第4セッション 食中毒情報



地域における健康危機管理体制の整備のポイント
厚生省保健医療局地域保健・健康増進栄養課
課長補佐  
福島靖正

1 健康危機の対象分野
  ・医薬品、食中毒、感染症、飲料水、毒劇物その他

2 健康危機管理の目的
  ・健康被害の発生防止
  ・健康被害の拡大防止
  ・適切な治療の確保

3 健康危機管理の種類
  ・事前管理
    健康危機の予測及び防止、健康危機の解決のために必要な対応の同定、準備及び計画の策定等

1 都道府県健康危機管理指針、対策要領及び予防計画の策定
2 感染症発生動向調査
3 食品衛生法に基づく飲食店の許認可、監視、指導及び収去検査
4 環境衛生関係営業施設、建築物の衛生監視、指導
5 飲料水の水質検査
6 医療監視
7 薬事監視
8 救急医療体制の整備
9 環境保全等

  ・事後管理(事前準備できること・できないこと)
    被害者の病状、病因、治療方法に関する情報の収集、解析、提供など、健康危機発生後の住民の健康と安全の確保、被害者の救済等

a 感染症新法に基づく2次感染の防止等、感染拡大防止のための対応
b 食品衛生法に基づく原因物質の特定および再発防止のための措置
c 台風・地震等自然災害時における2次災害の防止活動(防疫活動、避難所等への訪問等による住民の健康管理等)
d 災害、事件発生時における医療の確保のための情報収集及び医療機関に対する指導
e 毒物・劇物の漏洩時における応急措置と再発防止のための指導


4 健康危機管理の手法
  ・情報の一元的管理(収集・分析・提供)
   情報収集と分析
    対応策の検討
    情報提供

5 現在の健康危機管理の問題点
  ・健康危機情報の収集体制が不十分(危機かどうかを見極めるには現場の判断重要)
  ・健康危機発生時に、地方公共団体等の中のどの機関が、健康危機管理において中核的役割を果たすのかが不明確
  ・事後管理に関する検討が不十分

6  地域における健康危機管理体制を整備する上で必要な視点
 ○ 地域における健康危機管理の拠点の明確化
   ・都道府県、2次医療圏、市町村のレベルにおける保健衛生部門の役割の明確化
 ○ 健康危機情報の一元的管理・提供
 ○ 健康危機に関する情報の保健衛生部門の管理責任者に対する速やかな伝達
 ○ 管理責任者から保健衛生部門全体に対する、事後管理のための迅速かつ適切な指示のトップダウン的伝達
 ○ 健康危機発生時の管理体制等について定めたマニュアルの整備
 ○ マニュアルの実効性を確保するための方策
   ・マニュアルの有効性の検証のための模擬訓練
   ・適切に健康危機管理を行いうる人材の育成
   ・必要な機器・資材の整備等

(1)地域における健康危機管理体制の拠点の明確化
   ・部局横断的な連絡会議の設置
     即決、トップダウンでの意志決定が必要
   ・重要な決定を行った場合の内容の公開
     不確実な情報下で行った決定の前提条件等の公開
   ・調整機関に情報を集約すること
   ・関係者相互の情報の共有
   ・所掌がはっきりしない場合、関係機関で調整
   ・現地への職員派遣
   ・初動が重要、「小さな事件」との予断を持たないこと
    →基本指針を事前に作っておくことで対応容易になる。
     たいていの事件は大きくならない。
   ・休日・夜間も対応できる体制の整備
   ・平時の活動の仕方と有事の活動の仕方は違う
   ・ホットライン(公表しない電話番号)の確保
(2)情報の収集システムの確立
   ・健康危機管理につながることを誰が判断するのか?
   ・平時と有事を分ける基準は?
   ・食中毒であれば、毒劇物等の混入によるものであれ、衛生サイドが対応すべきか?
   ・休日・夜間も対応できる体制の整備
     情報発信源からの情報提供を受けることができるように
    →例えば、携帯電話、ポケベル、転送電話等を当番が持つ。
         連絡先を関係機関相互で交換しておく。
  ア 医療機関からの情報収集
     健康危機管理につながると思われる患者を診断した医師からの緊急通報
     ・法的根拠はどうするか?→食品衛生法?伝染病予防法?
     ・患者が分散して医療機関に収容された場合の情報収集
  イ 警察からの情報収集
     警察サイドが把握した情報を保健サイドが把握する仕組み
     ・毒劇物等の可能性があると、警察が認識した後の問題
  ウ 消防からの情報収集
     消防サイドが把握した情報を保健サイドが把握する仕組み
     ・複数の医療機関に分散して搬送した場合
     ・症状に特異性がある場合
     ・同時多発的に患者が発生した場合
     ・保健サイドに知らせるべきと、誰が判断するのか
     ・一定の通知の基準が必要か
  エ その他からの情報収集
     被害が出る前の情報収集が重要

(3)医療機関への情報提供
  ア 原因が特定された場合の当該原因への対応方法(治療方法)の情報収集
     中毒情報センター等へのコンサルテーション
  イ 原因が特定されない場合の対応方法への情報収集
     専門家へのコンサルテーション
     症状逆引きデータベース
  ウ 診断・治療に結びつく情報の医療機関に対する迅速な提供
どのルートで情報を医療機関に返すか?

(4)原因究明に係る関係機関の関与
   ・原因究明は警察サイドと衛生サイドが平行して行うべき
   ・検体の分け方を事前に取り決めておく
     毒劇物の場合
     細菌の場合
     その他の場合
   ・地方衛生研究所等における特殊な毒物の検査体制の整備
      現状ではどこまでできるか
      探査的検査はどこまでできるか
      今後、どの程度の検査をできるようにするのか
      検体をどのようにして搬送するか
      分析担当者の確保(24時間オンコール体制)

(5)治療用医薬品等の確保
    どの程度のものをどこに置いておくか?
    事件発生時にどのようにして医療機関に配布するのか?

(6)広域的な応援体制の整備
   ・事件が起こってから連絡先を考えるのではなく、担当者氏名、連絡先の明確化
  ア 県庁の衛生担当部局と県立保健所の役割分担
  イ 政令指定都市・中核市・その他の政令市における、衛生担当部局と保健所の役割   分担
    ・1市1保健所の場合
    ・1市複数保健所の場合
  ウ 県と中核市・政令市との連携の在り方
     特に県警との情報交換
  エ 県・県立保健所と市町村の連携の在り方
     市町村は学校給食、水道等で当事者になることあり
     学校・教育委員会、保健センターと保健所との連携
  オ 国との連携の在り方

(7)被害者・家族等への対応
  ア 経過・予後等に関する説明
     直接訪問
     説明会
     文書
  イ PTSD対策
  ウ 人権への配慮
  エ その他
(8)広報(マスコミ対応)
  ア 市民への情報提供
    ・被害者の人権・いじめが生じないような配慮
    ・保健所の情報の提供の仕方、特にメディアに対する情報提供の仕方がポイント
  イ 対応窓口の一元化
    ・マスコミ対応は一元化
    −全体が把握できるハイレベルの者に限り、他の者は対応しないこと。
    ・定時的で頻繁な会見
     −テレビ時代には従来以上の即時性、例えば1時間おき
  ウ 記者への教育
    ・遊軍記者は、現地に長時間いないので、事件の背景等が分からない
    ・同じことを聞かれても、くり返し話す寛容さ、忍耐づよさが必要



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