厚生省大臣官房厚生科学課健康危機管理官 唐澤 剛
1. 背景
新興・再興感染症といわれる新型インフルエンザや大阪・堺での腸管出血性大腸菌O157などの大規模な食中毒の発生といった国民の生命、健康の安全を脅かす健康危機への迅速かつ適切な対応が重要な課題となっている。
2. 健康危機管理基本指針
医薬品、食中毒、感染症、飲料水などによる健康被害の防止を図るため、厚生省の健康危機管理体制の基本的な枠組みを策定(参考1)
(1) 健康危機管理調整会議
感染症、食中毒、医薬品、飲料水などによる健康被害の防止について関係部局間で情報交換を行い、迅速かつ適切な健康危機管理業務を行うため、「健康危機管理調整会議」を設置(参考2)
(2) 健康危機管理実施要領
感染症・食中毒・医薬品・飲料水の各分野、国立病院・療養所、国立試験研究機関のそれぞれにおける健康危機管理体制を定めた「健康危機管理実施要領」を策定
(3) 健康危機管理体制
総合的かつ機能的な健康危機管理体制を確保
・平時は、休日夜間を含め連絡体制を確立し、健康危険情報等を把握
・重大な健康被害が発生した場合には、対策本部を設置し、必要に応じ、専門家から構成される研究班を設置し、国民へ健康危険情報を提供
3.健康危機管理体制の構築
こうした体制により、平時は、休日夜間を含め連絡体制を確立し、感染症等の健康危険情報の把握に努めるとともに、万一重大な健康被害が発生した場合には、対策本部の設置、職員や専門家の現地への派遣、国民に対する健康危険情報の提供など必要な対応を図ることとしている。また、地域における健康危機管理体制を確保するため、都道府県等の職員を対象とした健康危機管理に関する研修(参考3)を実施しているところである。
健康危機管理調整会議の主な対応事例としては、1998(平成10)年の和歌山市の毒物カレー事件に端を発した毒劇物等を使用した事件の続発や1999(平成11)年の株式会社ジェー・シー・オーの東海村ウラン加工工場における臨界事故への対応などがある。
(参考3) 第2回都道府県等健康危機管理研修会
日 時: 平成12年3月6日(月)〜8日(水)
場 所:国立公衆衛生院講堂
主 催:厚生省
対象者: |
都道府県、政令市、特別区における健康危機管理業務に関し指導的役割を担う職員
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カリキュラム: |
「危機管理論」 |
帝京大学教授 志方 俊之 |
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「政府における危機管理対策」 |
内閣安全保障・危機管理室 |
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「厚生省における健康危機管理体制」 |
厚生省大臣官房厚生科学課 |
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「地域における健康危機管理体制」 |
厚生省保健医療局地域保健・健康増進栄養課 |
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「医師会における健康危機管理体制(インフルエンザを巡って)」 |
(社) 日本医師会常任理事 小池 麒一郎 |
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「救急医療体制と危機管理」 |
厚生省健康政策局指導課 |
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「毒物・劇物中毒への対応」 |
(財)中毒情報センター常務理事/大阪府立病院救急診療科部長 吉岡 敏治 |
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「感染症の危機管理」 |
国立感染症研究所感染症情報センター長 井上 榮 |
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「インターネット等を活用した情報収集」 |
国立医薬品食品衛生研究所化学物質情報部主任研究員 山本 都 |
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「放射線の基礎」 |
厚生省大臣官房厚生科学課 |
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「放射能汚染に対する医療面から見た対応」 |
国立病院東京災害医療センター救命救急センター副センター長 原口 義座 |
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(パネルディスカッション)
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討 議:東海村臨海事故における健康危機管理 |
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