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新型インフルエンザA(H1N1)の患者に対する医療機関における感染対策 国立感染症研究所 感染症情報センター 2009年5月5日 |
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2009年5月8日修正
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以下、上記の推奨に至った理由につき解説する。この解説は、医療関連感染(院内感染)に関する基礎的な用語や知識の解説を省略しているため、用語に関する不明点がある場合は、医療関連感染に関連する成書や文献もあわせてお読み頂きたい。 流行状況や感染経路などに関する現状分析 まず、新型インフルエンザA(H1N1)に関して、現時点で判明している流行状況や感染経路などの現状分析は以下の通りである:
日本でこれまで想定されていた新型インフルエンザの感染対策 これまで新型インフルエンザを見据えて作成された感染対策の手引き(医療施設等における新型インフルエンザ感染対策ガイドライン(註1)は、鳥インフルエンザA(H5N1)のような死亡率が高い疾患が変異した新型インフルエンザをある程度意識して作成されてきた。今回新型インフルエンザウイルスとなったブタ由来インフルエンザウイルスA(H1N1)は、現時点ではヒトの疾患としての重症度はさほど高くないとみられている。しかし今後、ヒトに対する病原性を増す変異を起こす恐れがないとも言えない。 CDCとWHOはそれぞれ、医療機関における感染対策ガイドラインを発表している(註2)。しかし、その内容も刻々と変化しており、流行状況や感染経路に関して得られた知見によって内容を変えてきているものと思われる。そのうちいくつかに絞って両ガイドラインを比較した上で、日本の対策がどうあるべきかを論じる。 【A】症例に対して医療従事者が最初に接する場所での感染対策 来院患者の中に新型インフルエンザ患者が万一居た場合、患者同士が待合室でうつしあったり、医療従事者が患者から伝播を受けたりするなどの事象を防ぐことが大切である。CDCもWHOも、患者同士の間隔を確保する、呼吸器衛生・咳エチケットを実施するなど、来院患者に関して新型インフルエンザを明確に疑う前の予防策を強調している。日本でも季節性インフルエンザの流行シーズンには、外来スタッフがサージカルマスクを着用し、手指衛生を頻回に行うなどの留意を行っているが、それと同様の考え方で、どの患者が新型インフルエンザかは分からない以上、全員(あるいは患者同士)に対して感染伝播のリスクを低下されることが必要であろう。このことはすべての医療機関にあてはまることである。 【B】確定患者に対する経路別予防策 新型インフルエンザA(H1N1)の感染経路は依然として不明であるが、おそらく飛沫感染が主体であろうと考えられている。従って、患者ケアにあたる医療従事者や見舞いの者は、少なくとも飛沫予防策(=サージカルマスク)は必要である。目の防御は通常飛沫予防策には入れられない。しかし、鳥インフルエンザA(H7)では鳥→ヒト感染の事例においてヒトが結膜から感染したことが示唆されていること、この経路による感染は飛沫感染に分類されることから、新型インフルエンザA(H1N1)に対する飛沫予防策に目の防御を追加するかどうかは議論のあるところである。 WHOは、サージカルマスクと手指衛生を必須の要素としている。目の防御については言及していない。一方CDCは、N95あるいはそれと同等のもの(Powered Air-purifying Respirator, PAPR)、および手袋(未滅菌で可)とガウン、目の防御を推奨している。 言い換えれば、WHOは飛沫予防策のみ、CDCは接触・飛沫(目の防御を含む)・空気予防策のすべてをとることを最低基準としている。WHOのガイドラインは先進国のみならず途上国でも適用可能なものとする必要があるため、このような内容となっていると考えられる。一方、CDCのガイドラインは、アメリカで通常行われている感染対策をベースに策定されたものである。日本での経路別予防策は、まだ国内症例が出ていないこと、これまでもCDCの感染対策ガイドラインを大いに参考にして国内での医療関連感染対策を行っていることを考えると、現時点ではCDCに従うべきであろうと考える。 【C】患者を収容する病室 確定症例を収容する場所として、CDCは当初から一貫して個室を勧告している。しかし、その個室が陰圧であるべきかどうかについては、勧告が変化してきている。当初は「陰圧室を使用しても良い」という表現であったが、現在(2009年4月29日午後9時45分最終更新)では陰圧室の必要性について特記されていない。ただし、エアロゾルを産生する手技を行う際にはできる限り陰圧室で行うべき、とは書かれている。これはおそらく、アメリカでの200名を超える確定患者とその大多数が軽症である現状を鑑みた、現実的な感染対策へのシフトと見るべきであろう。つまり、CDCの勧告する感染対策は完全な空気予防策ではないことがわかる。 WHO:A(H1N1)ブタインフルエンザの確認されたあるいは疑わしい患者のケアを行う医療施設における感染制御と対策・暫定的手引きhttp://www.who.int/csr/resources/publications/infection_control/en/index.html (2009/5/5 IDSC 更新) |
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