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高病原性鳥インフルエンザ

WHO 更新情報
  鳥インフルエンザ:トルコにおける状況−更新4:ヒトウイルスの遺伝子配列

    2006年1月12日 WHO(原文


トルコ国内で行われた検査結果により、さらに2人の患者から採取された検体にH5亜型の鳥インフルエンザウイルスが検出されたことが確認された。患者はシリアに接する南部国境付近のSanliurfa県と、トルコ東部Van県に隣接するSiirt県の在住である。ヒト症例はこれでトルコ全土81県のうち9県から報告されている。

患者は両者とも若年の小児(4歳と6歳)であり、病鳥との直接接触歴が裏付けられている。Sanliurfa県では、裏庭の家禽における集団発生が2005年11月にさかのぼって発生していたと考えられる。農業当局は国内で合わせて11の県において家禽での集団発生を確認しており、さらに14県で集団発生の可能性に関して調査を行なっている。

トルコで本日完了した実験室検査により、1月7日に死亡したAgri県の12歳の女の子から死後採取された検体中に、H5亜型ウイルスが検出された。この女の子はそれより前に死亡した別の2人の患者の同胞である。彼らがH5N1ウイルスに感染していることはイギリスにあるWHO協力実験施設によりその後確認された。

保健省はこれまで18例の検査確定症例を報告しており、そのうち3例(すべて同じ家族)が死亡している。

さらなる分析のために数人の患者からの検体をイギリスにあるWHO協力研究施設へ送付する手配が行なわれた。トルコの公式な休日のため、検体は月曜日より前にはイギリスに到着しないと思われる。イギリスの研究施設の長は今、トルコのインフルエンザセンターにおける診断作業を支援するためにアンカラにいる。患者検体の検査を迅速に行なう方法が探索されている。トルコの人々の間での鳥インフルエンザに対する高い関心は、家禽の集団発生が新たな地域においてほぼ毎日のように報告されることと相まって、大勢の人々に曝露に関する懸念を与え、確証を求める行動を起こさせている。

曝露歴の可能性がある患者の迅速な評価は、ヒトでの鳥インフルエンザ感染に関してより多くのことを学ぶ機会を与えてくれる。それはまた抗ウイルス薬の有効性を評価することに使用できるデータを生み出す、なぜなら曝露歴または呼吸器症状を有するほとんどのヒトが予防的ないしは症状の発現後非常に初期にオセルタミビルを投与されているからである。

Van県とアンカラにいる国際チームのメンバーは本日、関連する研究を計画するために地域の専門家と協働している。その研究は、ヒトーヒト感染が起こった可能性や、医療従事者やその他の職業的に曝露を受ける人々の感染に対する危険性、そして一般大衆の間でより軽症の疾患が発生しているかもしれないという可能性などの、この疾患の疫学に関する理解を深めることになる。

現在入手可能なすべての証拠によると、持続性のあるヒトーヒト感染は発生していないことが示されている。アジアにおいてと同様に、感染した鳥との接触が主な感染源である。トルコへの旅行者の感染リスクは、死んでいるか弱っている土着の鳥や野鳥との直接接触を避ければ、無視できる。

ヒトウイルスの遺伝子配列情報

ロンドン・Mill HillのMRC National Institute for Medical Research にあるWHOリファレンス・リサーチ協力センターは本日、トルコの集団発生での最初の2人の死亡例から回収されたウイルスの遺伝子および抗原の解析を完了した。

WHOに提供された情報によると、これらのウイルスはトルコにおける鳥から分離された鳥のH5N1ウイルスに非常に似ている。それらはまた、昨年4月下旬に始まった中国の青海湖自然保護区で発生した渡り鳥の集団発生から得られたウイルスに密接に関連している。

これらの分析は、トルコのウイルスがオセルタミビルとアマンタジンなどの抗ウイルス薬の双方の種類に対して感受性があることを示している。オセルタミビルはWHOによって推奨される第一選択の薬剤のままである。

両親の片方から分離されたウイルスは、レセプター結合部位に変異があった。その変異の1つは、2003年香港での小集団発生(2例、うち1例死亡)や2005年のベトナムでの集団発生から分離されたウイルスにおいて以前見られている。研究によると、2003年の香港のウイルスは鳥の細胞のレセプターよりもヒトの細胞のレセプターに対して特異的に結合することが示唆されている。Mill Hillにある実験施設の研究者は、トルコのウイルスもこの特徴を持っていることを予期している。

ヒトの健康に対してこの所見が持つ意味は、トルコで今収集されている臨床的および疫学的データに基づいて解釈されることになるであろう。

現在利用可能な全ての証拠によると、ヒト症例が発生しているいかなる国においても持続的なヒトーヒト感染は発生していない。

現在のWHOパンデミック警告レベルはフェーズ3のままである:新たな亜型ウイルスによるヒト感染が発生しているが、その感染の大部分は動物から直接伝播している。

(2006/1/16 IDSC 掲載)

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