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食品安全基本法と食品衛生法の改正について(危機管理関連事項を中心に)

厚生労働省 医薬食品局食品安全部 監視安全課   課長補佐 道野 英司

 

講演資料(PDF:108K)
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平成15年度通常国会で「食品安全基本法」及び「食品衛生法等の一部を改正する法律」が可決成立、本年5月に公布された。厚生労働省ではこれらの制度施行に伴い、食品安全行政の新たな取り組みを推進することとしている。
1 食品安全基本法
食品の安全性の確保に関し、(1) 基本理念、(2) 国、地方公共団体及び食品関連事業者の責務、消費者の役割、(3) 施策の策定に係る基本的な方針等を定め、食品の安全性の確保に関する施策を総合的に推進することを目的としている。また、食品安全行政にリスク分析手法を導入し、食品の安全に関する食品健康影響評価を関係省庁から独立して行う食品安全委員会を内閣府に国家行政組織法第8条に相当する機関として設置を規定している。
食品安全委員会には病原微生物、化学物質などのリスク評価を担当する専門調査会のほか、緊急時対応専門調査会を設置しており、食品安全に関係する機関との連携体制の中心的役割を担うとともに、食品事故等の危機管理においても一定の役割を担うこととされている。

2 食品衛生法の一部改正
 今回の主な改正内容は、(1) 法目的に国民の健康保護を明記、(2) 国等の責務の明確化、(3) 残留農薬基準等のポジティブリスト化、(4) 監視指導についての国の指針、都道府県等の計画の策定、(5) 大規模・広域食中毒対策等への国の関与、(6) 登録検査機関制度の創設、(7) 罰則の見直し等であり、危機管理に関連する主な事項は次のとおりである。

(1)事業者の記録の作成・保管の責務
食中毒発生時や違反食品発見時に迅速に問題食品の調査、回収等を行うためのトレーサビリティーを確保するため、記録の作成及び保存等の責務が設けられた(法第3条)。厚生労働省では記録の作成及び保存については、ガイドラインを作成し、(1) 仕入元、販売先(小売りを除く。)、製造・保存基準がある食品には、殺菌や保存の温度記録等を対象とする(2) 生産、製造・加工、流通、小売の食品供給行程の段階毎に必要な記録を定める(3) 実行性及び食中毒発生時の影響の大きさを考慮して、「可能な限り記録の作成保存に努めるべき事項」と「記録の作成保存が期待される事項」の2段階で行政指導を行うこととした(中小企業基本法における中小事業者等については全て後者)。

(2)大規模・広域食中毒対策の強化
近年の食品の大量製造や流通の広域化等を反映して、堺市学童集団下痢症事件、雪印乳業食中毒事件などの大規模・広域食中毒が顕在化していることから、危害の発生防止上緊急を要する場合には厚生労働大臣が都道府県知事等に対し、期限を定めて食中毒の原因調査の結果を報告するように求めることができることとし(法第60条)、健康危機管理の観点からの都道府県等の食中毒対応への国の関与を明確化した。

(3)監視指導指針及び計画の策定
 多様な食品の安全問題に対応するため、国が監視指導の基本方針を示す指針を作成し(法第22条)、都道府県等が地域の実情を踏まえ、年度毎に監視指導計画を策定することとし(法第24条)、統一的な考え方のもとに食品の安全確保対策を推進することとした(輸入時監視については国が計画を策定(法第23条))。また、国民の理解を促進するため、指針や計画の策定時の国民、住民からの意見を聴取し、さらに監視指導の実施状況や結果の公表を行うこととした(法第64条)。

(4)登録検査機関制度の創設
増加する検査ニーズに対応するため、国や知事の命令検査の実施機関について、従来の指定制を登録制に、対象を公益法人から公正・中立性や検査能力を備える民間法人に拡大した(法第33条)。また、行政機関も収去検査について試験を登録検査機関に委託することを可能とした(法第28条)。

(5)食肉の安全確保対策の強化
 と畜場法についても「国民の健康の保護」を目的規定に明記した(と畜場法第1条)ほか、国及び都道府県等の責務の明確化(同法第2条)、厚生労働大臣と農林水産大臣の連携(同法第22条)、と畜検査における国の関与(同法第14条)等の見直しを行った。

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