当面のOー157対策について

平 成 9 年 4 月 4 日

病原性大腸菌O−157対策本部


1.現在の状況
 O157による食中毒については、3月以降、各地からの報告事例が増加しており、本年に入り4月3日までの累計有症者数は126人となっており、神奈川県では死亡者を見るに至っている。
本年になってからの発生事例は、大規模な集団発生ではなく、家庭を発生場所としたものがほとんどである。一方、昨年はO157による食中毒は全都道府県で発生していることからも、O157は既に国内に広く存在しているものと考えられ、今後、本格的な食中毒の時期を迎えるに当たり、万全の対策を講じていくことが必要となっている。
 このため、当面、以下に掲げる対策を実施することとする。
 なお、今般、愛知県における発生事例についての調査状況が愛知県から公表されたところであるが、この事例に係る原因究明については、引き続き十分調査を行っていく必要があると考える。

2.当面の対策
2.1.発生予防対策
 O157による食中毒の発生を予防するため、昨年来、集団給食施設等に対する監視・指導の強化、とちく場・食肉処理場における衛生管理の徹底等を実施してきたところであるが、これらに加えて以下の措置を講じることとする。
(1)食中毒予防のための家庭用の手引の普及
 家庭に対して食中毒を予防するための調理上の注意事項を示した家庭用の手引(本年3月作成)の早急な普及を図る。
(2)大量調理施設衛生管理指針の普及
 集団給食施設等の大量調理施設における食中毒の発生防止を図るため、調理工程等における重要管理事項を定めた大量調理施設衛生管理指針(本年3月作成)の早急な普及定着を図る。
(3)食肉の衛生管理の徹底
 食肉の衛生管理の徹底を図る観点から、都道府県等に対し、本年4月から施行されたとちく場におけるHACCP(危害分析重要管理方式)概念に基づく衛生管理基準の実施状況の点検等を求める(本年4月〜)。
(4)食材の汚染実態調査
 O157による食材の汚染実態について、全国的な調査を実施する(本年4月〜5月)。
(5)学校給食の一斉点検
 本格的な食中毒シーズンを迎える前に、学校給食の一斉点検を実施するよう、都道府県等に対して求める(本年4月〜5月)。
(6)集団給食施設の衛生管理者の研修
 保育所等の集団給食衛生管理者に対し、食品の衛生管理に関する研修を実施するよう、都道府県等に対して求める。
(7)国民への普及啓発
 多様な媒体や方法を通じ、国民に対して食中毒の発生防止に資する情報の提供を図る。

2.2.原因究明対策
 O157による食中毒の原因究明を確実に実施できるよう、昨年、検食の保存期間の延長等保存方法の改善を図ったところであるが、これに加えて、以下の措置を講じていくこととする。
(1)食中毒発生時の対策要領の作成
 各都道府県等において、食中毒が発生した場合の対策要領を予め定めるよう求める(本年3月通知)。
(2)食中毒調査のための指針の普及
 保健所が行う食中毒調査の具体的な実施方法を定めた食中毒調査のための指針(本年3月作成)の早急な普及を図るとともに、必要に応じ、菌のDNAの型の確認を行うよう都道府県等に対して求める。
(3)検出・解析技術の向上
 O157の迅速かつ確実な検出・解析等を行うため、国立感染症研究所において、地方衛生研究所の研究員等を対象として、パルスフィールド電気泳動法、ビーズ法による菌の分離等に関する研修を実施する(本年5月)。

2.3.診断治療対策
 医療機関における治療を支援する観点から、昨年、「一次、二次医療機関のためのO157感染症治療のマニュアル」を作成し、その普及を図ったところであるが、これに加えて、以下のような措置を講じることとする。
(1)「一次、二次医療機関のためのO157感染症治療のマニュアル」の改訂
 医療機関においてO157を早期に診断し、早期に適切な治療が実施できるよう、調査研究等によって新たな知見が得られた場合には、情報を更新するとともに、医療機関に対する迅速な周知を図る。
(2)治療薬の治験の推進
 O157による重症化の防止効果が期待されるベロ毒素吸着剤については、本年3月に稀少疾病用医薬品の指定が行われたところであるが、5月にも治験が開始されるよう、治験計画者を適切に指導する。
 なお、治験の実施に当たっては、実施施設が全国的に配置されるとともに、菌の確認が迅速に行われた上で治験が行われるよう指導する。
(3)迅速診断薬の開発普及
 O157による重症化を防止するためには、迅速な診断が不可欠であることから、O157の迅速で簡便な診断法を早期に開発するとともに、企業に対し早期に供給するよう指導する。

2.4.全国食品衛生行政担当課長会議の緊急開催
 全国食品衛生行政担当課長会議を緊急に開催し、O157による食中毒の発生について注意喚起するとともに、本年3月に改正された食中毒処理要領や本年3月に策定された食中毒調査のための指針等について、その周知徹底を図る(本年4月)。





IDSCホーム

危機管理研修会トップページ