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![]() | ◆ 腸チフス 2009年(2010年2月24日時点) |
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腸チフスはチフス菌(Salmonella Typhi)の感染によって起こる全身性感染症である。一般のサルモネラ感染症とは区別され、パラチフスとともにチフス性疾患と総称される。チフス菌の感染はヒトに限って起こるので、患者および無症状病原体保有者の便と尿、それらに汚染された食品、水、手指が感染源となり、経口的に感染する。通常は1〜3週間の潜伏期の後、発熱で発症する。熱は段階的に上昇して39〜40℃に達する。主要症状は発熱の持続で、他に特記すべき症状がないことが多い。比較的徐脈(高熱のわりに脈拍数が増えない)、バラ疹(高熱時に出現して数時間で消える)、脾腫が3主徴とされるが、これらの出現率は30〜50%程度である。便秘、時には下痢のみられることもある。また、昏迷状態など意識障害を起こすこともある。合併症として腸出血、それに続く腸穿孔を起こすことがあるが、ニューキノロン薬が治療に使用されるようになってからは稀となった。しかし最近、ニューキノロン系薬低感受性菌の増加、耐性菌の出現が問題となっている(http://idsc.nih.go.jp/iasr/30/350/dj3501.html)。 腸チフスは感染症法(1999年4月施行)に基づく2類感染症として、疑似症患者、無症状病原体保有者を含む症例の届出が、診断した全ての医師に義務づけられた。その後、法改正(2007年4月施行)により3類感染症に変更され、現在は患者及び無症状病原体保有者が届出対象(疑似症患者は対象外)である。無症状病原体保有者は、探知された患者と食事や渡航を共にした者に対する調査などによって発見されるほか、他の疾患に伴う検査や、健診などにおいて発見されている。 2009年の報告数(診断週が2009年第1〜53週のもので、2010年2月24日までに報告されたもの)は29例であった。過去の年間累積報告数は、2000年86例、2001年65例、2002年62例、2003年63例、2004年71例、2005年50例、2006年72例、2007年47例、2008年57例であり、2009年は感染症法施行以降の年間報告数として、最も少ない報告数であった(図1)。29例は、患者27例、無症状病原体保有者2例であった。無症状病原体保有者は、1例は同居家族に患者がおり接触者調査で発見され、もう1例は他疾患の精査時に発見された。
全29例は男性19例、女性10例で、年齢中央値は34歳(19〜88歳)であった。確定または推定として報告された感染地域は、国内7例、国外22例であった。死亡例の報告はなかった。 患者27例で報告された症状は、高熱26例、下痢22例、脾腫13例、比較的徐脈12例、バラ疹2例、便秘2例、腸出血2例、胆石1例、意識障害1例であった(以上は届出様式に記載されていて選択された症状)。また、その他の症状として、肝機能障害2例、排尿困難・排尿痛1例の自由記載があった。 病原診断は細菌培養による菌の分離・同定により行われるが、検体の種類は、患者(27例)では血液20例、血液および便3例、便3例、尿1例であった。無症状病原体保有者(2例)では便1例、尿1例であった。 国内を感染地域とする7例(男性6例、女性1例)について年齢群別にみると、10代1例、20代2例、40代2例、60代1例、80代1例(年齢中央値44歳)であった(図2)。患者6例の発症月は、2月、6月、8月、11月であった(図3)。また、感染源・感染経路の詳細が記載されていたものは3例で、そのうち2例は実習でチフス菌を扱っており、残りの1例は腸チフスに罹患した同居家族からの接触感染であった。 国外を感染地域とする22例(男性13例、女性9例)について年齢群別にみると、20代9例、30代8例、40代1例、50代4例(年齢中央値33.5歳)で、20代、30代、50代の順に多かった(図2)。患者21例のうち、発症月の記載があった19例について発症月をみると、3月(5例)、6月(4例)、4月(3例)に多かった(図3)。また、患者及び無症状病原体保有者(22例)の感染地域別では、南アジアが14例(インド11例、ネパール1例、バングラデシュ1例、パキスタン1例)と最も多く、これは従来と同じであった。他は多い順に、東南アジアが7例(インドネシア3例、カンボジア3例、フィリピン1例)、東南アジア/東アジア1例(インドネシア/中国)であった(図4)。感染源・感染経路の詳細が記載されていたものは4例で、内訳は生野菜2例、生肉1例、井戸水1例であった。
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