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5/3/2003


SARS:診断検査の入手状況と検査方法の実際
(5月1日 5訂)

 

   ・臨床検査結果の解釈に関する提言
   ・SARSの臨床検査に対する提言



臨床検査結果の解釈に関する提言

SARS診断検査の陽性とは

a) 確認されたSARSウイルスに関するPCR陽性:

― 最低2つの異なる臨床検体(たとえば、鼻咽頭拭いと糞便)
あるいは
― 同一の臨床検体が臨床経過中に2日以上に渡って採取された場合(たとえば、2つ以上の鼻咽頭吸引検体)
あるいは
― 2つの異なるアッセイ系で、あるいは毎回臨床原検体を用いての検査を反復して行った場合

b) ELISAあるいはIFAで血清陽性転化:
― 急性期血清において抗体陰性で、続いて回復期血清において抗体陽性
あるいは

― 急性期と回復期の血清が平行して検査され、4倍以上の抗体価の上昇を回復期血清で認めた場合

c) ウイルス分離
― 有効性が証明済みのPCR法で陽性が確認された検体で、ウイルス培養によってSARS-CoVが分離された場合

PCR陽性の確認
−PCR検査法では、検査一回ごとに予測通りの結果を示す筈である適切な陰性と陽性のコントロール(対照検体)も共に検査する必要がある。これには以下のものがふくまれる:

・ 抽出過程に陰性検体を1つと、PCR増幅過程に水の検体を1つ
・ PCR増幅過程と抽出過程に陽性検体を1つずつ
・ PCR検査を阻害する物質を検出するため、弱陽性と検出されるはずのコントロールを患者検体に混ぜたもの(インヒビション・コントロール)

−もし、PCR結果が陽性であった場合には、結果の確認を次のような方法で行う:
・ 原検体から反復してPCRを行う

  あるいは

・ 第2の研究所で同一の検体を検査する

第2の遺伝子領域を増幅することによって、検査の特異性を向上することができる。


SARSの臨床検査に対する提言

国レベルでリファレンス・ラボを指定しなければならない。

PCR検査
PCR法によるSARSの臨床検査は特別なものではなく、すでに他のPCR検査で経験している筈である。精度管理の手法を採用し、国内あるいはWHOの共同研究施設から協力研究施設を決め、陽性結果を交差検定する必要がある。

SARS特異的PCR検査を行っている研究施設は、特に陽性予測率(PPV)が低いと考えられるSARSの発生頻度が低い地域では、陽性結果を確認するための厳しい基準を採用しなければならない

内部対照(internal control)を含んだSARSのPCR検査キットは、市販されている。PCR用のプライマーと検査方法は公開されており、それぞれの検査施設に適合させる事ができる。RNAの陽性コントロールはハンブルグ(ドイツ)のBernhard-Nocht Instituteから入手することができる。

SARSに対するPCR検査の感度は、検体の種類と臨床経過中のどの段階で検体が採取されたかによる。これは、本当のSARS症例がPCRで陰性の検査結果を示すことにもなる(偽陰性)。感度は、検体が複数採取できたり、複数の種類の検体が採取できたりすることで上昇させることができる。

SARSに対するPCR検査の特異性は、精度管理の指針に従った技術的手法が用いられれば非常に高い。偽陽性の結果は技術的問題(たとえば、実験室内での検体汚染)によって生じるので、すべてのPCR陽性結果は確認する必要がある。

抗体検査
ELISAとIFA検査法は複数の研究施設で開発された。

SARSはヒトのあいだでは新しい疾患であるため、SARS-CoV抗体はウイルスに曝露を受けていない集団では検出されない。

平行して検査した急性期血清と回復期血清のあいだの抗体上昇は、非常に特異性が高い。

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過去の記事
(4月30日)4訂-1 4訂-2
診断検査の入手状況と検査方法の実際(3訂)
(4月24日)
診断検査の入手状況と検査方法の実際(改訂)
(4月18日)
診断検査の入手状況と検査方法の実際
(4月17日)
診断のための検査の有効性と検査方法(4月8日)


 
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