに対して1,2,3 類感染症は全て、無症状病原体保有者でも届け出ることになっています。 (国立感染症研究所感染症情報センター) ******************************** Q :公式見解はそうであったにしても問題は残ります。クリプトスポリジウム症では下痢が治まったあとも4 〜6 週間はオーシストの排出が続くし、ジアルジア症では無症状で長期間シストを排出する例は少なくありません。それらが環境水や水道水などを汚染して集団感染の原因になる可能性があります。この法律は感染症の予防に力点を置いたものであり、無症状病原体保有者をも届け出しないと法律制定の意味と効果は半減します。また、これらの届け出に特段の手間や経費がかかるわけではなく、届け出しないデメリットの大きさを考えれば、この点の改定をすべきであると考えますが、いかがでしょうか?(石川県研究者M.I. 氏) 上でご返答した事は、公衆衛生審議会(現、厚生科学審議会)による審議を踏まえて法律(感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律)で定められています。しかし、4類感染症の中ですでに規定されている上記2 疾患以外でも、無症状病原体保有者の届け出をするように今後扱いを変えるべきかどうかについては、これから検討を進めていく必要があると思います。
![]() インフルエンザワクチンについて勉強しているんですが、どうしても解からないことがあります。インフルエンザワクチンは毎年流行株を予測して作られるといいますが、あらゆる種類のウイルス株を入れてしまうことはできないのでしょうか?一緒に学習している友達と話し合って、あまりウイルス株が多すぎると病原性が現れてしまうからではないか、などと話したりしていますが・・・。(佐賀県医学生J.T.さん) [2001年第27週(7月2日〜8日):通巻第3巻第27号] 現在のインフルエンザワクチンは不活化ワクチンですので、微生物としての活動性は完全に失活されているものが用いられます。したがって、そのウイルスのもつ病原性が現れることはなく、多くのウイルス株を用いたインフルエンザワクチンを作って接種を行ったとしても、インフルエンザの症状が現れることはありません。 インフルエンザ不活化ワクチンは、交差免疫性(他のウイルス株に対する免疫性)はそれほど高くはないので、流行予想株を厳選する必要があります。一つのワクチンとして同じバイアルの中にたくさんのウイルス株を入れてしまうと、不必要なものが多すぎて生産が複雑になったり、免疫効率が落ちてくる可能性もあります。 また、通常の1 回接種量である0.5ml のなかにワクチンとして含むことの出来る抗原蛋白量は限られているので、たくさんのウイルス株を入れることが出来ません。 しかし、交差免疫原性が高いものの方がインフルエンザワクチンとして効率がよいので、最近米国で実用化された経鼻投与のインフルエンザ生ワクチンは、そのような点でメリットが高いと言われています。
![]() 1才8カ月の女児についての質問です。血液検査で過去の予防接種後の抗体検査をしました。検査方法はCF 法だそうです。おたふくかぜ、水ぼうそう(水痘)ともに4 未満で、数値的には抗体がうまく付いていないとの説明を受けました。もう一度予防接種を受けたほうがよいでしょうか?その場合の副作用のリスクはどうでしょうか?参考までに予防接種歴を述べておきます。 5カ月:BCG &ツベルクリン 7カ月:ポリオ 10カ月:麻疹(通園する保育園で麻疹患者が出たため:自費) 〜1才:三種混合(1 期初回) :インフルエンザ 1 才2 カ月:水ぼうそう 1 才4 カ月:おたふくかぜ 1 才5 カ月:風疹 1 才7 カ月:ポリオ 1 才8 カ月:麻疹(公費) (埼玉県主婦F.Y.さん) [2001年第26週(6月25日〜7月1日):通巻第3巻第26号] CF 法という検査方法は感度があまり良くありません。そのため、水ぼうそうやおたふくかぜにかかった後しばらくの間しか陽性が続きません。ワクチン接種後の抗体価を測定する方法としてはあまり適した方法ではなく、おたふくかぜワクチン接種後の場合、CF
法ではおそらく陽性にはならないと思います。おたふくかぜはELISA 法で、水ぼうそうはIAHA 法で測定をしてもらうのが良いと思います。 (国立感染症研究所感染症情報センター)↑トップへ戻る ![]() 麻疹に感染した患者が出現した場合、周囲への感染の波及をできる限り抑制したいのですが、外来での消毒、隔離の必要性について教えてください。(H.N.さん) [2001年第25週(6月18日〜24日):通巻第3巻第25号] 麻疹は感染力が非常に強く、厳密には陰圧部屋に隔離しないと完全に感染は予防できないといわれています。ただし、現実にはこのような部屋がある病院はほとんどなく、個室隔離を行い、診察時には医療従事者はガウンやマスク、帽子などを着用し、診察用具は他の患者さんとは別にし、診察後は十分な手洗いと消毒をするのが現状かと思います。 とにかく、麻疹の患者さんはすぐに隔離室に入っていただき、少しでも他の患者さんとの接触を少なくするのがとり得る最善の方法と思います。退室後はできる限り日光を十分に取り入れ、換気に努め、床は次亜塩素酸ナトリウム0.1%溶液で清拭して30 分以上放置後、水拭きを行います。明白な汚染部分は1%溶液でぬらし、30 分以上放置して拭き取りをします。あるいは、消毒用エタノールで清拭します。 医療機関で感染を受けることが多い麻疹、水痘に関しては、外来での消毒、隔離は非常に難しい問題だと思います。1 歳になればすぐにワクチン接種をしておくことを常日頃からご指導いただく以外、有効な手だては少ないと思います。 麻疹に感染した患者が外来に出現してしまった場合は、上記の方法を迅速にとることと、その時外来にいる患者さんで、麻疹にかかったこともなくワクチンも接種していない方を早急に把握して、緊急ワクチン接種、あるいは緊急ガンマグロブリン接種などの方法で個別対応する以外、完全に予防する方法はないように思います。 (国立感染症研究所感染症情報センター)↑トップへ戻る ![]() 1歳8 カ月の子供の母親です。日本脳炎の予防接種の年齢についてですが、麻疹や風疹などは1歳から、3種混合などは6カ月からなのに、なぜ日本脳炎だけ3才以降なのでしょうか?3 才までは罹患率が低いのでしょうか?(埼玉県Y さん) [2001年第24週(6月11日〜17日):通巻第3巻第24号] 日本脳炎ワクチンの接種年齢ですが、現在我が国においては3
歳児を中心に接種開始が薦められていますが、生後6 カ月〜90カ月までの小児は定期接種として受けることができます。そのため、希望すれば各市区町村の予防接種の担当課に相談してください。ただしワクチンの接種量については、3歳未満は0.25ml
、3歳以上は0.5ml となります。 (国立感染症研究所感染症情報センター)↑トップへ戻る ![]() 注目すべき感染症<麻疹>のなかに出てくる、「厚生労働省感染症発生動向調査警報・注意報発生システム」とはどういうシステムですか?インターネットで見ることができますか?(K.Y. さん) [2001年第21週(5月21日〜27日):通巻第3巻第21号] 厚生労働省感染症発生動向調査における新システム「警報・注意報発生システム」は昨年末より本格運用が開始されました。このシステムのねらいは、都道府県衛生主管部局や保健所など第一線の衛生行政機関の専門家に向け、公衆衛生上その流行現象の早期把握が必要な疾患について、流行の原因究明や拡大阻止対策などを講ずるための資料として、データに何らかの流行現象がみられることを、一定の科学的根拠に基づいて迅速に注意喚起することにあります。このシステムは感染症発生動向調査の一部に組み込まれているものであり、厚生労働省のWISH
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尚、基準値はすべて定点当たりの値です。また注意報の数字が入っていないものは、 (国立感染症研究所感染症情報センター)↑トップへ戻る ![]() 香港でインフルエンザにより大量のニワトリが処分されたと聞きました。香港旅行を予定していますが、罹るのではないかと心配です。国内ではインフルエンザのシーズンがほとんど終わりましたが、ワクチンを保管している医療機関を探して、打ってもらうほうがいいでしょうか?(東京都S さん) [2001年第19週(5月7日〜13日):通巻第3巻第19号] 1997 年香港において、ニワトリがインフルエンザA (H5N1 )の大流行で大量に死に、ヒトにも感染が見られ18 人が罹りましたが、不幸にもそのうち6 人が死亡しています。このとき香港政府は160万羽のニワトリを殺処分としました。ヒトを対象とするインフルエンザワクチンはA (H1N1)、A(H3N2)およびB型を対象としており、このインフルエンザA (H5N1 )に対しては効きません。また、A (H5N1)に対するワクチンの開発を各国が試みていますが、今のところ実用化に至ってはいません。 今回の香港でのニワトリのインフルエンザもA (H5N1)ですが、1997 年の時のウイルスとは遺伝的に異なるものです。現在までのところ、今回の流行でヒトに罹った例は報告されていません。香港の衛生当局は、今回のニワトリのインフルエンザA (H5N1)の流行で大量のニワトリが死んでいること、これらのニワトリからヒトへの感染の危険は今のところないが、余り流行が長く続くと、このウイルスがヒトにも罹るウイルスに変わっていく可能性も危惧して、このように思い切って大量のニワトリを殺処分したとのことです。 なお、運悪くヒトが罹る場合は、病気のニワトリに接して、気道(鼻粘膜、咽頭、気管・気管支など)からウイルスが侵入するためであり、鶏肉を食べて感染するわけではありません。養鶏場の見学など、大量の鶏に直接接触するようなことのない一般の旅行であれば、ニワトリインフルエンザに感染のおそれはほとんどないと言って良いと思います。
![]() 強い鶏卵アレルギーがある幼児に麻疹ワクチンを接種する場合、現在私は、ワクチン1 0 倍希釈液で皮内テストを行って接種の是非の参考にしていますが、どの程度の鶏卵アレルギーを有する人の場合皮内テストをする必要があるのかはっきりした基準を持っていません。一応IgE RASTで卵白スコアが3 程度か、実際に鶏卵を摂取してなんらかの即時型アレルギー反応が出たことのある場合に皮内テストを実施しています。皮内テストの必要性の有無、および、必要な場合どのレベルのアレルギー(できればIgE RASTスコアなど客観的指標で)に対し行うべきかご教授下さい。(和歌山県小児科医 井戸茂樹) [2001年第17,18週(4月23日〜5月6日):通巻第3巻第17,18合併号] IDWR へのご質問ありがとうございました。この問題はご質問がたくさん来ており、実際に接種にあたってお困りの先生方が多いと伺っております。以下にご回答を記載させていただきました。卵アレルギーを有する小児に対する麻疹ワクチンに関してですが、麻疹ワクチンに含まれる鶏卵成分はきわめて少なく、麻疹ワクチンと卵アレルギーとの間に相関関係はないといわれています。実際に入っている鶏卵成分は、卵に関するアレルゲン診断用の皮内抗原液よりも微量です。 このことから、麻疹ワクチン接種にあたって、卵成分を考慮する必要はあまりないと思います。実際に、卵アレルギーを有する小児に対する麻疹ワクチン皮内テスト(100 倍希釈液)と、卵白および卵黄RAST score との関係を検討してみた報告でも(第3 回日本ワクチン学会−於名古屋: 1999年)、まったく相関は認められていませんでした。ただし、鶏卵に対して強いアレルギーを有する小児においては、ワクチンの他の成分に対してもアレルギー反応を起こす可能性があるという意味で、皮内テストをスクリーニングとして行っているのが現状だと思います。 ある施設での接種方法ですが(参考文献:小児科Vol.41.No.10, 2000,1778-1785)、アナフィラキシー反応既往者(原因は何であっても)や重篤なアレルギー疾患を有する小児には、まずワクチン液によるスクラッチテストを施行して陰性ならば、ワクチン100 倍希釈液による皮内テストを施 行しています。それ以外の何らかのアレルギー疾患を有する小児に対しては、ワクチン100 倍希釈液による皮内テストから始めています。この方法でスクリーニングすることにより、重篤なアレルギ反応を認めた小児はいないようです。 100 倍希釈液を用いたスクリーニングについての結果を参照いたしましたが、皮内テストに用いるワクチン希釈液として10倍、100 倍いずれを使用したほうが良いのかについては、まだ明確な結論は出ていないように思いますので、先生がご使用の10 倍希釈液でももちろん同じような結果が 出ると思います。 先生のご質問の主旨である、皮内テストの必要性およびどのレベルのアレルギーに対し行うべきかについての明確なお答えにはならないと思いますが、接種医の先生のご判断で、アレルギー反応が心配される場合や、家族の不安が強い場合は皮内テストをするというのは如何でしょうか。 ただし、即時型アレルギー反応既往者やこれまでのワクチン接種で何らかのアレルギー反応を認めた小児では、必ず施行した方がよいと思われます。もし、皮内テストをしなかった場合は、必ず接種後30 分間は院内に待機してもらい、アレルギー反応が起こったときはすぐに緊急処置を行うというのも一つではないかと思います。 実際にこれまで、全くアレルギー歴がなく家族にもアレルギー疾患の人がいない小児において、アナフィラキシー反応を経験したことがあります。この小児はその後ゼラチンアレルギーであることが判明したのですが、ワクチン接種後は必ず30 分間院内での待機ができていれば、早急な対応ができるのではないかと思っております。現在各ワクチンメーカーのご努力により、ゼラチンは不含有、あるいはアレルギー反応を起こしにくいゼラチンを使用したワクチンが製造されていますので、ゼラチンに関してはご安心いただいてもよいかと思います。 麻疹が現在日本各地で流行しています。一人でも多くの子供達に麻疹ワクチンが接種されることを強く希望いたします。
![]() 成人麻疹について教えて下さい。成人麻疹は何歳以上の者が麻疹を発症すると成人麻疹という対象となるのでしょうか? [2001年第16週(4月16日〜22日):通巻第3巻第16号] 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」において、「麻疹(成人麻疹を除く)」は4 類感染症の定点把握対象疾患になっており(つまり、麻疹に罹患した全患者数を把握しているわけではありません。これは成人麻疹についても同じです。)、同法に基づく感染症発生動向調査では、全国約3,000 の小児科定点から報告されます。「麻疹(成人麻疹を除く)」は()内に明記されているように、成人麻疹患者を除く18 歳未満の小児を対象としています。 感染症発生動向調査では、上記で報告される「麻疹(成人麻疹を除く)」とは別に「成人麻疹」(18 歳以上)という項目を設けてサーベイランスを行っています。これらの症例は全国約500 の基幹病院定点からの報告であり、多くは入院を要するような比較的重症例であると考えられます。(麻疹の流行状況については、週報の「注目すべき感染症」を参照して下さい。)
![]() 最近国内でもマラリア予防薬が認可になったと聞きましたが、本当でしょうか?旅行者が相談に来たら、どのように処方すればよいのでしょうか?(東京都開業医Nさん) [2001年第15週(1月9日〜15日):通巻第3巻第15号] マラリアの治療薬および予防薬として一世を風靡したクロロキンは、熱帯熱マラリアでの耐性が進んだことから予防薬としての価値も低下しており、それと入れ代わりにメフロキンが予防薬として主役の座を占めるようになりました。
![]() 最近、ヨーロッパで口蹄疫の流行があり、家畜が大量に処分されたというニュースを見ました。あまり耳慣れない病気ですが、どんな病気でしょうか。人への影響はあるのでしょうか。(栃木県Wさん) [2001年第14週(4月2日〜8日):通巻第3巻第14号] 口蹄疫とは、口蹄疫ウイルス(ピコルナウイルス科アフトウイルス属に分類されるFoot-
and-mouth disease virus)の感染によって主に家畜(偶蹄類;ウシ、ブタ)の口や蹄に潰瘍が生ずる病気です。英語名ではFoot- and- mouth disease といわれ、ウシやブタがこのウイルスの感染を受けると、口や蹄にできた潰瘍によって摂食・歩行が困難になり痩せていき、商品価値が著しく低下してしまいます。家畜類の間での伝搬力は非常に強く、一度発生すると爆発的に広がることが知られており、畜産関係者にとっては恐ろしい病気として知られていますが、人に対する健康上の問題は通常ないと考えられています。
![]() 麻疹について、以下の3 点についてお尋ねします。 1) 麻疹ワクチン接種後、麻疹患者と接触したことがわかり、接触してから75 時間程度(3 日以上)たっていたと考えられるため、麻疹ワクチン接種3 時間後にガンマグロブリンを打ちました。この処置は発病阻止又は軽症化のための処置として適当でしょうか。 2) ガンマグロブリンにより麻疹ワクチンが中和され、ワクチンの効果が低下することも考えられますがいかがでしょうか。 3) また、ワクチンの効果が低下する場合、再度麻疹ワクチンの接種が必要でしょうか。 (石川県石川中央保健福祉センター) [2001年第4週(1月22日〜28日):通巻第3巻第4号] ご質問のありました麻疹について回答させていただきます。参考になれば幸いです。 まず、(1) について、麻疹患者と接触した場合の発病阻止又は軽症化にガンマグロブリンを接種された処置は適切であったと考えます。ただし、ガンマグロブリンが血液製剤であることについては、被接種者あるいは保護者に十分に説明し、同意を得た上での投与が重要であると考えます。筋注か静注かの記載がご質問の中にはありませんでしたが、麻疹の発病阻止又は軽症化のためには、曝露後できるだけ早く、遅くとも6日以内に筋注用ヒト免疫グロブリンを接種することが保険で認められており、10〜15mg/kgにて軽症化、50mg/kg 以上にて発病阻止効果があるといわれています。接触してから72 時間後の麻疹ワクチン接種では発病阻止又は軽症化は困難と考えますので、この場合、この方法が取り得る最適な方法であると思います。 (2) については、ご質問の通りで、ガンマグロブリンを投与されていますので、麻疹ワクチンとしての効果は期待できません。(3) の質問にも関連しますが、3カ月間はガンマグロブリンの効果によって麻疹の予防はできると思いますが、その後の麻疹の予防には麻疹ワクチンの再接種が必要になります。 (3) について、ガンマグロブリンの効果は1カ月で半減、3カ月でほぼなくなります。ただし、ガンマグロブリン投与後3 カ月以内に麻疹ワクチンを接種しても、効果が十分得られないため、麻疹ワクチンを再接種する場合は、ガンマグロブリン投与後3カ月以上空けて接種してください。 (国立感染症研究所感染症情報センター)↑トップへ戻る ![]() ごく最近、マラリアの予防薬あるいは治療薬にて突然死した人があると聞きましたが、マラリア流行地へ行くことが多く、予防薬を現地で購入して飲むこともあるので心配です。(埼玉県K生) [2001年第10週(3月5日〜11日):通巻第3巻第10号] 生来健康であった米国の22 才学生が西アフリカにてメフロキン(日本国内未認可、商品名Lariam, Mephaquin など)でのマラリア予防を行っていましたが、運悪くマラリアに罹患し、現地にてハロファントリン(日本国内未認可、商品名Halfan )を処方されました。それが効いたのか翌日には解熱しましたが、翌々日に急死しました。今まで気づかれなかったのですが、解剖の結果、肥大型心筋症(心臓の筋肉自体の病気)があることが判明しました(MMWR 50(09);169,2001)。 ハロファントリンはアフリカで良く使われているマラリア治療薬で、予防薬としては使われていませんが、健康な方でも心電図でのQT 間隔延長、場合により致死的な心室性不整脈を起こしうることが知られてい ます。したがって、健康な方でも使用前には心電図検査を受けること、心臓に問題のある方では使用しないこと、などが強調されてきました。一方、メフロキンはマラリアの治療と予防に使われており、特に予防では熱帯熱マラリアが流行する多くの地域において使われています。メフロキン単独での予防ではこのような心臓の問題は、少なくとも健康者においては問題となっておりません。 問題はメフロキンで予防をしている、あるいは治療で服用した方が、すぐにハロファントリンを服用する場合であり、これはハロファントリンによる上記心臓の問題を起こしやすいので、健康者においても禁忌とされています。この米国人の死亡例ではさらに、外見全く健康でも肥大型心筋症があったこと、また、QT 延長を起こしやすい他の薬も同時に飲んでいたことなど、悪条件が重なったと思われます。しかし繰り返しますが、健康人でもメフロキンの後にハロファントリンを服用するのは危険であり、止めるべきであるということです。それでは、メフロキンを服用してどれだけ期間が経てばハロファントリンを飲んでも大丈夫かというと、今のところはっきり解っていません。 メフロキン、ハロファントリン両者ともに国内で市販されていませんが、海外にて入手あるいは処方されて服用する機会があるかもしれません。両者の組み合わせ、その順番などには十分注意しなければなりません。 (国立感染症研究所感染症情報センター)↑トップへ戻る ![]() クラミジア・トラコマチス抗体について、治療後のIgG,IgA,IgM 抗体の時間の経過に伴う変化について教えて下さい。2、3年前に感染の既往があると思われる症例について、今回検査したところ、いずれの抗体も検出されませんでした。一般には陰性化しにくいといわれているIgG ですが、クラミジアIgG 抗体の場合にはどの様な経過で推移するのでしょうか?(石川県石川中央保健福祉センター) [2001年第9週(2月26日〜3月4日):通巻第3巻第9号] 感染後のクラミジア・トラコマチス抗体の推移は、以下のような因子によってかなり異なります。 1 .性別 2. 暴露量 3. 治療 4. 個体差 5. 測定法 性差は、感染部位の面積による暴露量の違いということが大きいと思われます。解剖学的に女性の方が感染による暴露量は多いと考えられます。 女性で子宮頸管炎を起こした場合は、初感染時のみIgM が2 〜3 カ月検出されますが、あとは通常IgG, IgA 抗体が長期にわたり高値を示すことが多く、治療後も非常にゆっくりとしか抗体価は下がっていきません。特にIgG 抗体は長年にわたって低値から中等度維持され、感染既往としての指標ともなります。再感染や繰り返し感染があると再び高値になりさらに長期に抗体を維持することになります。とくに子宮付属器炎など長期に相当量の暴露量があったと思われる例や、不顕性感染例では、IgG 抗体の維持は生涯にわたることが多いようです。ちなみに、わが国の70 歳以上の方々の多くがかつてトラコーマに罹患していたことから、高年齢者のクラミジア・トラコマチスIgG 抗体保有率はかなり高値です。 一方、男性の場合は主に尿道炎ですので、感染面積が小さいため暴露量も少なく、感染後抗体が上昇してもあまり高値にならず、治療後比較的短期間で陰性化することがしばしばみられます。場合によっては抗体上昇がほとんど見られない男性尿道炎症例もあります。 次に治療ですが、早期にテトラサイクリン系薬、マクロライド系薬、ニューキノロン系薬等の抗クラミジア薬が十分な投与量と期間(例えば常用量で1 週間以上)使用され、除菌できた場合は抗体価もあまり上昇しないことがあります。また陰性化もしやすいようです。 お問い合わせの症例では詳細はわかりませんが、おそらく感染後治療されたものと思われ、2 、3 年後での陰性化は十分ありえます。 他に個体差や抗体測定法の違いも関係しますが、主な要因は先に述べたものと思われます。 (国立感染症研究所ウイルス一部クラミジアリケッチア室 岸本壽男)↑トップへ戻る
![]() IDWR2000年第50号P.11-13 の海外感染症情報で、ヒトの狂犬病に関して米国やカナダの情報が記載されていますが、私も以前からMMWR 等でコウモリによる狂犬病に注目していました。日本においては1957 年以降狂犬病の発生がないとの事ですが、日本でも夕方など地域によってはかなりの数のコウモリが飛んでいるのを見かけます。日本にいるコウモリから狂犬病関連ウイルスが分離された報告があるのかどうか、あればその詳細を教えてください。(K 医科大学 I. Y.) [2001年第6週(2月5日〜11日):通巻第3巻第6号] 日本のコウモリから狂犬病ウイルスを分離するという試みは、以前国立感染症研究所ウイルス一部でおこなったことがあります。電顕で砲弾型をしたウイルスが分離されており、rhabdovirus であることには間違いありませんが、このウイルスは、CDC から取り寄せたlyssavirus 共通のモノクローナル抗体には反応しませんでした。現在のところ、日本のコウモリから分離されたウイルスは、Australian bat virus を含むlyssavirus とは関連ないと考えています。 なお、我が国においてコウモリから狂犬病が感染したとの報告はありませんが、過去のことについては不明です。
![]() 感染症週報IDWR (2000 年51・52合併号)の仙台・山形でのアデノウイルスの流行についての記事を読み、私の経験をお知らせします。 私は神戸市の新興住宅地で小児科医院を開業しています。3年前より簡易アデノウイルス抗原検出キット(アデノ・チェック)を使ってアデノウイルス感染の診療を行っています。 平成12年、当院でアデノ・チェックが陽性でアデノウイルス感 染と確定された症例数は、合計100例です(下表参照)。 10月に流行の兆しが見え始め、11月と12月に症例が急速に増加しました。流行は幼稚園・保育所を中心に広がり、家族内感染が見られ両親も罹患した例もありました(当院は小児科単科なので、この数字の中には成人の症例は含まれていません)。症状は典型的な咽頭結膜熱、滲出性咽頭扁桃炎、胃腸症状の強い症例、気管支炎等様々でした。発熱期間は4〜5日が多かったのですが、中には7〜8日も続き、病名がアデノウイルス感染症と分かっていなかったら不明熱で心配したと思われる症例も見られました。アデノ・チェックで確定診断できた症例以外にも、症状からはアデノウイルスが病因だろうと思われる症例がありました。家族内感染と考えられる症例の中に3〜4週間してから発症した例もありました。 アデノウイルスは外来診療で大きなウェイトを占めていることが、今回の流行でよくわかりました。なお、ウイルス分離は実施していませんのでアデノウイルスの型は不明です。 神戸市 西村清子(小児科医) [2001年第5週(1月29日〜2月4日):通巻第3巻第5号]
![]() 日本でもまだ麻疹はあると思いますが、韓国への旅行者に何か注意がありますか? [2001年第4週(1月22日〜28日):通巻第3巻第4号] 麻疹の流行状況 麻疹は合併症をおこす割合が高く、中耳炎が7%、肺炎が6%、その他に急性脳炎は0.1%に、麻疹罹患から5〜10 年後に生ずる亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は麻疹罹患者10万例に1人発生する、といわれています。死亡率は医療状況によって異なりますが、いわゆる先進国でも0.1〜0.5%、途上国では10%前後ほどと考えられ、世界では未だ70 万人が麻疹により死亡していることが推定されています。 WHO ではポリオの次に制圧すべき疾患の候補の一つとして麻疹を位置づけています。北南米では、MMR ワクチン接種を強力にすすめることによる麻疹制圧のプログラムが進んでおり、また欧米を中心にして麻疹ワクチン(あるいはMMR)の2回接種法を実施している国が増えています。米国では年間の罹患者数も100人以下となっており、麻疹はもはや国内の病気ではなく輸入感染症であると言っています。 韓国での状況 韓国ではMMR ワクチンの2回接種法が導入されており(1回目の接種率は90%以上、2 回目は30〜40%)、年間罹患者数は1995 年71 例、1998年4 例、1999年88例と減少していましたが、昨年3月頃より急激な患者数の増加がみられました(韓国での麻疹は全数届け出疾患となっており、サーベイランスシステムが1999年から強化されています)。 韓国国立保健院の発表によれば、2000年には年間約3万2 千人、2001年には1月15日までに約4 千人の麻疹患者が発生したといわれています(1/18 ・朝鮮日報より)。韓国では今回の問題をふまえて麻疹制圧のために厚生大臣をトップとした対策委員会を作り、5 カ年計画で2005 年までに制圧プログラムを行う予定と報じられています。 麻疹ワクチン接種は、世界中の子どもが受けるワクチン(EPI ワクチン)となっています。日本では、麻疹ワクチンは1 歳〜7歳半までの子どもたちが受ける定期接種ワクチンとなっていますが(標準的には生後12〜24カ月)、病気の重篤さから1歳の誕生日を過ぎたらなるべく早い時期にワクチン接種を受けることをおすすめします。 海外へ出かける子どもさんで定期接種としての麻疹ワクチンがまだ済んでいない場合には、韓国に限らず、行き先がどこであれ出来るだけ麻疹ワクチンを済ませてから出国することをおすすめします。なお大人を含めて7 歳半を過ぎて、これまで麻疹にかかったこともなく、麻疹ワクチンの接種をしていない方には、任意接種ワクチンの扱いとなりますが、麻疹ワクチン接種を受けておくことをおすすめします。 日本の現状 日本では定点医療機関(約3,000)からの届け出の報告となりますが、2000年には年間に定点から22,497例の報告がありました。この定点観測では全体の患者数の10 〜20%位を把握しているという推計に基づくと、我が国では年間10 万人前後の麻疹患者が発生していると考えられます。 我が国での麻疹は、全体数としては減少傾向にありますが、韓国よりはるかに多い患者数で、現在でも、各地で局地的流行がみられています。たとえば平成10 年の沖縄県では2,000人以上が罹患し、6例が死亡しており、また、2000年以降も大阪府、千葉県、高知県、奈良県、大分県などで流行的発生が報告されています。 韓国からの帰国者での麻疹発症の報告もありますが(IDWR 2000年第50号)、日本からの出国者が米国で麻疹を発症し、米国における公衆衛生対策上の問題となったことも指摘されています。麻疹は、隣国の問題と言うよりも、むしろ日本自身の問題としてとらえる必要があります。 日本における麻疹ワクチン接種率は、地域差もありますが、ここ数年の平均は70〜80%にとどまっているという報告があります(予防接種の効果的実施と副反応に関する総合的研究・分担研究者磯村思无)。麻疹は医療状況が進んだ今日でも死に至ることが少なくない、重篤なウイルス性感染症です。確実な治療法はありませんが、効果の高い予防接種があります。1歳を過ぎたら、なるべく早い時期に麻疹ワクチンをすませることを強くおすすめします。 麻疹ワクチンの副反応として、接種後10日前後に発熱が約30%に、同時期に発疹が約10%にみとめられますが、いずれも軽症でほとんどは自然に消失します。麻疹の持つ重篤性から考えれば、これらは受け入れられる範囲の副反応であると考えられます。ごく稀に脳炎(100〜150万接種に1例程度)を伴うことが報告されています。日本において、麻疹ワクチンによる副反応が否定し得ないとして健康被害に対する救済(補償)が行われた例は、10万接種当たり0.5件、死亡に対する認定は同じく10万接種当たり0.06件です。また、ゼラチンアレルギーのある小児には注意が必要であるとされていましたが、現在の国産麻疹ワクチンからはゼラチンは除去ないし改良型が用いられており、ゼラチンによるアナフィラキシー反応例は激減しました。 (国立感染症研究所感染症情報センター)↑トップへ戻る
![]() インフルエンザ警報・注意報について 厚生労働省・感染症発生動向調査における新システム「警報注意報発生システム」は昨年末より本格運用が開始されました。本システムのねらいは、都道府県衛生主管部局や保健所など第一線の衛生行政機関の専門家に向け、公衆衛生上その流行現象の早期把握が必要な疾患について、流行の原因究明や拡大阻止対策などを講ずるための資料として、データに何らかの流行現象がみられることを、一定の科学的根拠に基づいて迅速に注意喚起することにあります。 流行発生警報と注意報の2種類があり、警報の発生は、大きな流行が発生または継続しつつあることが疑われるということを意味し、注意報の発生は、流行の発生前であれば、今後4週間以内に大きな流行が発生する可能性があるということ、流行の発生後であれば流行が継続している(終息していない)可能性があることを意味します。ほとんどの感染症では、時間の経過とともに流行が地域的に拡大あるいは移動していくものであり、流行拡大を早期に探知するためには、小区域での流行状況を広域的に監視することが重要です。本警報システムでは、感染症発生動向調査に関わる当該保健所とともに、当該都道府県内の全保健所の警報発生状況、全国の警報発生状況を把握することができます。 国立感染症研究所感染症情報センターでは、警報・注意報発生の対象疾患となる定点把握感染症のうち、インフルエンザについて、社会的要望の大きさを鑑み、流行シーズン中、本システムで得られた情報の一部を迅速に還元・提供することとしました。国立感染症研究所のホームページにおいて、最新の警報・注意報発生状況を日本地図上に都道府県単位で示しています(毎週更新)。本来、警報・注意報は保健所単位で発生しますが、ホームページ上では、一つでも注意報が出ている保健所があればその都道府県に黄色い色が、一つでも警報が出ていれば赤い色が表示されます。また、都道府県ごとに全保健所数と警報・注意報の出ている保健所の数を見ることもできます(国立感染症研究所感染症情報センターホームページ <http://idsc.nih.go.jp/index‐j.html> トピックス「インフルエンザ」より「インフルエンザ警報・注意報」を選択して閲覧)。 警報発生の仕組み 警報は、1週間の定点当たり報告数がある基準値(警報の開始基準値)以上の場合に発生します。前の週に警報が発生していた場合、1週間の定点当たり報告数が別の基準値(警報の継続基準値)以上の場合に発生します。注意報は、警報が発生していないときに、1週間の定点当たり報告数がある基準値(注意報の基準値)以上の場合に発生します。 警報の基準値は、過去5年間の流行状況(全国の定点を有する保健所数×5年間×52週;インフルエンザ定点で延べ約17万週)の中で、一連の警報発生の起こる確率が1%程度になるように定めました。注意報の基準値は、警報発生前の4週間に注意報が出る確率を約60〜70%、警報が発生しない期間に注意報が出ない確率を約95 〜98%、注意報が出た場合にその後4 週間以内に警報が出る確率(注意報の的中率)を約20 〜30%になるように定めています。インフルエンザの警報・注意報の基準値は以下のとおりです(基準値はすべて定点当たりの値)。
警報発生を見る上での注意 (国立感染症研究所感染症情報センター)↑トップへ戻る
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