国立感染症研究所 感染症情報センター
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高病原性鳥インフルエンザ



新型H1N1インフルエンザウイルス(ブタインフルエンザ)集団発生における
インフルエンザ様疾患の患者に対するインフルエンザ迅速診断検査の利用
−医療従事者への情報−

      アメリカ東部時間2009年5月2日午後10時00分 
               CDC(原文



背景

 迅速インフルエンザ診断検査は、インフルエンザに合致する徴候や症状のある患者の診断及び管理を手助けできる。そのような検査は、呼吸器検体の中の季節性インフルエンザA型およびB型ウイルスの核タンパクを検出する。現在流行している新型H1N1インフルエンザウイルス(ブタインフルエンザとも言われる)は、A型インフルエンザウイルスである。新型H1N1ウイルス感染患者に迅速インフルエンザ診断検査の使用を推奨するに足るデータはまだない。A型インフルエンザウイルス核タンパク抗原は、様々なA型インフルエンザウイルスに共通してかなり広く保持されているので、A型インフルエンザウイルス核タンパク抗原を検出する迅速キットが、呼吸器検体の中に新型インフルエンザを検出できると考えるのは妥当である。しかしながら、種々の迅速診断検査の感度と特異度はこの新型ウイルスに関してはわかっていない。CDCは偽陽性及び偽陰性の事例報告を受け取っている。臨床医はインフルエンザに合致する徴候や症状の患者を評価する一部分として迅速診断検査を用いても構わないが、結果は注意して解釈をすべきである。新型H1N1インフルエンザ感染の確定診断は逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)またはウイルス培養のみで行われる。


迅速インフルエンザ検査の信頼性と解釈

 迅速インフルエンザ診断検査の信頼性は、その使用される状態に大いに依存するものであり、また全て季節性インフルエンザでの経験に基づいている。

季節性インフルエンザウイルス感染の検出に関して、迅速診断検査の感度はウイルス培養またはRT-PCRと比較するとおよそ50-70%であり、迅速診断検査のインフルエンザに対する特異度はおよそ90-95%である。新型インフルエンザH1N1ウイルスに対する感度と特異度は不明である。

偽陽性(真の陰性)結果は、インフルエンザがコミュニティーの中であまり流行していない、アウトブレイクの初期、および最後の時期により多くみられやすくなる。

偽陰性(真の陽性)結果は、インフルエンザがコミュニティーで流行している、アウトブレイクの真っ最中に多くみられる。

検査の感度は疾患の経過中のどの段階で採取した検体かによって変化しうる。検査に関する呼吸器検体は、ウイルスの排出が最大となる発症後4-5日のあいだに採取されるべきである。

 これらの限界を考慮した上で、患者に迅速インフルエンザ検査診断を行うかどうかの決定は、患者の現在の症状、新型インフルエンザH1N1の症例の地域内発生の有無、及び/または患者の重症化または他の合併症に関するリスクに基づいて行われるべきである。


どのようにして検査陽性結果を解釈するか:
 迅速診断によりインフルエンザB陽性の結果が出た患者は、継続的に流行している季節性インフルエンザBウイルスに感染したか、結果が偽陽性である。そのような患者は新型H1N1インフルエンザに感染していることはなさそうである。

 迅速抗原検査にてインフルエンザA陽性の時には、いくつかの可能性がある:
 ・ 患者は新型H1N1ウイルスに感染しているかもしれないし、
 ・ 患者は季節性のインフルエンザAウイルスに感染しているかもしれないし、
 ・ 患者は検査結果が偽陽性であるかもしれない。

インフルエンザ抗原迅速診断検査結果陽性者に対して更に詳細な検査が必要であることを公衆衛生当局が助言しているかどうかを判断するためには、州及び地方保健当局により提供された情報を参照すべきである。新型H1N1インフルエンザ感染の新たな確定患者が次々に報告され、地域内での感染拡大が起こっている地域では、迅速診断検査で陽性の結果が出た患者に対して、さらなる検査を行わなくても、臨床的に適応があれば経験的に抗ウイルス薬を用いた治療を開始してもよい(新型インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染患者及び濃厚接触者に対する抗ウイルス薬使用の推奨に関する暫定的手引きを参照のこと)。新型H1N1インフルエンザの確定症例がないか非常に少ない地域では、鼻咽頭スワブ/鼻咽頭吸引物あるいは鼻吸引物を採取し、H1N1感染、季節性インフルエンザAウイルス感染、結果が偽陽性のいずれなのかを決定するために州の公衆衛生検査室へ送付してRT-PCRを行うべきである。検体採取の暫定的な手引きと、検査室従事者に対する暫定的なバイオセーフティーガイドラインを参照のこと。

どのようにして陰性の結果を解釈するか:
 新型H1N1インフルエンザウイルスへの感染は、迅速抗原検査によりインフルエンザA陰性の結果であるだけでは除外できない。もし、患者が確定症例との疫学的リンクがある(すなわち、確定症例と濃厚に接触した)または新型H1N1症例を1症例以上確認したコミュニティーへの旅行または居住のいずれかがあれば、追加検査及び治療は、臨床的疑い、疾患の重症度、および合併症のリスクに基づいて行われるべきである。もし、疫学的リンクがなく、患者が軽症である場合、追加検査及び治療は推奨しない。


(2009/5/16 IDSC 更新)

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