国立感染症研究所 感染症情報センター
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高病原性鳥インフルエンザ



新型インフルエンザA/H1N1に対する個人における対応

      2009年5月2日


2009年5月2日
国立感染症研究所感染症情報センター

新型インフルエンザA/H1N1の症状

 今回の新型インフルエンザは、多くの症例が軽症、すなわち季節性のインフルエンザに類似の、発熱、呼吸器症状、筋肉痛等で、米国からは20〜25%で下痢、嘔吐などの消化器症状がみられるとされていますが、それらのほとんどが重症化はしておりません。

 これまで重症化したり、あるいは死亡したりしている患者は、季節性インフルエンザにおけるハイリスク者(注)がほとんどです。また、抗インフルエンザウイルス薬(商品名:タミフル、リレンザ)は効果がみられており、またそれらを使用しなくとも軽快している症例も報告されています。

 また、現在の症状は、季節性インフルエンザと同様、軽症から重症まで、その症状の幅が非常に広いので、非常に軽い場合には、感染に気づかずに軽快している例もあると思われます。

 インフルエンザは本来、急速に感染が拡大するのがその特徴の一つともいえる疾患です。上述のように感染患者の症状がほとんど自覚されないような軽症であっても、その患者から他への感染はみられますので、流行を一部の地域に限定して封じ込めることは容易ではありません。しかしながら、一人一人が以下に述べるような方法を実施することによって、感染の拡がりを遅くしたり、被害を小さくしたりすることが可能です。まず、自分がかからないこと、かかったら他人にうつさないことを心がけて下さい。


かからないために、かかっても重くならないために

・発生地域などに関する情報に耳を傾けましょう。臨床症状も通常の季節性インフルエンザとよく似ていますので、冷静な判断が必要です。

・可能な限り人混みを避け、手洗いを心がけましょう。

・不織布製のマスクは完全ではありませんが、予防に一定の効果があります。

・うがいは、必ずしも感染を予防できませんが、のどを清浄に保つ効果があります。

・通常の季節性インフルエンザに対する予防と同様に、適切な栄養と睡眠をとって一般的な体力を維持することが重要です。

・特に、季節性インフルエンザのハイリスク者(注1)に当てはまる人は、特に上述のことにご留意ください。

・インフルエンザ以外の感染症で、予防接種で予防できるもの(たとえばはしかなど)は予防しておきましょう。


ひろがらせないために

・かかったかなと思ったら、まず手洗いを心がけ、咳エチケット(注2)のためにマスクをつけて、できるだけ他の人とは会わないようにして、周囲にうつしてしまわないように心がけましょう。

・大事な家族を守るためには、しばらくは(症状が消失して発症後7日が経過するまで)できるだけ距離をおくように心がけましょう。症状がひどいとき(高熱がある時など)は、可能な限り距離をおきましょう。もし今回の新型インフルエンザが通常の季節性インフルエンザに近い性質を持っていると仮定すると、発熱の一日前くらいから他の人にうつしてしまう可能性がありますので、この時点ですでに家族には感染しているかもしれません。この場合には、特にハイリスク者が家族にいる場合には、その後その方が発症しないかを注意深く見守ることをお勧めします。

・2週間程度の日用品や食料を備蓄しておくことが勧められます。

・かかった際に、医療機関を受診する場合には、地域に流行を拡大させないためにも、咳エチケットのためのマスクをかけた上で、お住まいの地域の医療体制に従って、できるだけ他の人に接触しないようにして受診されることをお勧めします。通常、お住まいの地域には新型インフルエンザに関する相談窓口がありますので、まずはそちらに電話などで相談した上で、医療機関を受診するようにしましょう。連絡せずに医療機関を受診し、待合室で診察を待っていることがないようにしましょう。


今後は・・・・

 現在、流行を拡大させないために、最大限の努力がなされていますが、インフルエンザという疾患の基本的な性格からすると、いずれは感染が広がってしまうことは避けられないと考えられます。1957年に発生したアジアインフルエンザによるパンデミックは、日本では5月頃から流行がみられ、7月にかけて流行は拡大しました。一方、1967年の香港インフルエンザは、8月に日本に入った以降、ほとんど広がることなく、くすぶり続け、冬になって本格的な流行となっています。ウイルスの性質にもよりますが、インフルエンザはそれぞれの流行で異なる状況を呈しますので、今後を予測することは容易ではありません。できるだけ広がらせないように心がける一人一人の意識が非常に大切な所以です。


注1)季節性インフルエンザにおけるハイリスク者(かかると重症化する恐れのある人)(米国CDCによる)

・5歳未満の小児

・50歳以上の成人

・長期のアスピリン治療を受けているか、あるいはインフルエンザ罹患後にライ脳症に罹患するリスクのある6ヶ月から18歳の小児及び青年

・妊娠中の女性

・慢性肺疾患(喘息を含む)、高血圧を除く心血管疾患、腎、肝、血液、糖尿病を含む代謝性疾患のある小児及び成人

・免疫が低下状態にある成人および小児(薬剤による治療とHIV感染を含む)

・呼吸機能あるいは呼吸分泌物の喀出に影響するような、あるいは誤嚥のリスクが高まるような慢性疾患、すなわち認知症、脊髄損傷、痙攣性疾患、他の神経筋疾患をもつ小児及び成人

・長期滞在施設や養護施設の入所者



注2)咳エチケット

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/pdf/01b.pdf






(2009/5/2 IDSC 更新)
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