感染症情報センター地域保健平成13年度危機管理研修会




国の結核感染症対策と危機管理

厚生労働省健康局結核感染症課
中谷 比呂樹

我が国の公衆衛生の進歩
         1901  1999  ratio
平均寿命     45    80    1.8
乳児死亡率   153    3.6   1/42
結核死亡率   155    2.2   1/70

本日のポイント
・厚生労働省の誕生と21世紀の健康対策
・感染症対策の現状と課題
・事例から学ぶ

厚生労働省の誕生
・厚生省の誕生は昭和13年。奇しくも再編出発も平成13年
・基本コンセプト: 国民生活を健康、経済(労働・年金)、生き甲斐の面から支える
・感染症部門は、北里柴三郎門下が開いた公衆衛生の主幹部門
・保健医療分野での危機管理の強化

感染症対策の現状:役割分担
・感染症一般、結核、予防接種 → 健康局結核感染症課
・エイズ、ハンセン病 → 健康局疾病対策課
・院内感染 → 医薬局安全対策課
・食品衛生 → 医薬局食品保健部監視安全課
・血液由来感染、ワクチン → 医薬局血液対策課
・健康危機管理 → 官房厚生科学課

感染症対策の課題
・対策の主眼の変遷:子供の集団予防 → 高齢者の個人予防
・感染症医療の変遷:単純感染症の隔離 → 併発症・合併症としての感染症
・感染症の変遷:   一般感染症 → 多剤耐性菌・新興感染症・再興感染症
・広域化・国際化・大規模化: 例:大量の食品加工に伴う大規模食中毒と対策の地域化

危機管理としての感染症対策
・平時なくて有事なし
・科学的根拠にもとづく介入を

感染症法による危機管理   (なにかできるかできないか?)
・1類・2類・3類感染症感染者の行動制限 (入院の手続き規定)
・都道府県知事の入院命令と事前対応準備 (医療機関の指定など)
・結核については命令入所の規定あるが強制力ナシ
・食品衛生法や医療法による措置

感染症新法の主な内容(1)
 感染症の類型化
 ・1類 (エボラ、ラッサ熱など5疾患) → 原則入院
 ・2類 (ポリオなど6疾患) → 必要に応じて入院
 ・3類 (0157) → 就業制限
 ・4類 (約60種) → 発生動向把握
 発生動向の把握
 ・医師に届け出義務(罰則あり)
 ・1〜3類は全医療機関が直ちに報告
 ・4類は、原則7日以内に報告。一部疾患は定点および基幹施設のみ
 ・週報で公表

感染症新法に主な内容(2)
・医療機関の整備(整備費補助+運営費補助)
  特定感染症指定医療機関 → 新感染症 (東西二ヶ所)
  第1種感染症指定医療機関 → 1類感染症 (各県1ヶ所)
  第2種感染症指定医療機関 → 2類感染症 (2次医療圏に1ヶ所)
  一般の医療機関 → 3類&4類
・行政主体 市町村 → 都道府県。 国は技術的中核。
・入院に関する詳細な手続き規定

危機管理としての感染症(事例)
・ケース1:某県におけるワクチン禍?疑義事例への対応から学ぶ
・ケース2:結核の大規模感染?事例から学ぶ
・ケース3:我が国への一類感染症流入?から学ぶ
・ケース4:大規模感染症発生の事前探知努力から学ぶ

危機管理としての感染症(ケース:1 ワクチン禍?)
・某県でワクチン接種後、相次いで死亡例、脳炎例あり。
・ワクチン接種を急遽中断
・その後、徹底した疫学・ウイルス学的検査 → 因果関係を否定
・ワクチン再開まで3ヶ月を要する → 初動判断は十分科学的に
・教訓:初動に当たってはホウレンソウを大切に

危機管理としての感染症(ケース:2 結核)
・結核患者を乗せたクルーズ船が入港。濃厚接触者乗船
・居住地保健所、検疫所の協力が必要であった事例。
・教訓: 国・地域の連携の重要性

危機管理としての感染症(ケース:3 一類感染症)
・アフリカ某国でラッサ熱に感染した方と日本人旅行者が飛行機に同上
・入国後、同乗者が欧州で発病したことを確認
・日本人旅行者を航空会社の協力で同定
・情報提供
・教訓: 柔軟な国の対応と地方でのフォローアップ体制

危機管理としての感染症(ケース:4 事前対応)
・通常の感染症サーベイは診断別
・これでは確定診断までのタイムラグ多く、平時には有効でも緊急事態の事前対応力は課題
・G8沖縄サミット時には、開催地主要病院で症候群別サーベイを実施 ( 例;重症感染症で死亡例 など )
・教訓: 事前対応の重要性

まとめ
* 感染症は相対的に改善 → 対策のコスト・ ベネフィットの視点が大切
* 権力による強制措置 → 合理的なものに  限定し、かつ、手続きを定める
* デ・レギュレーションと地方分権の中での意志決定の分散 → ホウレンソウをしながら
   主体的取り組み



| 危機管理研修会トップ |