第2セッション:No. 3 三類感染症 腸管出血性大腸菌
感染症研究所細菌部 渡辺治雄
近年、食中毒が大規模化の傾向にあり、被害者の数も増加してきている。特に、0157
による腸管出血性大腸菌感染症の出現、卵を原因とするサルモネラ感染症の増加、海外渡航歴のない国内コレラ感染者の増加、井戸水井戸水等を原因とする集団赤痢の発生等と話題に事欠かない現状である。これらの食中毒性感染症の特微のひとつは、各地で発生している散発事例が、実は同一の汚染を原因としている事例・・・つまり散在的集団発生(diffuse
outbreak) であるというケースが明らかになってきたことである。その最近の事例として、1998年6月に発生したイクラを汚染原因とする0157事件がある。富山、神奈川、東京等に散在的に発生していたが、実は原因食材および加工地が同一の業者であることが判明し、当該業者のイクラを回収することにより、それ以上の被害者の発生を未然に防ぐことができた。我が国においてとられた未然防止型対応の画期的事件であったといえる。この解明には、菌のDNA解析技術が多大なる貢献をした。つまり、各地で分離された菌のDNA
型を解析することにより、各地域で分離された菌のDNA型が同一であることを証明し、たとえ地域が離れているところで発生した事件であってもお互いに関連性がある集団発生である(いわゆる散在的集団発生)ことを科学的に証明した。このような科学的証明をすることにより、だれもが納得する説明が可能となり、その結果が事件の解明につながり、しいては国民の健康を守ることに貢献できることになる。
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